BABYMETALプロデューサー・KOBAMETALが考える“コロナ禍を通過したライブ・エンタテインメント”

2021.4.28

文=谷岡正浩 編集=森田真規


2021年1月から4月にかけ、METALRESISTANCE最終章『10 BABYMETAL BUDOKAN』と題して、日本武道館10公演をやり切ったBABYMETAL。感染症対策のガイドラインを遵守し、いや、というよりも、その制約を逆手に取って、ライブ・エンタテインメントの新たな可能性を見せてくれたと言っても過言ではないステージだった。

オーディエンス全員に配布された「Savior Mask」や過去10年間のライブで蓄積されたファンの歓声を再現するなどの工夫で一体感を生み出し、ハンドクラップやストンプを駆使したレスポンスで会場の熱気を高める──そうした演出の数々は、同時に感染症予防対策にもなっているというコロンブスの卵的発想だった。

BABYMETALプロデューサーのKOBAMETALはいかにして、リアルライブを行う決断を下したのか。また、オンラインライブをはじめとした今後のライブ・エンタテインメントの展望について話を聞いた。


10年、20年後のエンタテインメントのかたちに興味がある

──『10 BABYMETAL BUDOKAN』でリアルライブを選択されたのはどのような考え方だったのでしょう?

コロナの状況次第では無観客でオンライン一発、という選択肢ももちろんありました。でも去年の夏を過ぎたくらいから、徐々にお客さんを入れたかたちでのライブが行われるようになってきて、それはキャパシティの制限であったり感染症対策でマスクをしなければいけないとか、声を出してはいけないというさまざまな制限があるものではありましたけど、その中でBABYMETALだったらこうやるかな、できるかなっていうアイデアが生まれてきたんですよね。感染症予防対策のガイドラインに沿いつつも、今までのライブのように楽しめる方法があるんじゃないかって思いました。そこからメンバーとも相談して、本人たちも有観客でやりたいという意見だったので、試行錯誤しながら、という感じでしたね。

『10 BABYMETAL BUDOKAN』より/Photo by Taku Fujii

──オンラインライブという選択肢が現実的なものになったのが、このコロナ禍においてでした。まず、オンラインライブをどのようなものとして捉えていますか?

やっぱりライブっていうのはアーティストとお客さんの相互関係で成り立っているものなので、その関係が目に見えるものとして、あるいは直接感じられるものとして存在していたのが今までのライブでした。
一方でオンラインライブの場合は、もちろんアーティストはパフォーマンスをしますし、それを観ているオーディエンスも画面の向こうではありますが、存在しているので相互関係は残る。でもそれはまったく違うものですよね。だから従来のライブと同じ文脈でオンラインライブを捉えてはいけないんじゃないかなと思っているんです。テクノロジーを駆使した、また別種の表現手段ですよね。

KOBAMETAL氏/Photo by Susumu Miyawaki(M-PROGRESS)

──そうすると、発信者にとっては、リアルライブとオンラインライブのふたつの手段があるということになりますが、今後、どうなっていくと思いますか?

食べ物にたとえてお話すると、コロナ以前に行われていたライブの味をみんな知っているから、どうしてもその味が欲しくなってしまうんですよね。それが今日からライブの味はこういう味ですよっていうのを提供されても──それがオンラインでもさまざまな制限つきのライブでも──前の味を知ってしまっているから、なんかちょっと違うなって思ってしまうのは仕方がない。
ただ、この先どうなっていくのかは正直わかりませんが、2020年に生まれた人たちが、あと10年、20年経ったときにどんなエンタテインメントを享受しているのか、エンタテインメントのかたちがどうなっているのか、というのはすごく興味があるんですよ。もし、今のような状況がつづいたとして──そうならないことを願っていますが──その新しい世代の人たちは、コロナ以前のライブの味は知らないわけじゃないですか。その人たちが初めて食べたライブの味は、デフォルトでオンラインだったりする。
そうなったときに、その世代の人たちの間で何が起こるかというと、いざリアルライブが解禁されたときに、「え、これって僕たち私たちが知っているライブの味ではないんだけど」ってことになるわけですよね。なんでわざわざ会場に行ったりしなければいけないの?とか、隣の人の汗とか飛沫がすごい飛んできて信じられないとか。そういうことになっている可能性もなくはないですよね(笑)。
だからリアルという概念は、その時々によって価値が変わるものであって、あんまりそこに固執するべきではないのかなと個人的には思います。だって、Z世代の人たちからしたら、ポケベルって何!? ガラケーって……。みたいなことなわけじゃないですか。

10 BABYMETAL BUDOKAN WORLD PREMIERE - Trailer

──そうなるとリアルライブはどのような価値というか、生き残り方をするんでしょうね。

そこは、その味を知っている一定数の人たちを対象としたレアなコンテンツとして価値のあるものになっていくんじゃないでしょうか。要するに「1万円のイチゴ」「ヴィンテージのワイン」みたいな価値の持ち方ですよね。総体としての規模は小さくなるかもしれないけど、だからこそ価値観は高まっていくという。
でもどうなんでしょうね、リアルライブとオンラインライブで二極化していくかもしれないし、もしくは想像もしなかったようなことになるかもしれない。むしろ、そうなってほしい。どうなるのかはわかりませんが、とにかく変化しないままありつづけることはないし、単純に元に戻ることもない、というのは確実に言えることだと思います。

※KOBAMETALインタビューの第2弾は4月29日にQJWebにて公開予定。

KOBAMETAL
(こばめたる)プロデューサー、作詞家、作曲家。2010年結成のBABYMETALのプロデューサーを務める。現在、『ダ・ヴィンチニュース』にて「メタルか? メタルじゃないか?」を連載中。
Twitter : @KOBAMETAL_JAPAN
Instagram : @kobametal_official
Clubhouse : @kobametal

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谷岡正浩

(たにおか・まさひろ)フリー編集者・ライター。情報誌『ぴあ』元編集長。構成を手がけた主な書籍に、『ラストデイズ 忌野清志郎 太田光と巡るCOVERSの日々』、『村西とおる語録集 どんな失敗の中にも希望はあるのでございます』(共にパルコ出版)などがある。

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