酒井は、遅れてきた芸人思春期真っ只中

──メディアで拝見する限り、酒井さんは明るい陽キャラに感じますが、かと思えば自宅をひた隠しにするなど、ちょっとミステリアスな部分もあるのかなと。

平子　ミステリアスにしたいんじゃないですか？　そこに関しては僕、めちゃくちゃ気持ち悪いんですけどね。別に酒井の恋愛面とか部屋を見せたところで、世間からそんなに反響ないのに隠すから、過剰なのかなって。意外とそういう部分の自意識は持ってんだなって、一個の違和感です。もっと隠すべき場所いっぱいあるじゃんって思うんですけど、そこをさらけ出して、そこは出していいじゃんってところを隠すから（笑）。

──ちなみに、隠すべきところとは？

平子　後輩の前で自由に生き生きとね……。そういう恥ずかしいところですよ。

──普段から、酒井さんは自分のプライベートはあまり話さないタイプなんでしょうか？　平子さんと後輩に対してでは、違いはあると思いますが。

平子　どうなんでしょうね？　後輩ができた途端、急に“相方としゃべんないキャラ”に入ったんで。わかりやすく。

──後輩ができる前は？

平子　コンビ間では普通にしゃべるほうでしたよ。後輩とつるみ始めたら急に「いやぁ、相方とは」みたいな。これって本当は20代とかに来る感覚。遅くても30代半ばを超えたら、もう普通のおじさん同士だからそのへんってないがしろになるんですけど、あいつは芸人思春期がちょっと遅くて、今真っ只中です。「一昨日『遺書』（松本人志 著／朝日新聞社）読んだのか？」って感じ。まわりから見ると、陽気な酒井ちゃんってイメージがありますけど、唯一俺にはそういう表情を見せるんで……。まあ、あからさまな芸人思春期ですね。遅いんですよ、圧倒的に。

──でもそれも、5歳離れているからこそ「かわいいな」ですむんでしょうか？

平子　俺はその側面で見てますね。そういう時期が人よりちょっと遅いだけだよなっていう。こう思われてるの、めちゃくちゃ嫌でしょうけどね（笑）。

プラスな観点を、勝手にみんなが積み重ねてくれる

──アルコ＆ピースさんはコントも漫才もされますが、平子さんは以前『しくじり先生』内で、「酒井の女性役はすごい」とおっしゃっていましたね。

平子　僕、言ってましたっけ？　あぁ……適当に言っちゃってんな……。でも、仕草とか所作は、ちゃんと細かくやってくれてるなって思いますね。

──演技力がかなり高いんでしょうか？

平子　それもどうなのかなって思いますよね……。セリフが少ないぶん、演技にかけられる比重って高いから。サイレントな演技も多いんですよ、こっち側がセリフ多いぶん。そこでみんな「酒井ちゃん演技すごい！」って言うけど、そりゃまあセリフ少ないぶんそっちにかけられるんだから、そこはしっかりやってもらってなんぼだからな、というのは正直思うんですけど（笑）。

──正直なところを聞けてうれしいです。ドラマや映画にも出演されていますし、演技力は世間的にもかなり評価されているのかなと思ったんです。

平子　これも「そう思わせる力」なんです。たぶん、たいしたことはないんですよ。本格的な俳優さんを食うぐらいの演技力を持っているのか？芸人として突飛なのか？って言われると、そこまでではないと思うんですけど、「酒井がこれやれるなんて」っていう、すごく低いところからのスタートで、プラスな観点を勝手にみんなが積み重ねてくれる。

──まわりが勝手に。

平子　そう。酒井ちゃんだからねって、まわりが勝手に魅力を積み重ねてくれるような力があるのかなってすごく思いますね。でも、褒めちぎっている人に、「具体性を持ってその魅力を大いにプレゼンしてみて？」って言ったら、みんな一回「うっ」って口ごもると思うんですよね。でも、僕は近くでずっと見てるんで、その辺の秘密はなんとなくわかる。今お話ししたようなものなのかなって。

──これは本当に、平子さんだからこそ気づけることですね。

平子　みんな、知らず知らずのうちにあいつを許してるんですよね。適当過ぎても、アドリブ弱くても、ひな壇で黙っちゃっても。「アイツ使えねぇな！」って普通は思われがちなところも、いいふうに引き上げてくれるんで、さっき言った「許され力」だったり「引き上げてもらえる力」っていう部分につながっているのかなと。

酒井健太の魅力は「酒井力」

──平子さんのご自宅でみんなでご飯を食べたりもしている様子から、おふたりからは“大人な仲のよさ”を感じます。このコンビ歴で、家族ぐるみで仲よしというのは珍しいんじゃないでしょうか？

平子　そこは、僕の懐だと思いますけどね（笑）。完全に僕の懐です。100パーで。

──（笑）。蟹パーティなどはラジオのくだりがあってこそでしょうけど、メディアが絡んでいないときのお食事は、どちらからお誘いされるんですか？

平子　自然発生ですね。僕の誕生日が年末に近いんで、流動的な部分もあります。共通の後輩なんかも呼んで毎年やってます。どちらともなく「今年どうする？」って。今はコロナ禍で止まってますけど、なんとなく恒例行事になっちゃったから、逆に年末それがないと変な感じがしますね。

──平子さんのお子さまも酒井さんと仲がよさそうですし、酒井さん自身も姪っ子さんのお話をよくされてますが、お子さまに懐かれやすいんですかね？

平子　懐かれているのか、ナメられているのか。その「懐かれ力」っていうのも「許され力」とかにつながっているんでしょうけど、総合して何力って言うのかわからない。でも、そこを「人間力」っていうほどのものではないって僕は思ってるんで（笑）。「人間力」までいっちゃうと、言い過ぎかなって。ちょうどいい日本語がなかなか見つからない。

──酒井さんに「もっとこうしてほしい！」と思うところはありますか？　仕事面でもプライベート面でも。

平子　それしかないですけどね。世間の皆さまが見ているとおり、あれができねぇこれができねぇってのは、僕が横で身を斬りながら感じていることなんで……。ただ、僕は別に、じゃあひな壇やバラエティで前に出て集団芸に積極性を、ってのは全然思わないですね。なんかの折でそうやって言うことはありますけど、内心思ってないです。

──ありのままでいい？

平子　前に出ることに特化した芸人はいくらでもいる。けど、静かにしてるのにまわりが気にしておもしろがってくれるっていうのは酒井の独特なものだし、同じ舞台で無理やりスタイル合わせて戦う必要はないんじゃないのかなって。がんばってキャラ作って無理すれば、一瞬ふわっとピックアップはされるけど、それはつづかないですからね。だったら、持ち合わせたもので。それで食えるっていうのは一番難しいけど、それが一番長生きできる秘訣だと思うんで、そこに関しては要望はないですね。何力かわかんないけど、「酒井力」を誰かが勝手に見つけてくれれば。……かと言って、それでいいと思うなよっていうところも反面（笑）。その気持ちもあるけど、無理してがんばれよっていうのは思ってないですね。

──酒井さんの性格をひと言で表すとしたら、ズバリなんでしょう？

平子　えぇ～……。「酒井」。

──ほかの言葉では表せないですね（笑）。では最後に、この記事を酒井さんが読むことを前提に、彼にひと言いただけますか？

平子　……絶対に、天下取ろうぜ！

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この記事を酒井本人に読んでもらい、アンサーインタビューを実施。

酒井は平子からの意見を受け取り、いったい何を想うのか。そして、これを受けた上で、平子の魅力についても語っていただいた。