『夫のちんぽが入らない』こだま「40万円騙し取られた体験」を新刊で綴る

2020.9.2

文=続木順平


デビュー作『夫のちんぽが入らない』がNetflixにてドラマ化されるなど、日本だけでなく海外からも評価される、エッセイスト・こだま。『クイック・ジャパン』誌上での連載をまとめたエッセイ集第2弾『いまだ、おしまいの地』が9月2日に発売される。

暮らしや心境の変化、本書のタイトルと表紙にこだまが込めた思いなどを掘り下げるインタビューを『クイック・ジャパン』vol.151(2020年8月発売)から転載する。


ご飯ちゃんと食べてますか?

2018年に刊行したエッセイ集『ここは、おしまいの地』から2年。ついに、待望の新刊『いまだ、おしまいの地』が発売の運びとなった! 前作は「講談社エッセイ賞」を受賞。デビュー作『夫のちんぽが入らない』は昨年Netflixにてドラマ化するなど、作品は日本のみならず世界へと羽ばたいていった。にもかかわらず! 本人はいまだおしまいの地で暮らし、家族の誰にも知られることなく作家活動を続けている。そんな変わらぬ日々の8月7日、校了を目前に迎えたこだま氏に今作の思いを探るべく、担当編集がメールインタビューを行った。

『いまだ、おしまいの地』(太田出版)

――お疲れさまです。

こだま ありがとうございます。毎回、締め切りを過ぎてから山のように加筆修正を頼んですみませんでした。

――校了日も近づきいよいよ大詰めです。このひと月はほぼ毎日連絡しているのでこうして伺うのも変ですが、今の心境はいかがでしょう?

こだま 単行本は2年振りなので、この緊張感が懐かしいです。

――こだまさん、ご飯ちゃんと食べてますか?

こだま 実は最近、夫婦で食中毒になりまして。まだ、お粥が主食です。大事なときに限ってなにかが起きる。

――そうですか。このQJ(『クイック・ジャパン』)が出てから1週間後にこだまさんの新刊が発売です。ドキドキしますね。

こだま はい、昨年から心身が不調だったので、無事に発売日を迎えられて本当にうれしい。

タイトル、表紙に込めた思い

――では今作についてお話を伺っていきます。今回のタイトルは『いまだ、おしまいの地』。名前に込められた思いを聞かせてください。

こだま 「田舎最高!」とは思わない。でも、よそ者の視点で淡々と書き、意外と溶け込んできた。その一歩引いた関係性を込めました。

――カバーには猫がいますね。前作は殺風景な荒野で完全におしまいの様相を呈していましたが、今回は温かみを感じます。どのような心境の変化があったのでしょう。

こだま 習い事をはじめて地域の老人の輪に交ざったり、詐欺師の実家に知人らと乗り込んだり、エッセイ賞を受賞して周囲のありがたみを感じたり。人との関わりが増えました。そんな体温を感じるカバーにしようと、山口県の自然豊かな祝島で写真を撮っている知人の堀田さんの作品を使わせてもらいました。

『いまだ、おしまいの地』表紙写真

――そして今作の帯は酒井若菜さん、藤崎彩織さんにいただきました。

こだま おふたりには書き手としてはもちろん、繊細さと強さを併せ持つ生き方に憧れを抱いていました。身に余るお言葉をいただき今でも信じられないです。


おかしいなと思っていたら鬱病でした

――内容について伺います。今作はQJで連載した20篇のエッセイ、2018年から今まで、およそ3年間のお話が収録されています。振り返ると本当にいろいろあったかと思いますが、こだまさんにとってはこの3年間で印象に残っていることはありますか。

こだま SNS上の面識のない人に40数万円を振り込んじゃったことですね。両親は他界、手術費が必要、家賃も払えないという典型的な嘘を信じ、周囲から「アホか」と呆れられました。そのお金を取り返しに行った日のことが忘れられません。

――こだまさんが精神的に参ってしまう時期もありました。

こだま 寝込んでばかりでおかしいなと思っていたら鬱病でした。持病が引き金となり精神にも支障をきたしたようです。書くことが好きなのになぜか書けない。その答えがわかって、鬱病なのに「ああ、よかった」と安堵しちゃいました。

『いまだ、おしまいの地』より

――後半になると新型コロナウイルスのお話も登場してきます。

こだま 私の地域は全国的にも早い段階で感染者が出ていたので、東京との温度差を強く感じました。でも、私も「売り上げが落ちている近所の店を利用するようにしよう」と当時書いてるんですよね。そんな助け合いじゃ乗り切れないレベルだとわかってなかった。

――もう校了だというところで、今号のQJにも入っている最新話「珍しい苗字の男の子」も書籍に入れよう!となりました。

こだま 続木さんの「これいいですね!」に励まされ、急遽ねじ込んでもらいました。書籍には男の子への気持ちを少し加筆したので改めて読んでいただけるとうれしいです。

――こだまさんのエッセイは、「自分はこのままでいいんだ」と読むたびに思える心地よさ、救われる気持ちになります。では最後に、こだまさんからメッセージをお願いいたします!

こだま なにをしても自信を持てない、人とうまく関われない、失敗ばかりする。そんな人間でも少しだけ生きるのが楽になったよ、と同じ思いをしている人に伝えたいです。

こだま 
主婦。17年に『夫のちんぽが入らない』でデビュー。累計23万部を突破する大ヒットとなった。18年、『ここは、おしまいの地』で「講談社エッセイ賞」を受賞。19年には『夫の~』がNetflixにてドラマ化(タナダユキ監督)され全世界に配信。20年9月2日、講談社エッセイ賞受賞後初となる作品『いまだ、おしまいの地』を、太田出版より発売。


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