Aマッソ、メディア引っ張りだこも「このままやったらあかん」。伝説のラジオに大抜擢された今、何を思うのか

2021.10.2
Aマッソ

文=ラリー遠田 撮影=いわなびとん 編集=鈴木 梢


YouTube、テレビ、雑誌連載など、さまざまなメディアを縦横無尽に駆け巡るAマッソの村上、加納。2021年9月までは『Aマッソの両A面』(MBSラジオ、Radiotalk)を担当、さらに10月7日からは、22年ぶりに帯番組として復活する『MBSヤングタウン』木曜パーソナリティを担当する。そんなふたりの現在とこれからについて聞いた。


ゆるやかに右肩上がりだけど、このままやとあかん

——ラジオも含めて、Aマッソの現在の状況やお仕事ぶりについては、どういうふうに思っていますか?

Aマッソ
Aマッソ村上(むらかみ)1988年6月16日生まれ、大阪府出身

村上 ゆるやかに右肩上がり。

加納 本当にゆるやかにね。下がっていないだけ。売れたという感じではないけど、ゆっくりテレビの仕事が増えてる。

——まだ売れた実感はないですか。

加納 全然売れてはないですね。

——ただ、お笑い界の状況も変わっていて、テレビでもお笑い番組やお笑いっぽい企画が前よりも増えていますよね。

Aマッソ
Aマッソ加納(かのう)1989年2月21日生まれ、大阪府出身

加納 若手のチャンスが増えましたよね。でも、その代わり、1回出たところで、っていうのはあると思う。『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)のころに1回出るのと、今ネタ番組に1回出るのとでは、打撃の強さは全然違う気がするから。出てはいるけど、という人が多いと思います。

——やはりテレビにはもっと出たいですか?

加納 テレビには出たいし、(お客さんを)ライブに連れてきたいですね。全国ツアーとかもやれていないから、やれるくらいキャパをでかくするためにテレビに出たいという感じです。YouTubeもあるから、やりたいことをやられへんみたいな状況ではないので。

——テレビに関して、村上さんはどうですか?

Aマッソ

村上 出たいです。最近、徐々に楽しくなってきました。

加納 まだやらされてる系がないもんな。嫌な気持ちになりながら出るみたいな番組のランクまで行けてないから。

村上 最初のほうは緊張するから楽しくなかったけど、今は楽しくなってます。

加納 次のゾーンに行ったら責任ゾーンに入るから楽しくなくなるんかな。売れている人の死んだ目のゾーンに。わからんけど。

村上 楽しいけど、まだちょっと緊張するから、ちょっとだけ楽しいです。

Aマッソ

加納 でも楽しんでいる場合じゃないこともわかる。このままやとあかんねんな、という。

村上 それはウチも肌で感じています。

加納 ここじゃないよね。

ジェンダー担ぎも批判もそんなにストレスではない

——お笑い界では女性芸人の活躍も目立っていて、若手でもいろいろなタイプの人が出てきている感じがありますが、その状況についてはどう思いますか?

加納 私は、まだブームの渦中やから、変わったって結論づけるにはちょっと早い気がしていて。落ち着いたときにもう1回、前の(男女)比率に戻る可能性もなくはないなと思っています。

ウチらも恩恵は受けているから否定的ではないけど、言うても個性なので、女芸人として出た上で、どういうジャンルになっていくかはここからだという気がします。

——最近ではジェンダーの問題が女性芸人のネタや生き方に結びつけて語られることも多いですよね。ヒコロヒーさんがみなみかわさんとそういうテーマの漫才をやったら注目されたり、一時期、Aマッソも『進路相談』のコントがそういうふうに評価されたりしていました。そういう見られ方についてはどう思いますか?

加納 あれも6〜7年前のネタで、今はもうそこを打ったら響くやろなってわかっているから、今あれをやるとなったらちょっとハズくてできひん。

——もともとそれを狙っていたわけではないと思うんですが、そういうところに引っ張り込もうとする世間の空気がありますよね。

加納 確かにね。でも、その芸人に芯があれば、そういうネタもありながら、ほんまにやりたいのはこっちだよ、というのが出せるから。ジェンダー担ぎも批判も私はそんなにストレスではないですね。

——Aマッソは女性だということでナメられたり、色眼鏡で見られたりしたことはなかったんでしょうか?

加納 ゼロですね。むしろいい思いをしていたほうかも。

村上 確かに、トイレとか空いてたもんな。女楽屋はひとりだけでラッキー、みたいな。

加納 けっこう早くから「こっちで勝手にやりますんで」っていうふうにやっていたので。男社会の中で「ウチらも見てや」みたいなのをあまりやってきていなかったからかもしれないですね。

——一時期は賞レースに出ていないこともありましたが、最近ではまた出ているそうですね。賞レースに対する考え方はどう変わったんですか?

Aマッソ

加納 全体重を置くことはないけど、おもしろいネタは作りたいし、いい舞台でやりたいというのはあるから、全部やったらいいやんというモードに入りました。賞レースのあのオリンピック的な精神美学は別にそんなに好きじゃないけど。

——村上さんは?

村上 (加納に)「おいでよ」と言われたので、「行くわ」と言って行っています。

——昨年は『THE W』の決勝で披露した映像を使ったネタが話題になっていましたが、あれは相当反響が大きかったのではないでしょうか。

加納 そうですね。でも、やっぱりコスパが悪過ぎて、あのネタをやってくださいというオファーは1年間なかったので、失敗と言えば失敗ですね。衝撃はもたらせたけど、ネタとしては別に育ってない。あの1回かましただけになってるから。

村上 結局、なんの人なのかはちゃんと伝わっていないというか。

加納 ミルクボーイさんはたぶん『M-1グランプリ2019』で優勝したとき、そこから1年間あのネタのオファーがありまくったと思うんですけど、ウチらにはそういうオファーはなかったから。ちゃんと残るネタを作りたいなという気持ちはあります。

リスナーは熱いしうるさい、ちょっと監督みたいな目線を持ってる


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ラリー遠田

(らりー・とおだ)1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わ..

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