Aマッソ、「配信は芸人が自分の価値を見失う」。ふたりが新しいネタを作りつづける理由

2021.10.3
Aマッソ

文=ラリー遠田 撮影=いわなびとん 編集=鈴木 梢


ラジオにテレビ、YouTube、雑誌での連載など、さまざまなメディアで存在感を放つ、Aマッソの村上と加納。2021年10月7日からは、帯番組として復活する『MBSヤングタウン』の木曜パーソナリティを担当する。

インタビュー後編の今回は、Aマッソのふたりが考える今のお笑い界、そして自身の活動の現在とこれからについて聞いた。

【前編】Aマッソ、メディア引っ張りだこも「このままやったらあかん」。伝説のラジオに大抜擢された今、何を思うのか


新しいネタをやるのはサービス精神

——Aマッソはどんどん新しいネタを作っていて、1本のネタを磨くということをあまりやらないイメージがあります。

Aマッソ
Aマッソ加納(かのう)1989年2月21日生まれ、大阪府出身

加納 やらない。

——それは同じネタをやりつづけると自分たちが飽きるからですか?

加納 飽きるし、作ってるほうが楽しいからかな。

Aマッソ
Aマッソ村上(むらかみ)1988年6月16日生まれ、大阪府出身

村上 やるほうも楽しいよ。

加納 楽しいけど、よしもとみたいに寄席がないから、ずっと新しいお客さんの前でやってるわけじゃないんですよね。ウチらは同じファンの人たちが来てくれる劇場しかないから、どうしても「じゃあネタ変えようか」と思っちゃう。

村上 サービス精神なんですわ。

——Aマッソといえばこのネタ、というようなネタが欲しいという気持ちもあるんですか? あまりそっちを狙っていないのかと思っていました。

加納 でもたぶん、狙ってなくても、ジャルジャルさんにはあるじゃないですか。めっちゃいっぱい作る中で、これがハマんねや、とかは生まれるわけやから、作る過程の中で生まれたらラッキーくらいには思ってるけど。それだけをやるようになるとかじゃなくて、とりあえずこれをやっておいたらいい、とかは1個くらいあってもいいよな。

村上 めちゃめちゃあっていいよ。

加納 がんばろう。

配信で芸人がほんまの自分の価値を見失っている

——一方で、公式YouTubeチャンネルとか、加納さんの文筆業とか、ネタ以外のことにも力を入れていて、ネタ一筋というタイプではないですよね。

Aマッソ

加納 だって、ウチらどうせ40超えたらネタやってないじゃないですか。劇場がないから、やすとも(海原やすよともこ)さんにはなられへんねんから。だから、何かしないと未来がない気がする。今のうちにやれることはやって、あと3年か5年くらいでデカい単独ライブをできるようになっていたいなというのはありますね。

村上 全国ツアー?

加納 全国ツアー、やりたい。

——まだ全国ツアーは厳しいですか?

加納 まだ無理。東京、大阪、あとはがんばって名古屋くらいじゃないですか。名古屋1公演やな。

Aマッソ

村上 土曜で2公演にしとく?

加納 2公演行ける? 小さい小屋やろ?

村上 (座席数)100。

加納 100、2回やな。

——コロナ禍の影響でライブができなくなったり、ライブの客数を減らしたり、配信が増えたりするという変化があったと思いますが、それについてはどう思いますか?

加納 配信が増えているのはちょっとよくないですよね。配信で儲かっているから、芸人がほんまの自分の価値を見失っていると思う。もちろん商業やからお金が儲かるのも大事やけど、なんかやらしい感じになってて。この組み合わせやったら配信売れる、金入る、みたいな感じになってる。

——そっちに行き過ぎるのは危険ではないかと。

加納 前の状態に戻ったときに、なんかちょっとハズいことになるんちゃうかなとは思ってる。ちょっとうまく言語化できないですけどね。配信がなくなったとして、もともとそうやったのに「上がり(収益)、こんなもんか」とかなりそう。芸人が舞台を低く見るようになると困るなと思います。

——おふたりもライブ配信で収入が増えたりはしていると思うんですが、そこは気を引き締めていこうと。

加納 というか、こんなんつづいたら演芸界はどうなんやろな、というのはあって。配信って、粋じゃないと思う。今はいろいろなことをなんでも言うてまう時代じゃないですか。

——わかります。そうですよね。

Aマッソ

加納 それとマッチして、売れてる・売れてないみたいなことも観る側にも伝わってるという、このあけすけな状況が野暮やなと。配信とか関係なくおもしろい人もたぶんいっぱいおるやろうけど、そういう人も配信をやらざるを得ないと思ってるやろうし。

——なるほど、芸人がYouTuberみたいになっているんですかね。

加納 ほんまそうですね。再生回数とか配信売り上げとか、芸人ってそういうもんか?という。ほんまに映像で見せんねやったらそれ用の供給があるべきだけど、今は舞台の上のやつを別に記録として撮ってるだけやから、これがゴールではないですよね。ここからどうなるんやろう、って。

YouTubeは折り合いが難しい


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ラリー遠田

(らりー・とおだ)1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わ..

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