音フェチにはたまらない音楽映画
――『とんかつDJアゲ太郎』は、音楽をorigami PRODUCTIONSと黒光雄輝さんが担当していることもあり、音楽映画としても最高だと思いました。
北村 映画では、クラブミュージックではない音楽もかかっています。でも、だからこそ幅広い世代に刺さると思うんです。この映画を観て、僕よりちょっと若い世代の人が、昔のヒップホップとかダンスミュージックについて興味を持ってくれたらうれしいですね。
――この映画を観たら、使われている曲を聴きたくなると思います。「クラブが怖い」と思っている人のイメージも変わりそうですよね。
北村 この映画を通して、音楽業界を活気づけたいです。実際に今、コロナの影響を受けてクラブやDJの方たちは大変な状況がつづいていると思うので。DJをする場面では、そういうシーンに関わる人たちがガッカリしない映画を作ろうと意識していました。
――めっちゃかっこよかったです。『とんかつDJアゲ太郎』って、一つひとつの効果音も気持ちいいですよね。「とんかつを揚げる音って、映画館で聴くとこんなに心地いいんだ!」と驚きでした。
北村 ほんと、そうですね。
――北村さん的に、「ここの音がやばい!」というシーンはありますか。
北村 揚げている音もいいんですけど、キャベツを切っているときに包丁がまな板に落ちていく音も好きでした。映画館ってスクリーンが大きいのもそうですけど、自宅では聴けない音をめちゃくちゃ楽しめる空間なので、“音フェチ”にはたまらない映画だと思います。
人間、北村匠海
――『あやしい彼女』(2016年)のバンドマン、『仰げば尊し』(2016年)の吹奏楽部員につづいてのDJ役ということで、“音楽関係の映像作品といえば北村匠海”という存在になりつつありますね。
北村 音楽とお芝居を背負えることが、とてもうれしいです。自分ががんばってきたふたつのことが、ひとつになる感覚があるので。
――以前のインタビューでは「DISH//のTAKUMIと役者の北村匠海は別物だ」と、お話をされていましたよね。最近もそのような感覚はありますか。
北村 いや、変わりましたね。ガムシャラな2019年と自粛期間によって生まれた2カ月の休みを経て、ひとつになりました。「人間、北村匠海」として。今まではまったく別の人格が2本、同時に走っている感じだったんですよね。正直それに追いつけない自分もいたんですけど、自粛期間に入るまでの僕は追いつけないそぶりも見せてはいけないと思っていて。
――“追いつけない”というのは、ふたつのものを抱え込む自分にですか。
北村 それもありますし、スケジュールが本当に過密だったので。日中は映画を撮り、0時入りでDISH//のリハーサルを始めて、朝5時に終わるみたいな。そうなったとき、アーティストとしての自分と俳優の自分を切り分けているのが苦しく感じたんです。
――なるほど。
北村 最近になって、考えがクリアになり「もう切り替えなくていいか」って思えたんですよね。もっと楽でいいんじゃないかなって。DISH//の活動も役者も、言葉や感情、想いに寄り添うことが大事。お芝居で「ありがとう」って言うのと、ライブ中にMCで「ありがとう」って言うのと、「僕の言葉に変わりはない」って感覚が生まれたんです。根本が自分の中で変わらないのなら、切り替える必要はまったくないよなって。音楽も芝居も楽しいからやってるし、それを届けられる位置にいる喜びをもっと感じられるようになりました。“ひとつ”って感じです。
――役者とDISH//の“北村匠海”を束ねる軸はなんですか。
北村 “人間”ですね。僕が言葉を届けられる人たちには、人生が豊かになる選択をしてほしいし、自分自身もそうありたい。そのために、僕自身が大事にしたい人や愛に敏感に生きて、ひとりの人間として想いを注いでいきたいんです。22歳の今、音楽やまわりの人、役者であることや出会う作品に愛を注げている。そういう感覚を味わえることが、すごく幸せですね。僕はみんなと変わらない、ただの人間。表現することが好きで、それを受け取ってくれる人がいるってだけなんです。
――北村さんって、好きなものをすごく堂々と「好き」って発言されますよね。
北村 だって、好きだから(笑)。
――今って、自分の好きなことを「好き」と発信するのが苦手な人が多いと思います。
北村 情報が得やすい世の中だからこそ、知識量に敏感になっている傾向はありますよね。本来は「好き」を語る上で、知識が多いとか少ないとか関係ないのに。もっと単純に「好き」という気持ちを受け止めて、感情で動いていいと思います。「好き」に理由なんていらないし、堂々としていていいんですよ。どんな対象であろうと「好きだ」って思えたら、いろいろ調べて結果的に詳しくなっていくでしょうし。僕の中では「好き」先行ですよ、すべてにおいて。
北村匠海
(きたむら・たくみ)1997年11月3日生まれ、東京都出身。2011年に結成された4人組ダンスロックバンド「DISH//」で、メインボーカルとギターを担当。2013年にメジャーデビュー。俳優として、映画『君の膵臓をたべたい』(2017年)で第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。主な出演作にテレビドラマ『隣の家族は青く見える』(2018年)、『おカネの切れ目が恋のはじまり』(2020年)、映画『君は月夜に光り輝く』(2019年)、『サヨナラまでの30分』(2020年)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020年)など。公開待機作に『さくら』(2020年11月13日公開)、『アンダードッグ』(2020年11月27日公開)などがある。趣味はカメラ、古着屋巡り、レコード集め。
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映画『とんかつDJアゲ太郎』
2020年10月30日(金)全国ロードショー
監督・脚本:二宮健
脚本協力:喜安浩平
原作:イーピャオ、小山ゆうじろう『とんかつDJアゲ太郎』(集英社少年ジャンプ+)
出演:北村匠海、山本舞香、伊藤健太郎、加藤諒、浅香航大、栗原類、前原滉、池間夏海、片岡礼子、ブラザートム、伊勢谷友介
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2020イーピャオ・小山ゆうじろう/集英社・映画「とんかつDJアゲ太郎」製作委員会関連リンク
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