映画にとって一番重要なこと
岩井 今年は行定監督にとって「なんて試練の年なんだろう」と思います。新作が2本も出るタイミングで、コロナとかち合ってしまった。我が事のように胸を痛めています。『チィファの手紙』に関しては中国本土で2018年に公開されているので、ここで初めてお披露目するものというわけではありません。この、“初めてかどうか”というのは非常に大きい。
そういう意味で「行定監督は本当に大変な状況にあるな」と思いつつ、でもこういう過酷な時期だからこそ作品が観客の記憶により残るのではないかと、祈るような気持ちです。先に公開された『劇場』も、この『窮鼠はチーズの夢を見る』も、確実に観客の胸に突き刺さる映画だと思います。これがこの作品たちの宿命なんだろうなと。何年経っても忘れられないものになると、この子(映画)たちの運命を信じてあげたい気持ちでいます。
行定 岩井さんからこのような言葉をいただけたことがすごくうれしくて、心の支えになります。今年はよい年になるはずだったんだけどな……っていう(苦笑)。でもコロナのせいにしたくないという思いも少しありますし、社会の仕組みも含めて、いろいろなものが露見する機会にもなりました。僕としては今まで以上に“作品を観客に届ける”という気持ちが強くなった。
環境がどうあれ、完成した作品は変わりません。ですが、届きにくい環境ではあります。『劇場』の宣伝のとき、「劇場に観に来てください」とは言いづらかったんです。映画館内は換気などをはじめ、感染防止策を徹底しています。ですが、ロビーは「密」になってしまう可能性がある。そもそも、ロビーに人が殺到するように映画を作っているので。では、「劇場まで足が向かない人たちのことをないがしろにしていいのか?」といったら、それは違いますよね。それぞれ家庭環境などが違ったりもします。たとえば、劇場で感染してしまい、それを家庭に持ち込んでしまうというのは深刻な問題です。
作り手である我々が、そこの人たちのことまでを考えられるかどうか葛藤した上で、『劇場』は劇場公開と配信を同時にするという試みに出ました。でも岩井さんも『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016年)のときに、「バージョンは違うけど、劇場公開と配信を同時にやるんだよね」って言っていました。あのひと言が頭に残っていました。
業界の中でルールがいろいろありますが、この環境下なのであれば配信もありなんじゃないかと。作り手としては、“映画がどこの誰に届くのか?”ということが一番重要です。だから『劇場』も積極的にそのための動きをしたほうが、この映画そのものの力も試されることになるなと。そういう意味で、やはり「届ける」ということが重要です。映画は届かなければ意味がありません。
岩井 そうだね。
行定 岩井さんも今年は3作品も公開されるんですよね。
岩井 『ラストレター』に『8日で死んだ怪獣の12日の物語 劇場版』、そして『チィファの手紙』。2020年のこのタイミングで、3作もあるっていう(笑)。
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