深田晃司&濱口竜介監督とミニシアターの社会的価値を考える。1億円が57時間で集まった理由とは?

2020.4.29
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文=宮田文久 編集=森田真規


新型コロナウイルスの感染拡大を受け緊急事態宣言が全国に発令され、日本全国の多くの映画館も休業要請を受けて営業ができない状態がつづいている。

そんななか全国のミニシアターを支援するために2020年4月13日に始まったプロジェクト「ミニシアター・エイド基金」が、スタートからわずか57時間で目標金額の1億円をクラウドファンディングで集め、注目されている。このプロジェクトの発起人である深田晃司・濱口竜介の両監督に話を聞いた。


“場”が失われてしまう――という強い危機感

窮状にあるミニシアターを、短期集中的に支援する。「ミニシアター・エイド基金」の性格について聞きながら、聞き手は重ねてミニシアターの「社会的価値」について尋ねた。そうした「大文字」の問い方をすべきなのか、という点も含めて、深田・濱口両監督は真摯に議論を重ねてくれた。必要とされる短期的な行動、そして長期的な視座――両氏の思考をヒントにしながら、ぜひ一緒に考えてみてほしい(取材は2020年4月17日に行われた)。

――この取材では本プロジェクトの緊急性について改めて伺いつつ、ミニシアターの「社会的価値」についてもお聞きしたいのです。というのも、たとえば小説界の大家スティーブン・キングは、「もしアーティストが役立たずというなら、自主隔離を音楽、本、詩、映画や絵画なしで過ごしてみろ」とツイートをしているのですが、それもうしろ向きのような気もしまして……。

深田 すみません、「うしろ向き」というのは、どういう意味においてですか?

――キングも決してそうは思っていないはずですが、「暇つぶし」の道具としてのアート、というニュアンスを帯びてしまっているのでは、と。

深田 ああ、「暇つぶし」というふうに取るわけですね、なるほど……。

――このあたりは後段で伺えれば。まずはミニシアター・エイド基金が開始後わずか57時間で当初の目標金額である1億円を達成したことについて、どのように受け止めていますか。

濱口 達成時のコメントに出したとおりなのですが、支援が現実的な意味を持つためにも達成されなくてはならないし、されるだろうとは僕個人としても思っていたものの、スピードには大変驚きました。我々も連動している「SAVE the CINEMA」が先んじて署名活動をしていて、そうした公に向けたアクションによってミニシアターの危機、窮状というものがすでにかなり広範囲に伝わっていた、ということが大きかったと思います。認知の広がりによって「なんとか支援しなければ」という気持ちが高まっていたところに、具体的な支援策としてのミニシアター・エイド基金が出てきた、という状況だったのだろう、と。

深田 自粛が広がっていったころから、SNSやネットメディアの記事を通じて、名古屋シネマスコーレ副支配人の坪井篤史さんや、アップリンク代表・浅井隆さんといった方々の切実な声が伝わってきていましたよね。もちろん、映画制作の現場も配給もどこも大変なのですが、特にミニシアターというものは、その“場”が一度失われてしまうと、その地にまた映画を見る場が戻ってくるのはとても困難だろうと思います。さらに地方のミニシアターはただでさえ数が減っていて、隣の県からわざわざ観に来る人もいるような状況ですから、それさえも失われては、文化は都市圏でしか享受できないようなものになってしまう。
まずはミニシアターを、ということで何かできることはないかと思っていたときに頭に浮かんだのが、自分も呼びかけに参加した、2年前の西日本豪雨被害に際して支援金を募った「DONATION THEATER」でした。よりシンプルにクラウドファンディングで支援を集めて分配できれば、と考えて「Motion Gallery」代表の大高健志さんに電話をしたところ、ちょうど1時間くらい前に濱口さんからも電話があったということで、合流することになったんです。

濱口 特に坪井さんのインタビュー記事を見たのが大きかったですね。シネマスコーレには呼んでいただいたこともあるし、坪井さんともお会いしている。自分にとって“顔”の見えている人や場が、具体的な危機に晒されている、ということがハッキリわかり、閉館が目前まで迫っているという状況を理解しました。予想はしていたけれども、やっぱりこんなに大変なのか……と。そのとき、ニュアンスは難しいのですが、自分が「暇だった」ということはすごく大きいんです。
コロナの影響で撮影も止まってしまった。そのおかげで考える時間も、手を動かす時間もある。じゃあやるか、と。「暇だから」と言うと軽い理由に聞こえますが、自分の余裕を誰か、それが現時点ではないであろう人や団体のために「シェア」をするという感覚です。そして、そういうことがみんなでできるような仕組みとして、クラウドファンディングというものがあるはずだと思って、まず大高さんに連絡をしました。

ミニシアターの社会的価値とは?


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宮田文久

(みやた・ふみひさ)フリー編集者。1985年、神奈川県生まれ。Ex.株式会社文藝春秋(「淑女の雑誌から」担当時は、机上がハードなレディコミであふれた)。博士(総合社会文化)。雑誌『DISCO』編集人、イベント『わたわたフェス』主催。インタビュアーとなる機会も多く、2016年の独立以降では、一柳慧、細..

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