北山耕平インタビュー「新しい意識、新しい新聞」(赤田祐一)【第4回】自分の頭で考えて、自分の目で見て、自分の手で書く

2020.5.18

テレビに負けない新しい新聞を

――そういう若くて元気なジャーナリストたちの書くものを、フィーチャーする感じで、この雑誌を作ろうと思ってるんです。そのテーマを“ニューエイジ・ジャーナリズム”という言葉を使って展開していこうと思ってるんです。

北山 女の人なんかでもいます? そういうのを書く人。

――女の人は少ないですね。探してるくらいです。特に20代の女性ライターってのは少ないようですね、おもしろい人が。

北山 そうだね。たとえば、フィリピンから出稼ぎに来てる女の人たちのドキュメンタリーとか、おもしろいもの書けると思うんだよね。暗くしないで、悲惨な面だけじゃなくてさ、どうやって日本を見て、何をやってるかっていうのをさ。そういうのって、ぜんぜん、誰もやろうとしないしね。

――特に女性の署名性のあるライターは、浮上してきてない感じがしますね。

北山 みんな、エッセイストになっちゃうんだろうね。でも、俺はやっぱり、今度、ジャーナリズムってのは、ちゃんと大人になるときだと思う。日本のジャーナリズムっていうのが、子供だったとは言わないけれど、世界とシンクロしてないことは確かだし。これからの10年間、日本の“ニューエイジ・ジャーナリズム”っていうのが、ほんとに試されるときじゃない? ジャーナリズムが成長しなきゃいけない時期にあることは、確かだと思うよ。あと、やっぱり、アンカー・システム *38 というものがある限り、日本のジャーナリズムはダメだろうと思う。俺は、あれが限界だろうと思う。

――やっぱり自分で、レッグ・ワーク *39 で、足を使って、取材しないとダメですね。

北山 自分の頭で考えて、自分の目で見て、自分の手で書くというのが、本来のジャーナリズムで、それじゃないとおもしろいものができない。コピーだけのおもしろさになっちゃってたり、つまんない記事をどうやって長くして読ませるかという方法になったりすると、やっぱりやばいだろうなと思う。で、この世界って、往々にしてそうなりやすいし。そこの部分が自分にとっては、あまり見たくもないしね。

――取材対象に対して一歩踏み込んでいくようなルポってありますよね。さっき言ったトンプソンの『ヘルズ・エンジェルズ』とか。

北山 いっしょに生活してみるってことだよね。

――そうです。ゲイ・タリーズ *40 だったら『汝の父を敬え』 *41 で、マフィアの一族の中に入って2年間密着取材したりですね。そういう体験レポートは考えないんですか。

北山 考えられるよ。アメリカ・インディアンのことは、それでやろうと思ってる。自分で中に入った体験から書くしかないから。そうすれば、学者が書いたものとも違うものが書けるはずだし、もっと生の「声」を伝えられるはずだし、文化人類学の対象としてその人たちを見るんじゃなくて、ちゃんとある種の尊敬をもってその人たちを見る方法が、絶対あるはずだから。ただ、威勢のいいジャーナリズムと言われても、まず第一に場所がないことと、今の東京にそれを伝えたいようなことはいっぱいいろんなことが起こってるんだけど、それに値するようなメディアが、ほんとに見出せないというかさ。

――じゃあもし、メディアがあったら、一番やりたいというのが、日刊新聞ですか。

北山 そう。それ以外はもうあんまり興味ないからね。いっそのこと、新聞が力を持つ時代が、もう一遍来てもいいと思う。テレビに負けないような新聞だよ。読むに値する新聞。テレビのあと追いをやってるような新聞じゃなくて、ある種の知性に耐えうるような新聞。
もうひとつは、地域に根ざしたもの。日本っていうものを、きちっとターゲットに入れた日本の雑誌とかね。「今、日本で何が起こっているのか」を世界に紹介するための雑誌とかさ。それは、やったら、おもしろいんじゃないかなという気はしてる。
あとは、ニューエイジ的な世界の認識の仕方というものが使えるためのメディア。たとえば、アメリカにあるニューエイジ・マガジンとか、それに匹敵するようなものが欲しいなとは思う。別に俺は、オカルトをやってるわけでもないし、宗教やってるわけでもないんだけど、ある部分、それと抵触し合う部分があるから。

――今の北山耕平さんの仕事っていうのは、やっぱり“オカルト的”に見えてしまいますね。

北山 そうだろうね。俺はある部分、それでいいと思ってる。

――映画『ホピの予言』 *42 のスーパーバイザーをされたりとか。

北山 『ローリング・サンダー』(1991年、平河出版社)を訳したりとかね。それは、自分にとって病気の治療みたいなもんでさ、必要だったんだからしょうがないんだよ。自分が成長することにおいて、必要なことっていうのは、おカネになろうがなるまいが、やらされるからね。

*38 アンカー・システム…現場を踏むことはまったくなしに、データ原稿をもとに、記事に仕立てあげるシステム。かつては、それが、客観的に真実をとらえるスタイルだと信じられた。

*39 レッグ・ワーク…どんなに時間がかかっても、自分の足で取材し、自分の目で物を見て、自分で、原稿を書くこと。ニュー・ジャーナリズムの特色のひとつ。

*40 ゲイ・タリーズ…「ニュー・ジャーナリズムの父」と呼ばれる。都会的に洗練された文体で、主として「変貌するアメリカ」というテーマを、あたかも小説のように書くことで知られる。

*41 『汝の父を敬え』…没落するマフィア集団の内側に入りこみ、7年間にわたり、家族ぐるみの交際をして書きあげたタリーズの代表作。

*42 『ホピの予言』…アメリカ・インディアンのホピ族に伝わる予言を追いかけたドキュメンタリー映画(1986年)。監督・宮田雪。

*【最終回】ニュー・ジャーナリズムには人生が凝縮されている(全5回)は、2020年5月19日配信予定

■北山耕平インタビュー「新しい意識、新しい新聞」(赤田祐一)

【第1回】ソフトな奴隷制を打ち破る編集
【第2回】ロック雑誌の中に「声」を探していた
【第3回】自分たちの新聞を作ろう
【第5回】ニュー・ジャーナリズムには人生が凝縮されている


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  • 北山耕平・著『地球のレッスン』

    発行:太田出版 定価:本体1200円+税
    やるべき事をやり終えるまで、あなたの旅はつづく。「この星に帰る」ための、魂の地図。ロングセラー『自然のレッスン』につづく姉妹編。
    (目次)第一部 ハートへのレッスン/第二部 魂へのレッスン/付録 食べ物について知っておくこと
    http://www.ohtabooks.com/publish/2009/12/18000000.html

    北山耕平(きたやま・こうへい)
    1949年生まれ。立教大学卒業後、かつて片岡義男氏と遊び友達であったことから宝島社に入社。『宝島』第4代目編集長を経てフリーライター/エディターに。『ポパイ』『ホットドッグ・プレス』『写楽』『BE-PAL』『ART WORKS』『ゴッドマガジン』等の雑誌創刊に立ち会う。ベストセラーになった『日本国憲法』の企画編集に参加した。著書に『抱きしめたい』(1976年、大和書房)、『自然のレッスン』(1986年、角川書店*2001年、新装版、太田出版。2014年、ちくま文庫)、『ネイティブ・マインド』(1988年、地湧社*2013年、サンマーク文庫)、『ニューエイジ「大曼荼羅」』(1990年、徳間書店)、『ネイティブ・アメリカンとネイティブ・ジャパニーズ』(2007年、太田出版)、『雲のごとくリアルに』(2008年、ブルース・インターアクションズ)、『地球のレッスン』(2009年、太田出版*2016年、ちくま文庫)、訳書に『虹の戦士』(1991年、河出書房新社*1999年、改定版、太田出版。2017年、定本・最終決定版、太田出版)、『ローリング・サンダー』(ダグ・ボイド、1991年、平河出版社)、『時の輪』(カルロス・カスタネダ、2002年、太田出版)、『自然の教科書』(スタン・パディラ、2003年、マーブルトロン)、『月に映すあなたの一日』(2011年、マーブルトロン)等がある。

  • 雑誌『スペクテイター』最新号(vol.46)特集「秋山道男 編集の発明家」

    発行:エディトリアル・デパートメント 発売:幻冬舎 定価:本体1000円+税 
    spectatorweb.com

    『クイック・ジャパン』創刊編集長であり、本記事の執筆者である赤田祐一が編集を務める雑誌『スペクテイター』最新号、特集「秋山道男 編集の発明家」発売中。
    「若い時代というのは、自分を圧倒するものが目の前に出現すると、無条件で心酔したり、神格化してしまうようなところがある」
    赤田が、北山耕平と共に心酔した編集者のひとりであるスーパーエディター・秋山道男の総力特集。
    「あらゆるクリエイティブはエディトリアルだもんね」


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