LiSA、DISH//ら出演『THE FIRST TAKE』 一発撮りが生む「事件性」とは

2020.7.2

音楽番組やMVでは映せない姿

──高音質で録音されていることともつながっていると思いますが、映像全体に漂う緊張感はどのようにデザインされているのでしょうか。

清水 デザインで大切にしているのは余白です。ロゴデザインも文字や行間をこれでもかというくらい広く設計しています。映像やサムネイルの写真も、人物と白背景の間に美しい余白が生まれるような構図をDirector of Photographyの長山一樹さんと心がけて作っています。余白というのは、贅沢さの象徴であり、無駄なものを排除して一点に集中させること。TFTでは余白によって視聴者が音楽と向き合い、それぞれの解釈が生まれる「間」をデザインで作り出しています。

「THE FIRST TAKE」ロゴデザイン

スタッフ 撮影で決めているのは、カメラを定点から動かさず、写真のようなスタイリッシュなアングルから撮ること。その上で、女王蜂のアヴちゃんの背中越しの歌唱シーンや、TK from 凛として時雨さんのエフェクターだけのカットなど、普段は見ることのできないアングルから捉えた映像も贅沢に使っています。

「女王蜂 – 火炎 / THE FIRST TAKE」より

――確かに演奏前に交わされる視線や、些細な仕草などディティールが映像にふんだんに記録されているのが、ほかの音楽番組にはない点かもしれません。

清水 たとえばゴスペラーズさんの「ひとり」という曲では準備段階で、指を鳴らすシーン用のカメラを用意していたのですが、収録前、音叉を耳にあてて音程を取る姿を見て、撮影直前で「ここは音叉だ!」と狙いを変えたんです。もっと些細なところでいえば、北村匠海さんがヘッドホンのコードをいじる癖みたいなものは、音楽番組やMVでは映せない。でも、こうした細かい要素にしっかりと向き合って捉えていくと、アーティストの表現力だけでなく、その人らしい魅力が浮かび上がってくるんです。

スタッフ 実はカメラのアングルは動画にいただくコメントも参考にして、回を重ねるごとにアップデートされているものでもあります。

ゴスペラーズ – ひとり / THE FIRST TAKE

――演出についてはどうでしょう?

清水 演出という演出はしないようにしていて、アーティストには「ライブだと思ってパフォーマンスをしてください」と伝えています。撮影時にはスタッフが全員退出して、真っ白なスタジオにアーティストだけ。ほとんど制約がなく、自由度が高い中での一発撮りなので必然的に緊張感が高まります。

スタッフ 収録は「いつも通りでお願いします」と言うにとどめていますし、コメントも事前に決めず、その場で感じたことを自分の言葉で言ってくださいと伝えているので、かなり緊張される方もいますね。

清水 失礼かもしれませんが、歌詞の間違いといったハプニングが起きると、ちょっとラッキーだと思っていて(笑)。それは魂がこもっているからこその事件性ですから。結果として、アーティストは一回限りのテイクに、ものすごい熱量と深度で、最大限のパフォーマンスを発揮します。緊張によって限界を超える感覚が呼び起こされ、歌唱中や終わったあと、アーティスト含め撮影現場にいる全員が、感動している。

スタッフ 録音についても、そうした生の良さが薄れないようにしています。

清水 こうしたことの積み重ねによって、音と映像を通して、アーティストの圧倒的な表現力が鮮明に映し出されます。考えて聴くのではなく、感じて聴くことを重視して「体感としての音楽の解像度」を上げることを大事にしています。鳥肌が立つような感動体験のある、YouTubeチャンネルにしたいのです。

――そのようなTFTが持つ明確なスタイルが魅力となり、130万人を越えるチャンネル登録者数へとつながっていると感じます。

スタッフ 新型コロナウィルスの影響で在宅率が増えて、チャンネル登録者数も平均的に上昇傾向にあります。緊急事態宣言を受けて、我々もTFTのチャンネルで今なにができるのか?を考えました。まずそのひとつが「THE HOME TAKE」です。通常のTFTの撮影と異なり、アーティストの自宅やプライベートスタジオでの収録体制に変更し、アーティストの環境を整えながら、TFTのクオリティも担保するコンテンツを提供したいという思いのもと制作しています。TFTでは通常、アーティストに2曲歌ってもらっていますが、「THE HOME TAKE」では1曲しか公開してないケースもあります。限られた環境の中でアーティストに寄り添いながら、「今できること」を考え、コンテンツをアップしています。

――最後に今後の展開についてはどんなことを考えていますか?

スタッフ チャンネル登録者の30パーセントが海外の視聴者なので、アーティストのブッキングに多様性をもたせて、今後はさらに、グローバルに展開していきたいですね。

THE FIRST TAKE
2019年11月開設のYouTubeチャンネル。登録者数は6月現在、130万人。「音楽とは、何か。一発撮りで、向き合う。」をコンセプトに、様々なアーティストの一発撮りを高音質・高画質でドキュメントする。

清水恵介
アートディレクター。TBWA/HAKUHODO所属。JAAA 2018 CREATOR OF THE YEARメダリスト


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