岡崎体育×岸田繁「結局、裏切らないのはヤンキー」京都出身のふたりが語る“地元愛”

2020.1.18

結局裏切らないのは“そういう奴ら”

岸田 俺も同じようなもんで、地元の友達が上御霊神社のお祭りのために1年間命を懸けとるわけですよ。京都って祇園祭とか葵祭とか雅やかなお祭りが多い中で、かなり荒っぽいお神輿のお祭りでね。お神輿のために体鍛えたりとかしよるわけですよ。基本的に、そういうやつらは若い頃から変わってへん。

まゆの剃り方とかも変わってへん奴らやけど、大人になったら大人っぽい話はするわけやんか。一応、子育ての話とか親の話とか地域の話とか。体育君が言わはるように、ほんまに地元を大切にする地域密着の感覚というか。行政とかの一般的に言うのではなくて、ほんまに地べたのレベルでの会話ね。

例えば、俺は東京好きでデビューしてから長いこと住んだ街もあるんですけど、ほんまの地元の人が誰もいなかったりするのよ。この街は何でフワフワしているんやろと住んでいる時に思ってて、後から考えたら昔からの地元の人がいないから。みんな、他の街から出てきただけやからね。

今、体育君が言うてくれて合点がいったんですけど、別に京都とか宇治とかに限ったことではなくて、それが富山であろうが佐賀であろうが、そういう地元の感覚ってあると思うんですよ。地元でヤンキーとか小さい区画で権力持ってる人や強い人やエネルギー量の多い人が、そのコミュニティをまとめてる感覚って、日本中に無数にあるんでしょうね。その感覚から出てきたのが体育君の音楽やとおもうし、そういう街の人たちのための癒やしの音楽なのかも知れへんな。

体育 そうですね。メジャーデビューしてから連絡が増えて。なんか恐縮がないんですよね。「お前やるやんけ!」「かっこええやん!」とか。

岸田 すごいやろ、サインとか。

体育 「ツレがファンやからサインくれ!」とか。「カスタネットでメンバーに入れてくれや!」とか。なんやねんカスタネットってとか思ったり。

岸田 もう去年「ミスチルに会わせろ!」とか何人に言われたかわからへん。

岡崎 見境なくてムカつくこともありますけど、やっぱり僕のことを大事に考えてくれているんですよ。中学の頃のヤンキーの感覚のままいてくれてるから、僕も安心するとこがあるし。そういう友達が地元にいるっていうのも、地元から発信するひとつのパワーになってるのかなというのは感じていますね。

岸田 それに早よ気付けてよかったね。幸せなことやと思う。俺はデビューしてだいぶ経ってから、結局裏切らへんのはそういう奴らやとわかったから。たまたま、こないだも御霊さんのお祭りの後でラーメン屋に行ったら、何人か同級生が食うとったのよ。ヤンキーとオタクが混じってるみたいな集団なんやけど。

金持ちとか医者になってる奴らもいて、でもお金持ってない奴もいて。でも俺らのアナログを買うてくれてたりするのよ。それで「今度のはCDだけやなくて、アナログは出さへんのか!?」と言うてきたりして。こいつらええ奴らやなと思って。Facebookの申請来てたのに無視してごめんなと思ったりして(笑)。

体育 ちょうど今日、宇治でまぁまぁ大きい県祭りというのがあって行こうかなと思っていて。地元の奴らもみんな遊びに行くんですよ。やっぱり岸田さんが言うとおり、地元のみんなで集まって話す機会があるのは楽しいですよ。

岸田 地元の祭りはほんまに大事やな。そら初詣や大文字とかも大事なんですけど、俺は御霊さんのお祭りが一番大事で。絶対毎年欠かさないですね、それだけは。

体育 わかります。

岸田 また時間ある時に京都で遊びましょうや。

体育 年末の京都での年越しライブ以来ですもんね。お願いします!


岡崎体育(おかざき・たいいく)
京都府宇治市出身の男性ソロプロジェクト。2016年5月発売のアルバム『BASIN TECHNO』でメジャーデビュー。同アルバム収録の「MUSIC VIDEO」は、『第20回文化庁メディア芸術祭』エンターテインメント部門新人賞を受賞。現在までにリリースしたオリジナルアルバム3枚はすべてオリコンTOP10を記録。CMやドラマ出演などマルチな活動を行いながら2019年6月9日(日)に、<さいたまスーパーアリーナ>でのワンマン公演を開催。SSA史上初となる、1人vs18000人のコンサートを大成功裡に収めた。

岸田繁(きしだ・しげる)
1976年4月27日、京都市出身。作曲家。立命館大学在学中にロックバンド「くるり」を結成し、1998年にメジャーデビュー。2016年からは京都精華大学ポピュラーカルチャー学部で特任准教授を務める。

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鈴木淳史

(すずき・あつし)1978年生まれ。兵庫県芦屋市在住。 雑誌ライター・インタビュアー。 ABCラジオ『よなよな・・・なにわ筋カルチャーBOYZ』(毎週木曜夜10時~深夜1時生放送)パーソナリティー兼構成担当。雑誌『Quick Japan』初掲載は、2004年3月発売号の笑い飯インタビュー記事。

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