深夜ラジオのサブスク『オールナイトニッポンJAM』が革新的な理由とは?歴史の転換点になり得る可能性

2022.8.26
ALLNIGHT NIPPON JAM / オールナイトニッポンJAM

文=村上謙三久 編集=森田真規


今年で55周年を迎える『オールナイトニッポン(ANN)』(ニッポン放送)。ビートたけし、タモリ、とんねるず、ウッチャンナンチャン、中島みゆき、小泉今日子、aikoなど、そうそうたるメンツが過去にパーソナリティを務め、現在もナインティナイン、オードリー、星野源など日本随一の人気タレントが各曜日にそろう“日本一有名なラジオ番組”として知られている。

そんなANNが、番組アーカイブが聴き放題のサブスクリプションサービス『オールナイトニッポンJAM』を6月20日からスタートさせた。「真夜中に消化され、終われば流れ去っていくという捉え方が一般的だった」深夜ラジオが、時代を越えて聴けることの意義はどこにあるのか?

『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)の著者である村上謙三久は、厳しい状態にあるラジオ業界において『ANN JAM』の存在は、「『リスナーがスポンサー』というかたちで成果が出れば、ラジオ界の未来につながる」という。深夜ラジオの歴史を語る上で欠かせない転換点になり得る『ANN JAM』がいかに画期的な試みなのか、さまざまな視点で読み解いていく。


『ANN JAM』とは?

『オールナイトニッポン』のアーカイブサブスクリプションサービス『オールナイトニッポンJAM』が6月20日にスタートした。深夜ラジオリスナーにとって放送のアーカイブ化はまさに念願。これを実現させた方々には惜しみない賛辞を贈りたい。今回は、ニッポン放送から頼まれてもいないのに、勝手にこのサービスを猛プッシュしたい。

まずは知らない方に簡単な概要を紹介しよう。『ANN JAM』は過去のANNの音声をサブスクリプションとして配信するサービスで、2000年以降のものを対象にしており、現在(2022年8月24日現在)は32番組がラインナップされている。開始当初は各番組4~5回分程度のボリュームだったが、毎週追加され(当時の放送曜日に配信されるのが心憎いところ)、現在はそれぞれ10回分程度まで増加。また、現在放送中のオードリー、Creepy Nuts、乃木坂46(久保史緒里)のANNは最新回も随時アップされている。アプリ内では、ANN PODCASTも聴ける仕様になっており、至れり尽くせり。有料会員となるプレミアムプランは30日で500円(税込)だ。

特別企画として、亡くなる直前の1998年春に4回だけ放送された『hideのANNR』の配信もスタート。もう一度聴きたいパーソナリティのアンケートも実施されており、さらなる番組の追加も期待できる。「寝落ちした夜を取り戻せ!」のキャッチコピーに相応しいサービスだ。

深夜ラジオのアーカイブ化が念願だった理由

なぜ深夜ラジオリスナーにとってアーカイブ化が念願だったのか。普段ラジオに触れていない人に向けて説明しよう。

深夜ラジオが生まれたのは60年代後半。ラジオ機が“一家に一台”から“一人に一台”に変化し、万人向けに番組を制作するのではなく、時間帯によって対象のリスナーを限定する“オーディエンス・セグメンテーション”という考え方から生まれたものだ。深夜帯は若者のものとなり、他局と争うようにニッポン放送が立ち上げたのが、今年55周年を迎えるANNである。

今のように深夜に暇を潰す手段がなかった当時の若者たちは“深夜の解放区”に集結した。リスナーたちは兄貴分・姉貴分のパーソナリティの話に夢中になり、ハガキを通じて本音をぶつけた。誰もが寝静まっている深夜に、パーソナリティとリスナーが“生”でつながるのは、今にもつづく深夜ラジオの醍醐味。言いようのない特別感とちょっとした背徳感は深夜ラジオリスナーに共通した感覚だろう。その後、深夜ラジオが置かれる状況は変化したが、その放送は真夜中に消化され、終われば流れ去っていくという捉え方が一般的だった。

それゆえに、ANNに限らず、深夜の生放送がソフト化された例は、長い歴史の中でも数えるほどしかない。現行のANNでいうと、『ナインティナインのANN』と『オードリーのANN』の番組本には、特別付録としてフリートークが収録されたCDがついたが、膨大な歴史の中のほんの一部の回だけだ。さらに過去を遡っても、やはりごくごく一部がソフト化されているのみ。

『ナインティナインのオールナイトニッ本 vol.1』
『ナインティナインのオールナイトニッ本 vol.1』ワニブックス/2009年
『オードリーとオールナイトニッポン 自分磨き編』
『オードリーとオールナイトニッポン 自分磨き編』扶桑社/2018年

『JUNK』(TBSラジオ)でも状況は同じで、2010年に『爆笑問題カーボーイ』と『バナナマンのバナナムーンGOLD』のDVDが発売されているが、そこに当時の傑作選的なトークが収録される程度に留まっている。深夜ラジオ初期に絶大な人気を博した『野沢那智と白石冬美のパックインミュージック』(TBSラジオ)の傑作選がCD-BOXとして販売されているのは稀有な例と言えよう。

“音源分離”が可能にした耳心地のよさ


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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

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