BABYMETALプロデューサー・KOBAMETALが語る「生きづらさを解消するメタル的発想」

2021.4.30

自分の居場所をいかに見つけるか

BABYMETAL

──KOBAMETALさんも、まさに0を1にしたというか、自分で新しい道を切り開いてこられたわけですけど、そもそもBABYMETALの青写真を思いつくまでに考えたことはなんだったんですか?

すでにあるものとか、道ができているものって、もうそれ以上はいけないんだろうなって思ったんです。やっぱりそれを作った人を超えていくのは、同じ道を通っている限りなかなか難しい。であれば、自分で新しく道を作っていったほうがやりがいもあるしおもしろいし、たとえうまくいかなくても納得がいくのではないかと思いました。メタルコミュニティのいいところ、サブカルコミュニティのいいところ、ほかにもいろいろあれとこれのいいところをかけ合わせて、ひとつにしたらどうなるんだろう?っていうところから発想しました。
たとえばアイドルにしても、当時の自分の視点からするとすでにルールというかマナーみたいなものができ上がっていると感じていました。だからそこに飛び込んでもそれに従うしかないわけですよね。でも、いいなと思うエッセンスだけを拾い上げて、ほかのものと融合させた上で別のものを作ってしまえば、それはどこにもないものが生まれるわけで、自分たちがルールを決めることができる。
ブームに乗っかることもひとつの方法ではあると思うんですけど、いずれそれは萎(しぼ)んでいくものなので、そのときに自分たちでルールを決められない世界にいたらしんどくなっていく一方だなって。結局はやっぱり、自分の、あるいは自分たちの居場所をいかに見つけるか、ということが生きていく上では大切なんじゃないかなと思います。

──それをメタルから学んだ。

そういうことです。

10 BABYMETAL BUDOKAN WORLD PREMIERE - Trailer

──(笑)。ちなみに、10年後のメタルはどうなっていると思いますか?

メタルってめちゃくちゃ暑苦しいイメージだと思われているんですけど(笑)、一方でデジタルとの相性がすごくいい音楽なんですよ。機材や楽器の進化の最前線にいるジャンルと言ってもいいかもしれない。とにかく緻密な構成と高度なテクニックが必要なジャンルなので、レコーディングの現場ではドラムは打ち込みが主流となっているくらいです。
だからもしかしたら、10年後のライブでは、もはや楽器を持っていないんじゃないですか(笑)? クラフトワークみたいに、パソコン1台置いてヘドバンしてるかもしれない。だから、ゴールデンボンバーさんはものすごく時代を先取りしているスタイルだと思います。

──なるほど(笑)。

そうやって考えていくと、歌舞伎にすごく近いなって思うんですよね。歌舞伎って平たく言えばお芝居なんですけど、でも一つひとつの所作や型がきちんと決まっていて、様式美の魅力ですよね。でも一方で、初音ミクとコラボしたり、最新の舞台技術との融合にもチャレンジされていると感じます。
それはやっぱり、様式美ゆえに最新のテクノロジーを導入してもブレないという強さがあるからだと思うんです。メタルもそうなんですよ。キメはやたらと多いし、演奏は高度だし、とにかくノリ一発では絶対にできないジャンル。でもだからこそデジタルとの相性がいい。今後も最新テクノロジーを導入しながら、でもメタルはメタル、という発展の仕方をしていくんでしょうね。

KOBAMETAL
(こばめたる)プロデューサー、作詞家、作曲家。2010年結成のBABYMETALのプロデューサーを務める。現在、『ダ・ヴィンチニュース』にて「メタルか? メタルじゃないか?」を連載中。
Twitter : @KOBAMETAL_JAPAN
Instagram : @kobametal_official
Clubhouse : @kobametal

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