俳優・須藤蓮『ワンダーウォール』をめぐる2年間「時代に飲み込まれない」生き方

2020.6.19

多数派の意見に流れてしまわずに

須藤蓮インタビュー

この取材はZoomで行った。カメラに向けた瞳は強く、2年前、キューピーになりきったかのように会見場に立っていた須藤とは違って見える。渡辺あやの取材について来た帰り、246沿いのガードレールにもたれて誰かと電話していた、いかにも都会の大学生という感じとも違って見えた。その2年前、渡辺あやの取材ながら、ついつい須藤にも質問したとき、「ドラマで描かれた“全会一致”の議論のやり方はなかなか大変なことだと感じます。須藤さんはそういうやり方をどう思いますか? または実際やったことがありますか?」と私は聞いた。須藤はこう応えた。

「“全会一致”の議論をする経験はなかなかないですよね。けっこうな大人数で全体を一致に至らせることはかなり難しいですから。でも、“全会一致”に至るまで話し合う機会をあえて持つことで、人は意見をぶつけ合うことができる。そうしないと、意見を交わし合うことのないまま、なんとなく多数派の意見に流れてしまうものであることを、今回、ドラマに出演して気づかされました」

『ワンダーウォール 劇場版』では最初は友好な寮生たちが、早くしないと寮がなくなってしまうというのっぴきならない事態を前に、次第に焦り、抑えていたものが噴出してぶつかり合う。そのまま空中分解させずにどう解決するか……。簡単には答えは出ない。だからこそ物語は終わっても、それは終わりじゃない。映画を誰かに手渡しつづけ、問いかけつづける。須藤蓮は『ワンダーウォール』の果てない問いの答えを、身をもって育てている。

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