つんくが明かす「日本一の量産ぶり」その裏側と信念。ロンドン同行、約2万字インタビュー&レポート(1)

2020.7.16

「記憶にない頃から聴いてた」ビートルズへの想い

――で、明日からはビートルズのカバーアルバムをレコーディングされるということですが。これもつんくさん自らが発案して、さらに仕事を増やしたと考えていいんですか?(笑)

つんく これはもうほんとに、最初はこそっとね、ライブするためだけにデモテープを作ろうって話だったんですけど。

――あ、そうなんですか?

つんく ファンクラブのみんなにだけ提供しようっていうぐらいの。みんな、(ビートルズの)曲を知らなかったんで。案外と。何年か前に、ファンクラブの子たちの前でビートルズのコピーライブやったんですけど。みんな、曲始まったら、けっこう観てるだけなんですよね。

――ああ、若い人たちは、けっこう(ビートルズを)聴いたことがないかも知れないですね

つんく そう。「こんな気持ちいい曲やのに、おいー」っていう(笑)。で、みんな僕がリリースした曲は覚えて来るから、「じゃあまずは聴いてもらおう」と思って、ファンクラブのみんなにテープで配ろうかとか言ってるうちに、「ロンドンでレコーディングする」とか「NHKの取材が入る」とか、どんどん話がでかくなってしまって、これはまともに作らないといけないなという(笑)。で、それなら雑誌の人にも取材に来てもらおうとかいう話にもなって。でも、それはそれでいいことかなって気もしてるんですけどね。

――僕、今回、つんくさんの過去のインタビューをいろいろ読んできたんですけど、いろんなところでビートルズの名前を挙げてますよね。

つんく キーワードとしては出て来ますね。

――もともと最初にビートルズを聴いたのは、いくつぐらいなんですか?

つんく たぶん記憶にない頃から聴いてたと思うんですけど。まあ本気で意識して聞き始めたのは、たぶん中学2年生ぐらいだと思うんです。でも、小学校5~6年生の時に、今までにもどこかで話したかも知れんですけど、大阪のローカル番組で『アニメ・ザ・ビートルズ』ってのがあって、それがむちゃくちゃ好きでずっと観てたんですよね。まあ、それ以来、ムラはあるんですけどずっと聴いてたかな。高校入ってからも聴いてたし。

――つんくさんがビートルズからの影響を語るのって、ある面ではすごく納得できるんですけど、一方で僕なんかは、ある意味ちょっと意外な気もするんですね。

つんく なるほど。それはやっぱり、最近の印象ということですかね。

――いや、というか、つんくさんの楽曲を聴いてると、歌謡曲の良質な部分からの影響を感じるんですよ。ビートルズよりも、そちらからの直接の影響の方が大きいんじゃないかというくらい。実は僕とつんくさんって同い年なんですが……。

つんく あ、そうなんですか。

――だから、僕が小さい頃ベストテン番組で聴いてたような、歌謡曲の一番良質な部分を…。

つんく ああ。でも、それは自然に入ってるでしょうね。もちろん日本の音楽も相当聴いてましたし。レコードはあまり買った覚えはないんですけど、TVの音楽番組は本当よく観てましたもんね。だから、中学の時とかでも、『ザ・ベストテン』って木曜日の9時からだったじゃないですか。その9時から10時の間に明日の宿題の話とかで電話して来るヤツがいたんですけど、大っ嫌いだったですね、俺。そういうヤツは。

――邪魔すんなと?

つんく そう、「聖なる時間やないか」と。しかも、TVの前にラジカセを置いて録音してるじゃないですか。電話の音がジリジリ鳴るんですよ(笑)。めちゃめちゃムカつくんですよね。

「自分を何かに所属させたくないんです」

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北尾修一

(きたお・しゅういち) 百万年書房の中の人。1968年、京都府生まれ。株式会社百万年書房代表取締役社長。百万年書房

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