「私、このまま生きていってもいいんやな」つづ井さんが語った自虐の向き合い方と、最近の「ない話」

2020.10.7

文=いつか床子 編集=森田真規


つづ井さんや友人のハッピーな日常を綴った『裸一貫! つづ井さん』。独身、女性、腐女子、オタク——これまでのつづ井さんを取り巻いてきた属性を脱ぎ捨て、タイトルどおり「裸一貫」で再出発したエッセイマンガは2巻に突入。

「自虐をしない」という決意を書き綴ったnoteにも触れながら、絵日記を描きつづけるなかで自分の中で起こった変化について伺っていきます。

つづ井さんの推しさんや、推しさんの「ない話」についてもお答えいただいた『QJWeb』独占のインタビューをお届けします。

「これでいいんだ!」と気づけたお風呂上がりのスタンディングオベーション

――2巻の発売、おめでとうございます! 「魂がオタク」な女子たちのエッセイマンガ『裸一貫! つづ井さん』を描きつづけてきて、自分の中での変化、新しく気づいたことなどがあれば教えていただけますか。

つづ井 2巻に入ってからのほうが、日常を伸び伸び描けるようになったと思います。連載が始まったばかりのころは「これはおもしろいのか? ただの日常過ぎないか?」「絵日記にするまでもないんじゃないかな?」とものすごく不安で、いつもおそるおそる描いていた部分があるので。

『裸一貫! つづ井さん2』つづ井/文藝春秋/2020年6月

――それは意外です。『腐女子のつづ井さん』も、同じくつづ井さんの日常を綴ったものですよね。

つづ井 どちらもオタクの日常エッセイではあるんですが、前シリーズ『腐女子のつづ井さん』を描いていたときは、「腐女子」か「オタク」のカテゴリーに入るネタを描こうと意識していました。担当編集さんとネタ出しのご相談をしたときにも「これは単に私の楽しかった話で、オタクは関係ないですよね~」と、結局寝かせることになったネタがいくつかあります。タイトルに「腐女子の」とあるのに、あんまり関係ない話をすると読んでくださった人の期待外れになるかな、と勝手に思っていたんですよ。

だから『裸一貫』の連載で、Mちゃんと橘と私が、お風呂に入ったことをお互いスタンディングオベーションで讃え合う話(1巻「ぬるま湯」)のネタを出したときも、「さすがに些細過ぎない?」って不安だったんです。担当編集さんにも「このエピソード、微妙かもしれません」と弱気な気持ちで見せたら、「おもしろいですよ! これからはこういうのどんどん出していきましょう」と言っていただけて。実際サイトにアップしたら、それまでの連載の中でも特に反響が大きくて、いろんな人に見ていただけたんです。それでやっと「こういうのを描いてもいいんだ!」とわかりました。

『裸一貫! つづ井さん1』収録、「ぬるま湯」より

――スタンディングオベーションの話、すごくおもしろかったです。ちなみに、『裸一貫! つづ井さん』の2巻に収録されているエピソードの中で印象深いものはありますか?

つづ井 友人の橘が描き下ろしマンガを描いてくれたことですね。本当に思いつきで「描いてみる?」と聞いたら、「描いてみる!」と言ってくれて。私の友人はいったいどこまで快諾してくれるんだろうかと……。しかも、すごくうまい。

『裸一貫! つづ井さん2』収録、「橘の誕生日 by橘」より

あと、オカザキさんが私の推しを「出っ歯」と言ったのを、私が「ディーヴァ」と聞き間違えたエピソードもお気に入りです。絵日記を描くときはいつもみんなに確認を取っているんですけど、オカザキさんも「あの出っ歯とディーヴァのやつ、私も大好きで仕事でしんどいときに思い出してる!」って言ってくれて。ものすごい地味な出来事なんですけど、オカザキさんと私の中で、つらいときに思い出すエピソードが同じなのがうれしくなっちゃいました。

『裸一貫! つづ井さん2』収録、「勘違い」より

自分がいかに自虐に頼ってきたのかを痛感

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