自分がいかに自虐に頼ってきたのかを痛感
――『裸一貫! つづ井さん』1巻の刊行にあたってつづ井さんが書いたnoteも、当時大きな話題になりました。これからは絵日記で自虐をしないという、力強い決意表明でしたね。
私が「裸一貫!つづ井さん」の連載を始めるときに、決めたことがあります。それは「自虐をしない」ということです。
note「『裸一貫!つづ井さん』についてちょっと真面目に話させてくんちぇ~」より
私のエッセイを読んでくださっている方には伝わっていることと思いますが、私は20代の未婚の女性で、現在パートナーはおらず、恋愛経験が極端に少ないです。そんな私が自分の日常生活を絵日記にし、沢山の方の目に触れるインターネットに放つ上で、「未婚で」「パートナーがおらず」「恋愛経験が極端に少ない」「女性」であることに関して自虐をするのは、もうやめようか令和、と思ったという話をします。
つづ井 新しいシリーズ『裸一貫! つづ井さん』を描かせていただく上で、そこはすごく意識しました。私はどうしても、独身とかパートナーがいないとか、年齢的にまだ若い女性であるとか、そういう括りで生きています。私自身が自分をそう思っていなくても、どうしても外から見るとそうなので。そんな私が自虐しちゃうと、誰かを侮辱していることにもなっているんだなと気づいたんです。
たとえば私が自分のことを「ババア」と言ったら、私より年上の人はどうなっちゃうんだ、とか。私が自虐で笑いを取ることで、絵日記を見た誰かの呪いや負担になってしまうかもしれない。
最近は「誰も傷つけない笑い」という言葉をよく耳にするようになりましたが、私も絵日記をインターネットにアップして、たくさんの人に読んでいただく以上、もちろん誰にも傷ついてほしくありません。だから「この絵日記を見て誰かがつらい気持ちになるかもしれない」とか、ちょっとした言葉選びとか、絵日記にする内容も、今まで以上に慎重になりました。
――自虐もある意味、自分にかける呪いですよね。noteの中で、社会人になって先回りで自虐するようになったら、いつの間にか円形脱毛症になったエピソードが語られています。
つづ井 本当にそうなんです。でも『腐女子のつづ井さん』を描いていたころは自分が自虐をしている意識すらなかったんですよ。なので『裸一貫』を描くにあたって、無意識に自虐をオチにしていたことに向き合うところから始めました。
――ですが当時には当時の時代の空気があったし、つづ井さんの思いを綴ったものです。
つづ井 うーん、でもやっぱり、意識できてなかったこと自体が、自分としてはよくなかったなと思っています。絵日記のつづ井さんとしても、生身の私という人間としても。そういう空気や価値観を再生産していたと思うんですよ。
だから『裸一貫』の連載再開の時点で自虐は気をつけようと思っていたんですけど、ネームが煮詰まるとすぐ自虐に逃げちゃって。「私やっぱり自虐に頼ってきたんだな!」と痛感しました。
『裸一貫』を連載開始するときの一番最初のごあいさつマンガにも、本当は今までどおりの自虐テイストを盛り込んでしまっていて。そこを担当編集さんがバシッと指摘してくださったおかげで、やっと自分のスタンスが決まった気がします。
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