『ナイナイANN』で生まれた名言の数々
森脇とANNの深いつながりを紐解けば、『ナインティナインのANN』に行き着く。2011年10月のスペシャルウィークに初出演。「予算の関係上、新横浜までしか交通費が出せない」ため、新横浜から有楽町のニッポン放送まで真夜中に生マラソンを行った。森脇は走りながらも、リスナーから届いた人生相談にまじめに答えると、ニッポン放送前に集まっていたリスナーに「みんなで行こうぜ! みんな上がれ。スタジオまで」と叫んで、まわりを慌てさせている。「俺よし、スタジオよし、リスナーよし、三方よしや」「人生はボディブロー。ラジオはボディブロー」など数々の名言も残した。
2013年10月に再登場。岡村隆史、安田大サーカスの団長安田と共に有楽町駅からニッポン放送までミニマラソンを走り、見事に首位でゴールテープを切った。岡村個人時代の2015年8月にも出演し、同年11月に開催された『岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭in横浜アリーナ』では、持ち歌『真夏のFANTASY』を熱唱。2021年10月放送の「天下一気合武闘会」にはリモートで出演し、ラジオなのにシャドーボクシングを披露している。
若いリスナーからすると、森脇は『オールスター感謝祭』の赤坂5丁目ミニマラソンで活躍する人……という認識ぐらいしかないだろう。しかし、森脇はかつて天下を獲った男、そしてラジオに育てられ、ラジオに救われた男でもある。
小学生のころからラジオリスナーだった森脇にとって最初のパーソナリティ経験は中学3年生のとき。初めてできた彼女へのクリスマスプレゼントとして、120分テープにオリジナルの番組を録音したのがすべての始まりだった。KBS京都で放送していた島田紳助のラジオ『ビブレ サタデーナイト』や『ハイヤングKYOTO』にハマり、公開収録にも参加。素人時代から紳助に顔が知られていたらしい。
高校2年生でオーディションに合格し、松竹芸能所属となると、18歳にして『MBSヤングタウン』でラジオデビュー。笑福亭鶴瓶と1年間共演した。その後、かつて自分がリスナーだった『ハイヤングKYOTO』のパーソナリティに就任。19歳にして深夜ラジオを担当し、憧れの紳助と別曜日で名前が並んだ。この関係がのちに『オールスター感謝祭』のマラソンにつながる。
テレビでも関西圏で絶大な人気を博し、90年代に東京に進出。一気にスターダムへと駆け上がり、その存在は全国区になった。一時期はレギュラー12本を誇ったほど。バラエティのみならず、ドラマやCMでも活躍。あまりの忙しさにヘリコプターで移動した逸話を持つ。短期間ながら現在『JUNK』を放送しているTBSラジオの深夜帯で浦口直樹アナと共に『スーパーギャング』を担当。ニッポン放送でも番組を持っていた。
しかし、芸能界の荒波に飲み込まれ、活躍は長つづきせず、レギュラー番組が激減。1999年に活動の拠点を関西圏に戻す。唯一残ったレギュラー番組はKBS京都のラジオ。地元に根差した番組作りを心がけ、そこが森脇の拠点となっていく。「素直!謙虚!感謝!」の姿勢はこのころに生まれた。現在も森脇はKBS京都でレギュラー番組を持っている。
あのころ、全国区での活躍の場は『オールスター感謝祭』だけで、芸能人としては過去の人、忘れられた存在扱いされていたが、そんなときに森脇をイジり出したのが前述した『ナインティナインのANN』だった。森脇曰く、京都への撤退後、『オールスター感謝祭』以外で初めて東京に呼んでくれたのがこの番組だった。岡村やリスナーが自分をイジってくれたことが森脇はうれしく、のちに「あのANNから上向いた」と語っている。
『歌謡祭』で歌った『真夏のFANTASY』の2番の歌詞は書き換えられていて、「岡村君のラジオが心を癒やしてくれた」という一節があった。のちに筆者は『まだお笑いラジオの時間』(綜合図書)で森脇をインタビューしているが、この一節について「僕もパーソナリティをやってるから、(森脇イジリのネタを)リスペクトして読んでくれてるのがわかるんですね。本当に嫌いなヤツは読まないし、本当に落ち込んでいる人に対してはできないから。『東京のラジオでもこうして遊んでくれてる』というのは心地よかったです。『心を癒やしてくれた』というのはそういう部分もあったと思いますね」と明かしている。
『歌謡祭』の冒頭、ステージに立つ岡村と全国から集まったリスナーたちを見て、森脇は思わず涙したという。インタビューした際、森脇に「君ら、AMラジオを聴いてそうやなあ、顔が」と言われたのは、ラジオを取材する者として勲章だと思っている。
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