就活はなぜ、人を“無価値で無能”にする?面接にすら進めなかった私が辿り着いた「就活生の抜け出し方」

2022.10.12

文=丸山愛菜 編集=菅原史稀


10月1日、企業と就活生間の労働契約が結ばれる採用内定の解禁日を迎えた。周囲の多くに内定通知が届き、未内定の就活生が強い焦りを感じている時期だろう。

本稿では「めちゃくちゃ就活をナメてた」という筆者が、当時抱いていた“不安の正体”と“就活生の抜け出し方”について考える。


「自分だったらうまくいくだろう」ナメ切った就活に失敗

就活時期のことを思い返すと、いまだに胃がキリキリ痛む。

社会人4年目もそろそろ半分を迎えようとしているのに、ツイッターのタイムラインなどで“優秀な就活生”を見かけるたび、どうしようもなく劣等感を抱いてしまう。何がそんな気持ちにさせるかって、当時の自分に対しての恥ずかしさとか、後悔が大きい。正直、めちゃくちゃ就活をナメてたし、そこまで必死にがんばらなくても、自分だったら行きたい会社に行けるのではないかと、うぬぼれていた。でも、内定をもらえた会社は、結果として1社もなかった。

今考えると当然の結果である。まわりに比べて対した努力もせず、うまくいかなかったら原因も考えずにただ「自分はツイていないんだ」と、逃げの思考に陥る。自分がどんなアピールをしたいのかも考えてもいないのに、面接官がそれを汲み取ってくれると思ったら大間違いだ。客観的に考えたらすぐわかることを、当時の私はまったく理解ができず、どんどん迷走していった。

悩む女性 孤独

埋められないエントリーシート

同級生が次々と内定を獲得していく中、私は面接にすら進めない。

できるだけ多くの会社にエントリーしたほうがいいのはわかってるけど、まず、エントリーシートを埋められないから応募にまで至らない。選り好みできる立場でないのはわかっているけど、志望理由がまったく思い浮かばないのだ。

ほかの人は志望理由にどんなことを書いているのだろう、とネットで検索すると「企業の課題解決をすることで社会に貢献したい」とか出てくるけど、全然ピンとこない。人生でそんなことを思う機会が今までで一度もなかった。そもそも社会に出て働いたことがないのだから、「課題解決」というもの自体が何を指すのかもイメージできない。

スマホを操作する人1

それでも、なんとかがんばって今までの経験に無理やりこじつけ、コピペのような理由を述べる。将来のことをしっかり考えられていないのは自分だけのような気がして、どうしようもなく不安になった。それになにより、自分自身に嘘をついているようで、ずっと心がモヤモヤしていた。

面接に臨むも、「どうしてそれをやってきたのか」「その経験を生かしてどんなことがしたいのか」なんてことを深掘りされて詰められる。「どうして」なんて、「なんとなくやってみたらできちゃいました」以外にないんだけど。


「自分は無価値で無能だったんだ」と絶望

結局、就活期間ではどこからも内定を獲得できなかった。なので仕方なく、大学3年生のときからインターンをしていた会社でそのまま大学卒業後、新入社員として雇ってもらうことになったけど、それもパワハラなどが原因で就職直前になって辞退した。

自分は社会でやっていけない人間なんだと、マジで絶望した。今まで努力すれば勉強だってなんだって、そこそこの結果が出せてきたし、どちらかと言えば自分はわりとできるほうの人間なんだと思い込んでいた。だけど、それはまわりの助けがあったからこそどうにかできていただけで、本質的にはなんの役にも立たないのではないか。「この子よりは上だろう」と下に見ていた子だって難なく内定を獲得しているのに。自分のほうがよっぽど社会に出たら無価値で無能な人間だったんだと悟った。

まわりにできていることが、自分にはできない。そんなことがあるなんて、考えたこともなかった。

就職後も悩む、「ちゃんとした社会人になれない」

大学卒業後はというと、友達が紹介してくれた会社でアルバイトをして、そのまま社員として雇ってもらうことになった。

雇ってくれたのはものすごくありがたいが、正直いうと、すごく望んで入った会社ではない。初めのほうは自分の状況が悔しくて情けなくて、どうしても受け入れられなかった。まわりのみんなは入りたくて入った会社で、やりたかった仕事をやっているだろうに、自分はなんとなく入った会社で、何を成し遂げたいかもわからないまま労働をしている。就活を乗り越えられなかったコンプレックスから、仕事で褒められるようなことがあっても、自分はいつまでも「ちゃんとした社会人」になれていない気がしていた。

ラッシュ時間帯の駅のホーム

意外とみんなうまくいってない

そして今、私は社会人4年目になった。正直、新社会人になってから抱いている不安や不満は、未だに消えていない。

ひとつ変わったことといえば、そんな自分のやるせない気持ちに「まあ、こういうものなのかな」と折り合いがつけられるようになったことだ。

社会に出て仕事をしていると、意外とみんな、いろいろとうまくいっていないことに気づく。第一志望の会社に入ったあの子も、仕事ができる有能な先輩も上司も、すべて自分の思いどおりにできている人って、ほとんどいない。だけどみんな、その現実を受け入れて、なんとか自分の人生をよくしようとしているのだ。就活のときは、絶対に自分が望んだ場所でしか仕事をしたくない、それ以外はあり得ないと考えていたけど、その思い込みこそが自分を苦しめていたのだと気づいた。

社会人4年目で得た「ちょっとやわらかい思考」

何を目的に仕事をして、社会にどんな影響を与えていきたいか。それを常に考えながら100%自信を持って行動している人って、実はものすごく少ないんじゃないか。実際は、目の前にある自分がすべきことをやりながら、得意なことを見つけて、なるべくいいほう、なるべく正解に近いほうを目指している人が多いのではないかと考えるようになった。

そう思うと、自分が就活時期に感じていた悩みは、当然のことであって、そして無駄なことだったなと感じる。社会に出る以前の段階で、自分には何ができて、何を目的に働きたいか明確にわかっている人なんて少ない。なんなら、社会人になってもまだわからない人だって多いだろう。

なのに、就活の場では、それがさも当然にあるべきものとして扱われる。きっとみんなわかっていないから、自分自身の言葉ではなくマニュアルどおりの言葉を並べる。不安な気持ちを抱えていると、そんな取ってつけたような理由があまりにもキレイに聞こえてしまって、何も考えていないのは自分だけなのではないかと、どんどん自信がなくなっていくのだ。

WEBメディアにて業務中の筆者

今まで抱えていた「不安の正体」に気づくと、自分自身に感じるネガティブな感情も、「いろいろ考えてしまうのは仕方がないんだ」と、受け止められるようになった。ただ、そういう「ちょっとやわらかい思考」を習得したところで、就活に失敗した自分への嫌悪感はそう簡単には消えることはない。そのせいで気分が激しく落ち込んだりすることだっていまだにある。だけど、それもしょうがない。そういう気持ちにだって、自分のどこかで妥協をしていくしかないのだ。

そうやって、いろんなことを諦めて、受け入れていけば、私は、少しずつ“就活生”を抜け出し、自分なりの「一人前の社会人」になっていけるんじゃないかと思う。


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丸山 愛菜

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