グレープカンパニーは、今までで一番いい事務所
──グレープカンパニーとは、のちに別の縁で?
国崎 本当にのちの縁でしたね。また1年ぐらいフリーでやってたときにオーディション開いてて、「しめた!」と思ったんですけど、年齢制限があったんですよ。25歳以下だったかな。
伊藤 僕らは30歳とかでしたもんね。
国崎 友達の、グレープ所属のあぁ~しらきさんに「頼むからなんとかしてくれ」って。
伊藤 そしたら「なんとかしとくよ」って言ってくれました。
──カッコいい!
国崎 「私に言ってくれれば入れる、大丈夫よ!」みたいな感じだったんですけど、なんとかならなかったみたいで(笑)。
──(笑)。どうなったんですか?
国崎 そのあと「とりあえずランちゃん(※ランジャタイ)、履歴書だけ送って」って言われて。でも本当に年齢だけはなんとかしてくれて、今所属できてるのは、しらきさんのおかげですよ。
──そんな思い出が(笑)。グレープカンパニーとは相性がピッタリ合ったということなんでしょうか?
国崎 一番合ってるかもしれないですね。
伊藤 優しくて自由。
国崎 ほかの事務所だとこうはいかないんだろうな、ってぐらいの(笑)。
伊藤 当時のソニーは「自由」というか「ほっとかれる」印象だったんです。
国崎 今までの中で一番いい事務所です。
僕らはフリーに向いてなかった
──テレビの出演も、フリーだと難しいところですよね。
国崎 そうですね、フリーだとまずオーディションが来ないですからね。今考えたらフリーのときは大変でした。だから、最近事務所を辞めてフリーになった虹の黄昏さんとかモダンタイムスさんとかすごいっすよね。僕らフリーを知ってるんで、あの芸歴で辞めれるって本当すごい。
──今はフリーで活動される芸人さんも増えてきていますよね。フリーのときは、ずっと事務所所属を狙っていたんですか?
国崎 本当になんも考えてなかったです。
伊藤 でも、なんとなくフリーで『M-1』優勝しようってのは思ってましたね。誰もやってないから。結局なんにも勝てなかったんですけど。
国崎 オーディション来ないのもだけど、大変だなってのは思うことはほかにもたくさんありましたね。請求書とかも自分たちから送らないといけないんですけど、うまくできなくて。
伊藤 何個か(ギャラ)もらってないやつあるもんね、たぶん。
国崎 そうなんですよ! 仕事して、請求書のやりとりがうまくできなくて、お金もらえなかったり。こっちが悪いと思うんですけどね(笑)。
伊藤 僕らは向いてないよね、フリーは。絶対できないですね。
──フリー時代に『ランジャタイのやるなら今しかねえ』(自主ライブ)を、板橋の区民施設で開催されてたのが印象に残っています。おそらく施設の方が作られた貼り紙が、何ひとつ合っていなくて。こちらの写真なんですが……。
国崎 (笑)。ほんとだ、何ひとつ合ってない。
伊藤 いやいや、楽しい。ファニーですよ。
国崎 そういうの見て、全然笑ってましたよね。
──(笑)。
国崎 僕らは90人席の大きめの会議室でやれてたんですよ。同じ日に、別の会議室でモダンタイムスさんたちがライブしてたときがありまして。
伊藤 それこそ、しらきさんと3人でライブやってたんだよね。
国崎 本番前に会議室に遊びに行ったらもうお客さんが入ってて。でも、よく見たら、客席が全員芸人。お客さんゼロ。だから、「そっち(ランジャタイのライブ)行っていいか? このままだとただの芸人の集まりになる」って(笑)。しらきさんとモダンさんの『妖怪客ふやし』っていうライブです。
──タイトルがまたすごい(笑)。
国崎 モダンさんが「ちょっとでもいい日にしたい」って言い出してね(笑)。「90人の前でネタやらしてくれ」と。
──そういったライブの手配も、すべて自分たちで?
国崎 やってましたね。予約するために施設まで行かないといけないんですよ。恥ずかしいのが、受付に来てるのがほぼ婦人会のおばちゃんたちで。その隣で“やるなら今しかねえ ランジャタイ”って書くと「何あの子」みたいになって(笑)。
──(笑)。
国崎 モダンのとしみつさんともトークライブをやってたんですけど、“しゃべり戦”ってタイトルを書くのが恥ずかし過ぎて。受付のおばちゃんに「タイトル何にしますか?」って聞かれるんですよ。で、僕らが小声で「“しゃべり戦”です」と。で、「“しゃべり戦”ですね」って大きな声量で復唱されるんです。
──ちょっと小声で言うんですね(笑)。
国崎 だって、会議室でなにが戦だ!みたいな。恥ずかしくて。
──そもそも、芸人さんがライブするための施設ではないですもんね。
国崎 やっちゃダメです、本当は。
伊藤 隣で普通に会議とかしてるからクレームとかあったよね。「ちょっとうるさいよ」って。
国崎 隣でセミナーを開いてる人がいて、ライブ中に「すいません、静かにしてください」ってクレームが入って。そのつづきで「こんなこと言いたくないんですけど、ファンなんです」って! 「でも、言いづらいんですけど、うるさいです」って(笑)。
伊藤 そのあとお客さんにも「静かにしてください」って言って、誰も笑わないようにして。
国崎 その中でネタするんですけど、盛り上がらないからライブも早めに終わったり。
──なかなか事務所に所属している芸人さんだと味わうことができない、過酷な環境です。
国崎 事務所はハコを貸してくれたりしてますからね。
──そんな『やるなら今しかねえ』、事務所に所属したあとも継続されていますが、それは昔からのファンはすごくうれしいと思います。
伊藤 もう習慣みたいなもんですね。
国崎 月1で、今は事務所の稽古場を貸してもらってるんですよ。そこから配信して、全国の人が観てくれるのはうれしいですね。
伊藤 ずっとやりたいです。
──いい環境になって本当によかったです。フリーには戻りたくないですか?
国崎 フリーはもうできないです。だから、グレープ潰れないでくれって思ってますね(笑)。
伊藤 グレープは潰れないでしょう。
国崎 わかんないよ、サンドさんが「新しい会社開く」とか言って、ゴタゴタになるかも(笑)。
壮絶な経験をしてきた彼らが、今なぜメディアで人気を博しているのか。後編では、そのきっかけと、芸人として目指す姿について深掘りした。
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