根本宗子が吉田豪に聞く「“演劇の流行ってなさ”をどうにかしたいんです」<岸田賞ノミネート記念対談>

2021.3.9


間違った演劇で、アイドルがボロボロになるのがつらかった

──根本さんは演劇に興味がない人を引きずり込もうとしますよね。

それは身近に(中村)勘三郎さんがいた(勘三郎夫人が根本母の幼なじみ)っていうのが大きくて、歌舞伎を観ない人にどう見せるかひたすら考えてる姿を見てたので。椎名林檎さんが曲を書くとか、野田秀樹さんみたいな勘三郎さんをよく知る方が演出するとか、宮藤官九郎さんが新作歌舞伎書くとか積極的にやってたから、それで歌舞伎っておもしろいんだな、小難しく考えなくても観られるんだなと思った人がたくさんいるだろうし、その姿を見て育ってきたので、演劇をやるからには間口を広げることをやめちゃいけないっていう気持ちが私の中にたぶんあって。

だから演劇を始めたての何者でもないときから、演劇をやるからにはそういうことをやれたらいいなって気持ちや使命感は無意識にあったんですよね。追いつけるわけなどないけど、少しでもやれたらと。口にはまったくしてこなかったけど。

積極的にアイドルの人とかと芝居を作ってるのは、文化としてめちゃくちゃアイドルがずっとあるわけじゃないですか、自分もたまたまその文化が好きっていうのもありますけど、そういう人たちを巻き込むことでかけ算になっていけばいいなと思って。だけど、演劇の世界には「元乃木坂の子でしょ?」みたいな感じの冷ややかな見方をする人もいるじゃないですか。で、5年ぐらい前にそう言ってたヤツがしれっとそういう人をキャスティングしてるのが一番ムカつく!

──ダハハハハ! 根に持ってる(笑)。

「AKBって何?」とか言ってたのに。変な話、普通の小劇場の人よりもアイドルの子のほうがめちゃくちゃタイトなスケジュールのなかで仕事をこなしてきてるから覚えるスピードなんてずば抜けてるし、やれることのキャパも広いし。芝居の技術はないかもしれないけど、そんなの何回もやってればつくので。演劇は演劇の人だけみたいなのは、もういいんじゃないかなって思っちゃいますね。もちろん本人が演劇やりたいなら、って話ですけどね。

──シンプルに表現力はあるはずですからね。

だし、めちゃくちゃ広いところに立ってるじゃないですか。舞台の空間をひとりで埋められるものは持ってるので、そういう観点で一緒にやってるのになとは思うし、一緒にやったアイドルの子がそういうことを普段言われながら舞台をやるのは嫌だなと思ってるはずなんですよ。自分だったら悔しいだろうし。

それが一緒に組むことで、そうじゃないところを持って帰ってくれたらいいなって。単純にストイックだしまじめだし負けず嫌いな人が多いので現場の空気も上がるというか。あとは間違った演劇で初舞台を踏み、ボロボロになっているアイドルを見るのがつら過ぎて(笑)。自分の大好きな存在(アイドル)に、大好きなもの(演劇)が超嫌われていくのを見るのがつらかった。

──どうしてもそこにも偏見があったわけですね。

そうですね、世間の人って上澄みしか見てないから、そこでどうイメージを変えるか、みたいな。自分は「女子のリアルを切り取る」みたいなことを言われつづけ、別に女子のリアルだけを切り取ってるわけじゃないけど、そこが一番わかりやすいし、面倒くさい女子のリアルを切り取ってる本人はよほど面倒くさいヤツなんだろうみたいな、そういうキャラクターでテレビのバラエティからのオファーとか来るんですよ。

でも、さすがにそれをやっちゃうとホントそういう人になっちゃうから、キャラが強くつけられてしまうメディアにはあまり出ないようにしてきて。自分の話ができる番組には出るけど、イメージがつけられちゃうものは出ないようにしようと思ってて。

──本人はそんなに面倒くさい側の人ではないですよね。

ホントに面倒くさかったらこんなに公演打てないですよ(笑)。みんなが思ってるより全然ドライですね、仕方ないことは仕方ないから次に進めていくみたいなタイプなので。

──そっち系の人だったら現場に来られないとかになりますからね。

年5本できないと思う(笑)。外部の仕事だとかなり気を張ってるんで崩れず最後までやるんですけど、劇団の公演だと過去1回だけ、昼夜公演の間も家に帰らないとできないみたいな、完璧にセリフが言えてるのかも不安で、言えてるんですけど「……大丈夫かな、これ?」みたいな感じで冷や汗が止まらないみたいな公演はありました。

毎回前回の自分を超えられるか不安で「芝居のクオリティをしっかり維持したい」と、自分のメンタルが崩れてしまい。その公演は本当に気心が知れているメンツだったから、すごく助けてもらったし、今でも心から感謝しています。

そういうのがあって、若干仕事セーブしないとマズいのかも、今は20代だからできちゃうけど、30代になったら体持たないぞ、できないかもしれないぞって思いましたね。

それで、ハイペースに新作を生みつづけるのは29歳まで。30歳になってからは一作に時間をかけてみようかなと思い始めて、まわりと相談してきました。


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  • 『もっとも大いなる愛へ』

    <岸田國士戯曲賞 最終候補作品選出を記念して再配信> 『もっとも大いなる愛へ』

    ■出演:伊藤万理華、藤松祥子、小日向星一、安川まり、riko、(事前収録の映像出演)根本宗子/大森靖子
    ■価格:3500円
    ■配信期間:3月13日(土)23時59分(購入は3月13日22時)まで
    ■チケット:販売ページ
    ※2020年11月4日19時公演のアーカイブ映像

  • 月刊「根本宗子」 演劇じゃない修行 第一回戦 ~コメント実況に劇で挑む~

    根本宗子が演劇の修行をする新企画『「演劇じゃない修行 第一回戦」~コメント実況に劇で挑む~』

    ■出演:根本宗子、長井短、畠山健(コメント読み)
    ■日時:3月14日(日)19時〜無観客生配信
    ■価格:2800円
    ■チケット:販売ページ


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吉田 豪

(よしだ・ごう)1970年、東京都生まれ。プロインタビュアー/プロ書評家/コラムニスト。 編集プロダクションを経て『紙のプロレス』編集部に参加。そこでのインタビュー記事などが評判となり多方面で執筆を開始する。現在、雑誌・新聞に多数の連載を抱えるほかテレビ、ラジオ、ネットなどさまざまなメディアに活躍の..

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