技術実験だったVTuber
──あれ? ではご自身をVTuberコンテンツとしてエンタメに売り出すというのは考えていなかったんですか?
平井 考えてなかったです。ずっと「データを取らなければ」と考えていたので、まさか自分も取れるの?って。自分いる?って。僕個人は何かするときに、まったく自分は頭に入ってなくて。
──確かに陸上競技とか歌舞伎とかの話をしていると、ちょっと視点の位置が違うかなって感じはしますね。
平井 そうですよね。行き着いたのがVTuberだったんですが、僕からすると最初はあんまりよくわからない世界だったんですよ。キズナアイ(※2016年誕生)さんという、よりアニメーションっぽい、よりゲームっぽい、より日本の人が好きそうなデザインのキャラクターが出てきて。モーションで動かす技術はわかるんで、動かしてるなあって思って見ていたぐらいでした。
──キズナアイさんがYouTuberを模して、エンタメを提供しているっていう感覚ではなかったんですね。
平井 ピンときてなかったんですよね。彼女自体がタレントであればYouTubeを使用して活動するというのは理解できたはずなんですよ。でもキズナアイさんを3Dデータとして考えたときにゲームや声優さんの宣伝になるよねーとか思えたんですよね。
──確かに今だとCygamesさんの『ウマ娘』の『ぱかチューブっ!』やYostarさんの『CREATIVE TRAIN』がやってますね。
平井 その当時、ゲーム会社の皆さんはプロモーションとして活用するには現実的ではないという判断だったんじゃないかと思います。ゲーム会社の方に聞いたら「もちろん使えるだろうね、すごいよねかわいいよね、でもうちの会社のゲームだと、うーんひと手間かかるんだよなぁ」って。昔からあったゲームの『アイドルマスター』だと、もうアイドルが3Dのデータで動いて、ダンスしたり歌ったりしているんです。だから作れるのは作れんねんけどな、って。だから、まあそら生で動かす人も出てくる、っていうぐらいで確認させていただいておりました。
──2017年当時活動されていたVTuberはキズナアイさん、電脳少女シロさん、ばあちゃるさん、ミライアカリさん、ときのそらさんとかだと思うんですけどリサーチはされていたんですか?
平井 していました。シロちゃんが出てきたときは、詳しい人みんなで「あのキャラクターはゲームのキャラクターなんですか」「いやオリジナルのキャラクターみたいだよ」「元はゲームのキャラクターかもしれないねぇ」「人気が出てきたみたいだよ」「やっぱりかわいいねー」とか話していましたね(笑)。
──ゲームのキャラクター性を見ておられたようですが、そこに自身をキャラクターとして持ち込むってけっこうハードルが高くないですか?
平井 そこは流れですね。2017年の6月ぐらいに15人くらいの人を使って、3Dのモーションのセンサーで何人動かせるか友人と実験したんです。部屋40畳くらいの中に、カメラが十何台か設置されていて、身体に白い玉をたくさんつけて、いろんな角度から玉の場所を座標で捉えることができる仕組みです。最初は15人にそのセンサーをつけたんですけど、やっぱ身体動かすのは無理だったんですよ。そこで頭の上にセンサー1個だけつけたら、15人それぞれがどこに存在するかの位置が取れたんです。なのでそれを卵型にして、名前をつけて、声をつけたときに、それぞれ個性が出てくるねって話をしていたんです。
──卵にキャラクター性が生まれた!
平井 このまま卵のVTuberにしようって言って撮影してみたんですよ。とまあ長い間しゃべってきましたけど、ここまでは要はただの技術実験です(笑)。
なくなるので終わらせるっていうのは僕の中ではない
──2018年くらいからバーチャルで漫才を実際にこんな人間のボディとしてやられたと思うんですけど、実際最初に動いて人に見せてみてどうでしたか?
平井 皆さんおもしろがってくれていまして。若いねーとか。簡単にキャラクターを作れるアプリケーション「Vカツ」を作られていた会社の方と仲よかったんで、サービスのプロモーションリリースのタイミングで「アメリカザリガニ」も一緒にいかがですか?って話をしてたんです。
──じゃあ「Vカツ」がなかったらバーチャルアメリカザリガニはなかったと。
平井 なかったと思います。「Vカツ」の活用例としてアメザリのモデルデータも紹介していただきました。
──バーチャルのボディを手に入れてから漫才ですとかテレビにも出ていらっしゃいましたし、引っ張りだこでしたけれども、まわりの人の反応はどんな感じでしたか?
平井 なかなか理解が及ばない人もいるようです。でも僕個人のまわりには、興味ある人しかいないですよ。ゲーム開発とかやってる人たちはおもしろがって、「モデルの流用できるんだ、けっこう簡単に動くんだねえ」とか。全然反応が違うんです。
──どういう環境で収録されていましたか?
平井 「バーチャルキャスト」を使いました。北海道のゲーム会社の人に見学させていただいたんですよ。VRの空間に部屋が1個あって、そこに6人とか7人とかたくさんの人を入れてバーチャルのキャラクターでコミュニケーションを取れる。ならばこの中でアメリカザリガニがふたり入って漫才することは可能ですよね、って。「もしよろしければご一緒に何かしらさせてもらえませんか」と言ったらバーチャルキャストさんが「いいっすよ! 全然うちの使ってくださいよ、おもしろい技術ですから!」って。
──バーチャル空間に複数人入って配信が簡単にできるっていうの画期的でしたよね。
平井 そうですね。海外だと「VRChat」なども存在してたんですけど、たまたま北海道に行ったタイミングでお話できたのが大きかったんですね。じゃあちょっと東京に戻って一緒に何かやりましょうよと言っていただいて、定期的に漫才のライブをバーチャルで始めました。
──2018年から始まった「アメザリノブイアール」シリーズは多くの方が見ていましたが、見に来るお客の層はどのへんなのでしょうか?
平井 20代から40代の男性ですね。男性が8割とか7割、アメリカザリガニを知っている女性3割、でしたね。
──まったく新規で来る人とかはおられましたか?
平井 おられました。そういう技術に興味がある、ゲームやパソコン好きな方々が見ていましたね。
──ここで出てくる「バーチャル角座」はどういう流れでできたものなんですか?
平井「道頓堀角座」っていう建物が大阪難波に存在してたんですけど、このたびなくなりますって聞いたんです。そこで僕が「設計図ないか」って言ったんですよ。
──あっ、さっきの話につながってくる気が!
平井 長年つづいてきたものを、なくなるので終わらせるっていうのは僕の中ではなくて。全体の設計図はなかったけど、舞台のまわりの設計図は残っていた。それを元にステージをバーチャルで組んだんですよ。だから実際にあるステージと同じ広さで存在しています。
──有形文化になっていますね。じゃあ今も「道頓堀角座」は、なくなっていない。
平井 僕の中ではデータ上、存在しているという感じです。
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