松山ケンイチ×東出昌大×吉田恵輔 “BLUE”に重ねられたボクサー&俳優の人生

2021.4.6


「何かに向き合い過ぎると、理解を超えた関係性になるのかもしれない」

瓜田と小川は親友同士。先に始めたのは瓜田だが、ボクサーとしての実績は明らかに小川が上。しかし、ふたりの関係性はずっと変わらない。小川がタイトルマッチに挑戦するときでさえ、連敗中の瓜田はあくまでもボクシングの先輩として小川にアドバイスする。小川も、素直に聞く。その姿は、友情のひと言で片づけられるものではない。どっちもすごい。人間と人間との関係性は、互いの「維持しようとする意志」が支えているのだという真実が伝わってくる。そうした有り様も、この映画のかけがえのない美徳だ。

松山は「僕も好きなんですよね、ああいう関係性」と微笑む。
「ただ、普段生活しているなかで、人と人との関係性の維持ということは、全然考えたこともなかった。意識していないかもしれないけど、とても大人だし、大事なことをふたりはしていたんだなと思いますね。監督、そこは考えていたことなんですか?」

吉田監督が言う。

「瓜田がみんなから好かれているのは、人間としての部分ですよね。小川はどちらかといえば、ボクサーとしての自分が前面に出ている。ただ、瓜田には人間的な部分で接する。そして、あるとき瓜田は、小川にボクサーとしての本音を吐露する……感情的になって、初めてボクサーとしての部分が表出する。そういう関係性なのかな」

吉田恵輔
(よしだ・けいすけ)1975年生まれ、埼玉県出身。主な監督作に、『銀の匙 Silver Spoon』(2014年)、『ヒメアノ~ル』(2016年)、『愛しのアイリーン』(2018年)など。公開待機作に、古田新太と松坂桃李が共演する『空白』がある。

小川は、一瞬たりとも、瓜田に対して上から目線の態度を見せない。尊い。
東出は、慎重に言葉を重ねる。

「ボクサーには多いのかもしれませんね。白黒はっきりした世界で、挫折する人も多いわけですが、僕が出逢ったボクサーの方々は、人の痛みがわかる優しい人ばかりでした。表面的にブイブイ言いながらもね。
活躍なさっている方も、なかなか活躍できない人が相当自分を追い込んでボクシングしていることがわかっているから、『あいつ、弱い』とバカにするようなことはないと思います。小川も自分の才能を一回置いておいて、瓜田のことを心から尊敬していると思います」

瓜田と小川が、スマホの小さな画面をふたりでのぞき込む場面がある。その距離感がいい。まさに上下関係が抹消されている。

映画『BLUE/ブルー』より

監督の顔がほころぶ。

「ボクシングって、ちょっと追求すると、ボーイズラブに近いものになっていくかも(微笑)。ふたりだけにしかわからない世界があるというか。ちょっといちゃついてるようにも映る。
瓜田と小川は、バンデージの巻き方を教え、教わるところから始まっているふたりだから、BL感もある(微笑)。ひょっとすると、俺はそういうものが見たかったのかもしれない……」

松山ケンイチと東出昌大は『聖の青春』でも共演。ライバル棋士同士に扮している。

「あれももしかしたら……」

松山は想いを巡らせる。
『聖の青春』のふたりにも、特別な結びつきが感じられた。

吉田監督が言葉を重ねる。

「何かに向き合い過ぎると、理解を超えた関係性になるのかもしれない」

『BLUE/ブルー』というタイトルの解釈


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相田冬二

(あいだ・とうじ)ライター、ノベライザー、映画批評家。2020年4月30日、Zoomトークイベント『相田冬二、映画×俳優を語る。』をスタート。国内の稀有な演じ手を毎回ひとりずつ取り上げ、縦横無尽に語っている。ジャズ的な即興による言葉のセッションは6時間以上に及ぶことも。2020年10月、著作『舞台上..

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