俳優・野村周平「自分の代わりはいくらでもいる」留学を経て気づいた“他者評価より大切なこと”

2021.10.21
野村周平

文=於ありさ 撮影=佐々木康太 編集=高橋千里


「もう学生じゃないから……」仕事や自分の置かれている環境を理由に、やりたいことを諦める人は多い。そんな発言を聞くたびに、「働くことは、夢を諦めることなんだろうか……」と絶望してしまうことはないだろうか。

そんな幻想を壊してもらうべく、約1年間のアメリカ留学を経て仕事を再開している俳優・野村周平さんに話を聞いた。

10月21日スタートのABEMAオリジナル連続ドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ 新世代逆襲編』で主演を務めるなど、1年間のブランクを感じさせない活躍っぷりを見せる野村さんは「働くこと」をどのように捉えているのだろうか。


自分と似ている役のオファーは「逆に困る」

野村周平

──主演を務めるドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ 新世代逆襲編』では、大学ビジネスコンテストに優勝して起業する鶴田祐介を演じますが、ご自身と似ているなと思う部分はありますか?

野村周平(以下:野村) うーん……ないですね。どのドラマに出るときも聞かれますけど、基本的に役と自分自身は別物なので、似ていることって実はあんまりないんです。

──似せにいくために、どのようなことをされるのでしょうか。

野村 そうですね。今回だったら、起業家の役だから、そういう人物が出てくる作品を観たりしました。どちらかというと、自分とは逆の役のほうがやりやすかったりするんですよね。新しいことに出会えるから。もし、自分と近い役、たとえばスケーターの役とかオファーされたら、すごく難しいですね。断っちゃうかもしれません。

──なんでですか?

野村 本当にスケボーが好きで、僕自身がスケーターだから、好き勝手やりたくなっちゃうと思うんですよ。監督に「こうして」って指示されても、それがスケーターとしてあり得ない動きなのであれば従うことがたぶんできない(笑)。

野村周平

我慢できるようなものなのであれば「やらなくて、いいんじゃね?」

──野村さんは、2019年5月よりニューヨークに約1年間留学していましたが、留学を決めた理由を教えてください。

野村 単純にニューヨーカーになりたかったからです(笑)。よく勘違いされるんですけど、別にお芝居の勉強をしに行ったわけではないんです。

ただ、芝居から離れたかったというわけではありません。戻ってきて、やらせていただけるのであれば俳優のお仕事をやりたいという気持ちは揺るぎませんでした。向こうでできた友達とも、好きな映画の話ではすごく盛り上がったし、改めて映画や映像が好きなんだなって再確認するきっかけにもなりましたね。

──そうなんですね。

野村 ただ、今思うと本当に運がよかったと思います。いつだって行けるわけじゃなくなっちゃったから「行きたい」って思ったときに行って本当によかったなって。

野村周平

──確かに。でも、1年間、俳優のお仕事をしないことへの不安はなかったのでしょうか。

野村 あまり感じなかったかもしれません。こんなにSNSが発達しているから、インスタグラムは変わらず更新できるし、1年間テレビに出ないからって、みんな俺を忘れないでいてくれるかなって(笑)。

逆に「ニューヨークで職探してください」って言われても、全然探せたと思います。「働く」って意味なら、何かしらあるっしょって。だから、あまり重く捉えていませんでしたね。

──「行く」ことへの恐怖心よりも、「行かない」選択はしないという気持ちのほうが勝っていたんですかね。

野村 そうですね。やっぱ人生1回ですから。だってもし「明日死ぬ」って言われたら、絶対好きなことやるでしょう?

野村周平

僕ね、たいていの夢は叶えられると思うんです。さすがに「国を買いたい」とかは無理だけど、高級車がどうしても欲しいなら、住む場所や生活のレベルをめちゃくちゃ下げて、ローンを組みまくれば意外と買えたりするじゃないですか(笑)。

──確かに。

野村 何かを犠牲にしたら、たいていのことは手に入る。がんばったらどうにかなる。それなら、がんばりゃいいじゃんって。逆に「そこまで我慢できない」って思うなら「やんなくてもいいんじゃね?」って思っちゃいます。

──野村さん自身、我慢できずにやっていることってありますか?

野村 めちゃくちゃありますよ! スケボー、BMX、スノボー、バイク、車……。

「大丈夫。代わりはいくらでもいる」

──お話を聞いていて、野村さんには「仕事を理由に、やりたいことを諦める」という選択肢はないんだなと思いました。

野村 大丈夫。仕事では、自分の代わりはいくらでもいるので。すごくドライに聞こえると思うんですけど、いい言葉だと思うんですよね。

──どういうことでしょう?

野村 確かに、本当に代わりがいない人もいるとは思うし、それくらいを求められる人材にはならないといけないとは思いますけど。

でも「私がいなきゃダメだ。私の代わりはいない」って、たいてい自分で自分に催眠術をかけちゃってるだけだと思うんです。そうやって言われたわけじゃないなら、まわりのこととか、辞めたあとのことを考えて悩まなくていいと思うな。

野村周平

──そういうふうに考えられるのって、どうしてなんでしょう?

野村 仕事だけじゃなく、プライベートが充実しているからですかね。趣味が多いし、一緒にそれを楽しむ仲間、心が通じ合っている仲間がいっぱいいるので。

仕事をしている間は芸能人ですけど、仕事が終わったら普通の人間ですからね。バイブスが合う仲間を大事にしていきたいんです。

──野村さんの人生において、仕事ってどんな存在なんでしょうか?

野村 やりたいことをやるための金稼ぎ!

──(笑)。

野村 本当に極論を言えば、仕事は金稼ぎだと思っています。お金もらってやるのが仕事で、逆にお金払ってやるのが趣味。僕は趣味のために金を稼ぎたくて、仕事をしているんです。だから、がんばれる。

野村周平

──仕事を辞めたいって思ったことはないんですか?

野村 毎日思ってますよ(笑)。もちろん、俳優という職業に誇りを持って仕事に臨んでいますが、何か違うことをしていた人生もあったんじゃないかなと思います。逆にいえばそのくらいのテンションでいるから、気負わずにつづけられているんだと思います。

もちろん心の底では「俳優しかない」と思ってますけどね。

自分軸を持っている人のほうが「偉いし、強い」

──野村さんが仕事をする上で、大事にしていることがあれば教えてください。

野村 仕事でも、日常でもそうですけど、「ダサいことをしない」ってことですよね。

野村周平

──ひとりの人間としては、どんな人になりたいと思いますか?

野村 うーん……実はあまりないんですよね。みんながハッピーならそれでいいし、他人に何を言われても、自分がかっこいいと思えるならそれでいいやって。

──昔から、あまりまわりのことを気にされないんでしょうか?

野村 いやー、昔はそれなりに気にしていたと思いますよ。徐々にこうなっていきました。ただ、アメリカで生活して、日本にいるときって他人のことを気にし過ぎてたよなって改めて思いましたね。

野村周平

──なぜですか?

野村 アメリカでは道端で歌っている人とか、地下鉄で踊っている人がいっぱいいるし、自転車漕いでいる3人にひとりぐらいは爆音で音楽聴いたり、歌ったりしていたんですね。でも、それを誰も気にしていないんです。

要は他人に興味がないんですよ。自分のことを考えるのに精一杯。それでいいと思うんですよね。

──他人からの評価よりも、自分の中にある軸のほうが大切なんですね。

野村 そうね。やっぱりね、好きなことがある人のほうが偉いし、強いんですよ。

たまに「そんなことが好きなの?」「オタクじゃん」って笑う人がいるけど、そういうのはね、中身がない人が叩いてるだけなんですよ。

だから、好きなものがある人はかっこいいなって思うし、リスペクトしちゃうし、それを笑っている奴がいたら「お前のほうがダサい」って言っちゃう。だから、そういうことを言う奴らはほっといて、好きなことを貫いてほしいですね。

野村周平

ABEMAオリジナル連続ドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ 新世代逆襲編』(10月21日放送スタート)

「会社は学校じゃねぇんだよ!」若者を熱狂させた前作から3年、『新世代逆襲編』としてかえってきた!

成功を夢見て邁進するイタイくらにアツい若手起業家の、“すべてを奪われてから始まる”下克上物語。何者かになりたくて、仕事、恋、夢、人生に一生懸命になって苦悩するすべての若者に送る、“成功を夢見る新世代の若者”から“時代をつくった起業家”への逆襲劇。


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