北山耕平インタビュー「新しい意識、新しい新聞」(赤田祐一)【第4回】自分の頭で考えて、自分の目で見て、自分の手で書く

2020.5.18

竹中労とハンター・トンプソン

――さっきの“ニューエイジ”って話なんですけど、北山さんが編集した『ニューエイジ「大曼荼羅」』 *30 (1990年、徳間書店)という本がありますね。あそこの巻頭で書いてらした”ニューエイジ“の定義と、僕の考えてる”ニューエイジ“とは、ちょっとニュアンスが違うんです。僕のほうは、もっと知的で不良で元気な若い世代みたいな、そういう意味合いが強いんです。ジャーナリズムにおけるヌーベルヴァーグ運動のような、ホールデン・コールフィールドやハックルベリィ・フィンや『AKIRA』のカネダやテツオが隣にいる友人に語りかけるような、そんな“新しいジャーナリズム”を、目指しているんです。雑誌を出すときに、創刊のマニフェストみたいな感じで、この雑誌の好きなものを挙げていこうと思うんですね。そのとき、ハンター・S・トンプソン *31 とかトム・ウルフとか、並べようと思うんです。たとえば、竹中労 *32 さんって方がいましたね。僕は、トンプソンと竹中労さんとは、意味的に、同じニュー・ジャーナリストなのだと思うんですよ。

北山 俺は、ぜんぜん違うと思う。

――……そうですか。竹中労さんも『「たま」の本』(1990年、小学館)とか、それほどいいとは思わないけど、たとえば、かつて『話の特集』(話の特集社)の臨時増刊号として刊行されたルポルタージュ『ザ・ビートルズレポート』 *33 (1982年、白夜書房)とか、『鞍馬天狗のおじさんは』 *34 (1976年、白川書院)というインタビュー集などは、非常に近いと思いますけどね。

北山 うーん……。というかね……。

――竹中労さんのケンカ・ジャーナリズムと、トンプソンのゴンゾー・ジャーナリズム *35 を繋ぐような感覚っていうのを、僕は、この雑誌に持たせたいと思っているんです。

北山 だって歌謡曲とロックぐらい違うじゃない? “ゴンゾー”っていう点で切れば一致してるかもしれないけども、トンプソンにしてもトム・ウルフにしても、記事を書いてる力っていうのは新しい意識なんだよね。竹中労さんっていうのは、古い意識だよね。古い意識の最後の段階で、一所懸命やってるって感じはするけど、よって立ってるステージが違うと思う。だから、それがまったく同列のジャーナリストであるというふうには、俺には見れないの。

――もちろん、今、竹中労と言ったのは、竹中労さんの、ほんとに良質の2、3の本ですよ。

北山 だから、“ゴンゾー”というところで切るだけだったら、ある部分ね、ほんとに一致するところは、いっぱいあるよ。そういうので、元気を出せるかもしれないけども……なんというんだろうな。現実(リアリティ)というものに、どうアプローチしてるかというと、竹中労さんは竹中労さんだし、ハンター・S・トンプソンはハンター・S・トンプソン。そのアプローチの仕方は、ちょっと違うような気がする。自分の意識を前面に押し出してジャーナリズムを竹中さん自身が展開するというかたちじゃないからね。生き方はゴンゾーかもしれないけども、本はまともだよね、極めて。ハンター・S・トンプソンは、本もまともじゃなければ、生き方もまともじゃないというところから始まってるから。

『Quick Japan』(飛鳥新社)創刊準備号(1993年8月1日発行)。グラフィックス=羽良多平吉

――トンプソンも、かなり、自己演出をしてるジャーナリストだと思うんですよ。

北山 あいつ、大統領に立候補したりとか、いろいろしてるわけだよね。

――最近も、ダイナマイト不法所持で、逮捕されてりしてますもんね。

北山 もともとそういうヤクザなんだ。ドラッグの不法所持で捕まったりとか、繰り返してる人間だから。

――それは、かなり演出してると思いますけどね。でなきゃ、文章、書けないと思うんですよ。

北山 でも、アメリカって、ああいうやつがいるんだよね。言行一致してる人。トム・ウルフのほうが演出してると思う。その意味ではもっと明快に演出してると思う。だからどっちがおもしろいかと言えば、俺はハンター・S・トンプソンのほうがおもしろいと思う。ハンター・S・トンプソンで、俺がほんとに感心したのは『ヘルズエンジェルズ』 *36 だよね。地獄の天使たち(ヘルズエンジェルズ)というグループの中に入って、初めてそれをルポしたときの姿勢のほうが、俺は好きだ。自分が隠れてる、自分を前面に出してないという意味において。出てるのは意識の流れだけという部分は、非常に好きだった。
トム・ウルフにしても『クール・クールLSD交感テスト』 *37 (1971年、太陽社)の中で好きだったのは、意識の流れに対して、彼自身の姿勢が非常に忠実だったというところだよね。日本の場合は、どうしても、演歌っぽくなっちゃう人だっているわけね。ヤクザとかさ。泣かせよう泣かせようという、ある種のパターンがあるでしょ。どうしても、日本人に好まれるようなものって、カラッとしてないわけ。余韻を引きずるようなものがいいとかね。

――演歌しか売れないんですか、日本では。

北山 わかんない、これからはわかんないけど、やっと変わりつつあるかもしれない。今、日本では、古いものがようやく終わろうとしている時期であって。アメリカでは、“ゴンゾー・ジャーナリズム”みたいなものは、新しいものの始まりとして出てきた。日本でも、ハンター・S・トンプソンのような人たちが出てきて、初めて次の世代のジャーナリズムというものが完成していくと思うわけ。あれに代わる人たちが、日本でも、出てくればいいんだけど。

*30 『ニューエイジ「大曼荼羅」』…80年代の終わりに、情報誌『ルームガイド』内に連載された週刊新聞『グッドライフ・タイムズ』を北山耕平・編でまとめたもの。ニューエイジの思想に基づく新しい世界の見かたの提案書。

*31 ハンター・S・トンプソン…「ニュー・ジャーナリズム界の気狂いピエロ」の異名をとる体験派ジャーナリスト。現在『ローリングストーン』国内事件班のデスク編集者。代表作『ヘルズエンジェルズ』はニュー・ジャーナリズムの古典的傑作。

*32 竹中労…一昨年(1991年、掲載当時)60歳で逝去したストリート・ジャーナリスト。「元祖トップ屋」の異名をとり、今の日本の芸能ジャーナリズムの原型を作り出した。

*33 『ザ・ビートルズレポート』…ビートルズ来日時、『話の特集』の臨時増刊号として刊行されたレポート。竹中労は、来日したビートルズと同じヒルトンホテルに陣取り、6人の記者とチームを組み、7日間不眠不休で、ビートルズ・フィーバーを書き上げた。三島由紀夫、五木寛之、深沢七郎らから激賞された。

*34 『鞍馬天狗のおじさんは』…“鞍馬天狗”で有名なアラカンこと嵐寛寿郎の口調を、竹中労の情熱が、見事にすくい上げた聞き書きの最高傑作。マキノ雅弘が「世界一オモロい本や!」と折紙をつけていた(1992年、ちくま文庫。2016年、七つ森書館)。

*35 ゴンゾー・ジャーナリズム…“ゴンゾー”とはイタリア語で「やくざな」の意味で、“ゴンゾー・ジャーナリズム”とは、トンプソンが生み出した取材スタイルの呼称。トンプソンの取材法は、トンプソン自身が暴走族や鮫狩りや大統領選挙の渦中に飛びこんでいき、関係者の考えや行動をなまなましく伝える「主観的報道」である。

*36 『ヘルズエンジェルズ』…1960年代後半、カリフォルニアに出現した暴走族集団“ヘルズエンジェルズ”の中に、トンプソンが自ら18カ月間、身分を隠して潜入し、書き上げたレポート(創刊準備号にも寄稿する作家の石丸元章による翻訳版が、2011年、リトルモアより刊行 )。

*37 『クール・クールLSD交感テスト』…1960年代後半、トム・ウルフがLSDパーティに飛び込み、全米中をフラワー・チルドレンと共にバスで狂ったように走り回った記録をまとめたレポート。狂気すれすれのエネルギーが、翔んでる文体から伝わってくる(1996年、改定版)。

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