神聖かまってちゃん、4人最後のライブ【後編】ネットを介した“本音”だから生まれる感情の振れ幅

2020.2.23
神聖かまってちゃん

文=たけうちんぐ 編集=田島太陽
トップ画像=神聖かまってちゃんの4人。左からちばぎん、mono、の子、みさこ(撮影=たけうちんぐ)


2020年1月13日、神聖かまってちゃんからちばぎんが脱退した。だがそれまでも、バンドのメンバーは4人だけではなかった。の子がメンバー写真に写り込ませようとする“第三者”がいたからこそ、彼らは活動をつづけられた。

顔出しがタブー視されていたころから配信を始め、匿名の罵詈雑言と向き合い、そしてパソコンを床に叩きつけて破壊した。彼らが手にしたインターネットは、普段は本音で向き合えず常に解散危機にあった彼らを、10年以上にわたり支えつづける“勝因”になったのだ。

彼らを10年間撮影してきた映像作家・たけうちんぐが、ちばぎん脱退までを振り返る。


メンバー同士を向き合わさせた“第三者”とは

2020年、元日。メンバー4人最後の年越し配信を終えたあと、MV撮影でよく使われるためファンの間でも聖地として知られる、の子の住む千葉ニュータウンにある通称・ひょうたん山にメンバーが登った。そこで、23歳のころのアーティスト写真と近い構図で写真を撮った(記事トップ画像参照)。

11年前と明らかに違う部分がある。それはの子の手元。配信中のiPhoneの画面がこちらに向けられ、そこにはたくさんのコメントが流れている。それをメンバー写真に写り込ませるのは、コメントを書き込む人たちもメンバーの一員であることを示すかのようだ。

神聖かまってちゃん 2009年ごろのアーティスト写真
2009年2月、千葉ニュータウン・ひょうたん山にて

昨年12月、ちばぎんにとって最後のツアーに同行し、大阪までの車中で助手席から撮影しながらインタビューをした。そこでちばぎんがこのように語っていた。

「普段言ってしまうと険悪なムードになることを、配信上で半分笑い話にしながら“お前こういうとこあるよな”みたいな話ができるっていうのは、解散しそうなこんなバンドが10年間つづいてこられたひとつの勝因ではあったんじゃないかな」

言いたいことは配信上で言い、エンターテインメントに昇華することで発散する。面と面で向かい合わなくても、目の前にいる多くの“第三者”を介することで笑い合える。

そんな“第三者”とはつまり、ファンであり配信のリスナーたちのことだ。

苦しいことも辛いことも話し合える唯一の存在

この2年間は結成10周年ツアー/ちばぎん在籍最後のツアーもあり、地方のライブに撮影でみっちり帯同した。移動中や楽屋での彼らは互いの会話は少なく、教室の窓際族のごとくおとなしい。特にの子は、衝動と大絶叫をぶちまけるライブのテンションとはまったく違い、普段は無口だ。世間一般の神聖かまってちゃん像とはかけ離れた姿である。

楽屋に着くとメンバー全員がそれぞれの携帯に顔をうつむかせる。だが、ライブ前に配信が始まると次第にテンションが上がり、みんな言葉数が増えていく。 “神聖かまってちゃん”になるのだ。

それも、次から次へと流れていくコメントのおかげだろう。リスナーから質問があるたびに内に秘めていた想いや、互いの気持ちが伝えられていく。メンバー4人だけの空間がいつの間にか何百人、時には何千人にも膨れ上がる。これはほかのバンドでは見られない光景だ。姿なき存在を介することでメンバーの表情に笑みが浮かび、先ほどまで静かだった楽屋の空気がガラリと変わる。

スタッフでも友だちでも、恋人でも家族でもない。リスナーこそが最もバンドの現状を理解し、苦しいことも辛いことも話し合える唯一の存在になっている。ちばぎんは車中のインタビューで、そんな彼らに「助けられてきた」と語っていた。

かつてのアーティストはファンとの距離が遠く、神秘性を身にまとっていた。だが、神聖かまってちゃんはすべてをさらけ出す。リスナーにとっても大好きなバンドを配信で身近に感じ、気軽に声をかけられる。親しみを抱くことで、臆することなくコメントを投げていく。

それもすぐに生まれた関係性ではない。神聖かまってちゃんは配信文化の黎明期から、険しいインターネットの荒野を渡り歩いてきた。今までに数多くの匿名の罵詈雑言と向き合ってきたのだ。

ネット上での顔出しがタブー視されていたころから


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Written by

たけうちんぐ

本名、竹内道宏。2009年から神聖かまってちゃんをカメラで追っている。映画監督として『新しい戦争を始めよう』『世界の終わりのいずこねこ』などを発表。ライブやドキュメンタリーなど体感系の映像を中心に活動している。

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