テレビやツイッターに疲れたら、ラジオへ
そう考えると、ラジオを聴き始めるきっかけってなんなのでしょう?
特にラジオは何かしらの反発がなければ聴かないと思います。もともとラジオはレジスタンスメディアなんですよ。
家庭でテレビのチャンネルを奪い合っていた1970年〜1980年代、テレビで受け止め切れなかったものがこぼれてきたのがラジオでした。当時ラジオ業界で働いていた人たちは「テレビと同じことをやってもおもしろくない!」と必死になっていたそうです。
確かにラジオじゃないとできない話ってたくさんありますよね。
今ってテレビもツイッターも、社会的に正しいことが求められることが多いですよね。何か少しでも不謹慎なことを発信しようものなら、過剰にバッシングされる総監視社会。
俳優が「また喫煙所がなくなった! タバコ吸いたい〜!」なんてツイートしただけで批判されますからね。
TBSラジオでは、ピエール瀧さんと電話をした話をしていましたね。昼のワイドショーなら考えられない。
あれは、他局のパーソナリティとして本当にうらやましかったです(笑)。
テレビ東京の“佐久間P”こと佐久間宣行さんの『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)はエポックメイキングですよね。
アーティストでも芸人でもない、知らない人はまったく知らない40過ぎたおじさんが深夜にひとりでガハガハ笑いながらしゃべっているだけなのに、話を聞いていたら、佐久間さんがおすすめする映画やグルメが好きになる。
なぜラジオはテレビやSNSの発言に比べて炎上しにくいんでしょうね。
話を長く聴いてくれる人しか聴きつづけないからです。だから、発言が暴論か一理あるとするかは、リスナーが前後の文脈含めしっかり聴いて判断してくれている。
リスナーがパーソナリティのトークに付き合ってくれているってことかもしれませんね。
仮にネットニュースで切り取られたら暴論に見えるけど、リスナーが前後の文脈を理解しているからパーソナリティを守ろうとしてくれる。「普段ラジオ聴いていないくせに、批判するな!」って。
赤江さんが新型コロナウイルスに感染してしまったときもそうでしたね。
僕も含めて『たまむすび』リスナーの中には、赤江さんのことを親戚みたいに思っている人が多いと思います。親戚や知り合いが悪く言われていたら、いい気分はしませんよね。
そういうところがラジオリスナーとパーソナリティっておもしろい関係ですよね。ある意味反乱軍みたいな。
反発の仕方にもいろいろあるんですよね。
たとえば、2020年3月に終了してしまった『伊藤健太郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)で伊藤健太郎くんが話した「SMAPが大好き」というエピソードは愛にあふれていてすごくよかった。
あのトークも「超メジャーなものを真正面から肯定する」という反発のひとつだと感じています。
「ほかの人が触れないようなあえてメジャーなものへの愛を語る」という反発ですね。
要は、テレビとSNSに疲れた人はラジオに来てくださいって話なんです。まあ、そう言ったところで反発されるかもしれませんが(笑)。
ラジオが抱える課題
一方で、ラジオは課題もたくさん抱えている気がします。
ラジオってのんきなメディアなんですよ。
制作コストが比較的安いから局の経営を逼迫(ひっぱく)するようなことはないけど、ラジオだけで大儲けしている人もいない。
ラジオでブレイクのきっかけを掴む人もいるので、もっと本気でアイデアを絞っていいと思うんですけどね。
もしかしたら「多様性」という自分たちのセールスポイントにも気づいていない。
だから、本来ラジオがカバーするはずだった多様性の需要はYouTubeに押さえられてしまったんでしょうね。YouTubeには本当になんでもあるので。
ラジオにはラジオのよさがあると思うんですけど、やはり私たちは言語化できていない。
本気でアイデアを絞れていないとしたら、何が原因なんでしょうね。
一概には言えませんが、新しい動きが起こりづらい環境はあるかもしれません。
時代の変化に対応し切れていないというか。30〜40年前がおいしすぎたから、今でも当時の考え方、やり方をなかなか変えづらい。
でも今の聴取率は当時に比べたら10分の1以下ですからね……ラジオ業界はもっと危機感を抱くべきだと個人的には感じています。
吉田さんはVTuberを始めるなど、いろいろ新しい取り組みをされていますよね。
孤軍奮闘過ぎて、まるで注目されませんけどね(笑)。
局長クラスの方が、意外なことにすごくお堅いんですよね。生真面目というか。それこそ今でもツイッター禁止の局があるとか。
マジですか!?
ツイッターに出演者の集合写真や動画を上げるようになったのも、ここ2〜3年ですからね。
2016年3月にNHK放送文化研究所が発表した調査結果によると、日本国内で1週間に5分以上ラジオを視聴した人の割合を示す週間接触者率は約37%。
意外と多く感じるかもしれませんが、欧米の週間接触者率はなんと90%以上。実は、日本は世界でも有数のラジオが聴かれていない国なんです。
radikoは海外で利用できないんですよね。
一方でポッドキャスト型の配信サービス『ラジオクラウド』は海外でも聴ける。だから、海外在住のラジオリスナーはラジオクラウドの特別編だけ聴いてメールを送っていると聞いたことがあります。
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