根本宗子が2週間で作った“リモート芝居”への思い「演劇が忘れられないように」

2020.5.8
根本宗子インタビュー

文=山本大樹 編集=田島太陽


緊急事態宣言が5月いっぱいまで延長されることが発表された。あらゆる業界が甚大な影響を受けるなか、演劇シーンではオンラインで観劇できる取り組みが徐々に始まっている。

その中でもいち早く発表されたのが、劇作家の根本宗子によるオンライン芝居『超、リモートねもしゅー「あの子と旅行行きたくない。」』だ。自身も構想していた作品の延期・中止を余儀なくされるなど苦境に立たされている状況であり、依然として劇場再開のめどは立たず、演劇人としての苦悩や葛藤は想像に難くない。しかし、彼女の視線は「劇場に再び集まれる日」をしっかりと見据えていた。

根本宗子
(ねもと・しゅうこ)1989年生まれ。東京都出身。19歳で劇団・月刊「根本宗子」を旗揚げ。以降、劇団公演すべての企画、作品の脚本演出を手がけ、近年では外部のプロデュース公演の脚本、演出も手がけている。2015年に初めて岸田國士戯曲賞最終候補作品にも選出されて以来三度にわたり選出されている。2020年3月より事務所を独立してまたフリーで自由気ままに活動中。
noteで『付録「根本宗子」』を更新中、公式LINEもスタート。


2週間足らずで完成させた「リモート芝居」

超、リモートねもしゅー「あの子と旅行行きたくない。」予告

「やっぱり、リモートでお芝居をやってよかった、って思うことのほうが多くて。今、こういう状況で『演劇が観たい』って感じてる人も多いと思うんです。演劇じゃないけど演劇に近いものを観て、そういう気持ちをちょっとでも埋めてもらえたらいいな、と思って」

4月の最終日、TBSラジオの『伊集院光とらじおと』への電話出演を終えたばかりの劇作家・根本宗子にオンラインでインタビュー取材を行った。新型コロナウイルスの影響で演劇の公演が軒並み延期・中止となっている現在、根本は演劇界で先んじて「演劇ができない今のリモート期間に、演劇に近い作品を作れないか」と、リモート芝居のプロジェクト『超・リモートねもしゅー』を立ち上げた。そして、同じく公演が延期や中止になってしまった俳優たちとオンライン上で稽古を重ね、企画の構想からわずか2週間足らずで『あの子と旅行行きたくない。』の配信が実現した。

『超・リモートねもしゅー』を始めたきっかけについては、彼女が開設しているnoteでも語られている。

この状況での「演劇」というか「お家で観れる演劇のようなもの。」はなんだろうと考えた時に(中略)バラバラの場所にいることを生かしたセリフに書き換えて稽古をしたらいける、となりました。

「超、リモートねもしゅー」について|付録「根本宗子」|note

そこで今回の取材では、根本自身が演劇界を取り巻く現在の状況をどう感じているのかを知りたいと思っていた。

演劇ができなくても、自身の表現を届けるために

根本宗子

「もともと制限があるなかでおもしろいものを考えるのが好きなんです」と根本は言う。しかし、演劇という文化にとって「劇場に人を集めることができない」という制限はあまりに重い。それでも、自粛を余儀なくされている人々になんとか自身の表現を届けようとする劇作家としての姿勢に胸を打たれた。

「普段の舞台でも役者さんへの演出とか、舞台や美術に制限があったりすることもあるじゃないですか。そういう問題をネガティブに捉えずにどうクリアしていくか、次につながる要素にできないか、って前向きに考えるタイプなのかもしれないです。今回、演劇ができない状況になって、改めてそれを再確認したというか。そう考えていかないと暗くなっちゃうから、そう考えてるっていうのもあるんですけど」

4月17日から動画販売サイトFilmuyでの配信が始まった『あの子と旅行行きたくない。』は、根本が2014年に発表した戯曲をリモート芝居用にリクリエイションしたものだ。会社の同僚4人が、社員旅行の行き先をめぐって言い争いを繰り広げる、コミカルな会話劇。一向に話がまとまらず、いつまでも旅行に行けない登場人物たちの間に流れるモヤモヤした空気感は、出かけたいのに出かけることができない今の私たちの心情にもリンクしている。

「私自身すごく旅行が好きなので、過去に行った旅行の写真とかを今見返したりしてるんです。今は旅行に行けないけど行きたいな、って思う時期に、たまたま『あの子と旅行行きたくない。』っていうちょうどいい作品があったので、これをやろうと思いました」

『あの子と旅行行きたくない。』の初演は、2013年から2015年にかけて根本が取り組んでいた“Bar公演”だった。当時Bar公演は、演劇を観る習慣のない人にも届きやすい1000円〜1500円のチケット代で、本公演を観る前の「お試し」のような企画だったという。

「今の状況って、当時と少し似てるなと思って。今回の『超、リモートねもしゅー』も無料じゃなくてチケット代の1000円はかかっちゃうんですけど、普段の演劇に比べたら手を出しやすい価格というか。実際に、うちの劇団の公演に来たことがなかった人も観てくれたみたいで、知ってもらうきっかけにもなったかなと思います。リモート芝居はやっぱり演劇とは違うものですけど、これをきっかけに『生の演劇が観たい』って思ってくれた人が多いのかな、って」

舞台を観られなくても、“演劇”が忘れられないように

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山本大樹

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山本大樹

(やまもと・だいき)編集・ライター。1991年生まれ、埼玉県出身。明治大学大学院にて人文学修士(映像批評)。編集プロダクション勤務を経て、2019年に独立。現在『クイック・ジャパン』外部編集・ライターのほか、『BRUTUS』、『オードリーとオールナイトニッポン』シリーズ、『三四郎のオールナイトニッポ..

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