アルコ&ピース平子が語る。酒井健太の魅力は「おもしろがられ力」「許され力」そして「酒井力」【魅惑の相方 vol.1】

魅惑の相方

文・編集=佐々木 笑 撮影=TOWA


今を生きるコンビ芸人は、誰しも相方に魅力を感じているはずだ。そうでなければずっと一緒にいて何かを成し遂げることは難しい。

しかし、わざわざ言葉にして表現する芸人は少ない。それはきっと、機会がないからという物理的な理由もあるが、あえて口に出すのが恥ずかしいからではないだろうか──。

本連載企画は、相方の魅力を聞き出し、まだどこにも出ていないコンビの関係性に迫り、コンビそのもののよさを世に知らせたい、という思いで発足したものだ。

第一弾は、コンビ年齢差5歳、異質な関係性が謎めいていて誰も掴み切れないふたり、アルコ&ピース。平子祐希に、相方・酒井健太の魅力を語っていただいた。

“平子り(※謎なボケをしたり、嘘をついたり、何かのキャラになりきったりを一心不乱につづけること)一切ナシ”の、貴重な真剣単独取材。相方にしかわからない、酒井健太の魅力とは。

平子の茶色い瞳は、いったい酒井の何を見据えているのだろうか

酒井の「おもしろがられ力」に注目される今は、ボーナスステージ

──「相方の酒井健太さんについて」がテーマですが、今までこういった取材はありましたか?

平子 お互いの印象を~みたいな取材はありましたけど、一方的にっていうのはないかもしれないです。

──今日は、がっつり30分間。

平子 うわぁ、しんど……お互いしんどいかも(笑)。

──よろしくお願いします(笑)。まず、現状『しくじり先生』(テレビ朝日)内の企画「アルコ&ピース酒井を考える」もそうですし、酒井さんが注目されることが以前より多くなってきたように思いますが、平子さんはどう感じていますか?

平子 もともと「おもしがられ力」を持っていると思うんです。「おもしろい」って言うよりは、「おもしろがられ」。

──「イジられ力」?

平子 「イジられ力」ともまた違う。イジられたところで大したものが返ってくるかって言ったら、そうじゃない。一方的におもしろがられる。その反応が強けりゃ強いで……まぁ大概は弱いんですけど、それすらもおもしろがってもらえるって感じはありますね。

──この流れは、平子さんからするとうれしいですか? 「やっと!」というような。

平子 やっとも何も、こんなの僕とマヂカルラブリーで作り上げたものだと思ってる。みんなが一生懸命積み上げたもののボーナスステージだと思ってるんで。

──平子さんだけでなくマヂカルラブリーさんも、酒井さんの「おもしろがられ力」にはとっくに気がついていた?

平子 かなり昔からの付き合いですしね。でも、どうなんですかね? 地下時代の過去を引っ張り出さないと、近々の実績がないってのも問題ですよね(笑)。昔は!って、20年前くらいのものをみんなで引っ張り出してる……。

──今のお笑いファンの中には、そういうお話をエモーショナルに感じる人も多いと思います。

平子 昔から“ザ・地下”で一緒にやってたマヂラブが『M-1』優勝したっていうのは、ずっとエリートを歩んできた人間よりもセンセーショナル具合が違うとは思いますね。そこのヒキとタイミングと、僕にとっては運です。昔からの仲間が、こうやってドーンとなってくれるというのは。そこも、ボーナスステージです。

取材冒頭、平子は「このテーマだと2分くらいで終わりますよ」と笑っていたが、実際は時間が足りなくなるほどお話ししてくれた

おせっかいだろうけど、酒井に対して親心を持っている

平子は現在42歳。大人の魅力がある

──酒井さんとは5歳差ですが、そのくらい下だと、少し客観的に見られるというか、弟や後輩を見るような感覚にもなるんでしょうか?

平子 もともとは後輩でしたし、僕の弟も5歳下なんですよ。なので、完全に僕はその感覚でしかないですね。相方というよりは、だいぶ歳下の子。

──一種の親心のような?

平子 それはあります。相方にはなかなか芽生えないんでしょうけど、僕はありますね。一方的でしょうけど。それをもちろん(酒井は)疎ましくも思うだろうし、おせっかいに感じるだろうけど、無意識にその感覚はありますね。

──ケンカというよりもお説教などがあったりするんでしょうか?

平子 お説教はないです。ケンカもないし。やっぱり5歳差離れてると、一方的になっちゃうかな?と。対等な意見の言い合いにならないような気がして、今まで一切ないです。ゼロでした。

──ゼロですか! では、『M-1グランプリ2018』の出来事でも、言い合いにはならず?(※3回戦のネタ冒頭で、平子が酒井のプライベートに迫るアドリブをかました)

平子 あれも向こうが苦い顔してただけで、直接何かを言ってくるっていうのはないですね。その代わり、こっちもないし。

──そうだったんですね。おふたりが初めてお会いしたのは、平子さんが25歳、酒井さんが20歳のときですよね?

平子 はい。(劇場の楽屋にいた酒井のことを)BEAMSの店員と勘違いして話しかけた。

──性格面ではどういった印象でしたか?

平子 地下ライブのエンディングがあって、みんな告知したり一発ギャグやったりわちゃわちゃするコーナーなんですけど、トガリなんでしょうね? 「エンディング出たくねぇ」って言って、楽屋に俺と酒井だけが残ってたんです。お互い別のコンビのときですけど、舞台から漏れてくる声を聞きながら、ヘラヘラしてました。トガッてましたねぇ。

──エンディングに出ない芸人さん、今ではあまりいないような。

平子 そうですよね。どんなにトガっててもエンディングは出て、うしろで不機嫌そうに立ってるくらいはやる人いますけど、「行かなくていい」って思っちゃったのがふたり。それが印象強いかも。

──そのトガっていた時期と17年経った今の酒井さんを比べて、根本の性格は変わったように感じますか?

平子 いや、根本は全然変わってないですね。ライブでみんながわちゃわちゃやる場って、今の僕らに置き換えると番組のひな壇になるわけですけど、「まだ、いねぇなぁ……楽屋いんのかな?(笑)」って。

厚い胸板は、平子の見どころのひとつだ

いいふうに言えば「振り切れる力」。悪い風に言えば……


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佐々木 笑

(ささき・えみ)1996年生まれ。宝島社ムック局編集部のち、フリーランスの編集者・ライター。笑と書いてエミ読みます。本名通りお笑い大好き人間に育ちました。『フワちゃん完全攻略本』『#麒麟川島のタグ大喜利』『KOUGU維新 公式本で、イザ参ラン!』(すべて宝島社)など。アイコンは川島さんに描いていただ..

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