「同期と飲んでたら売れない!」トガった後輩はただの変人だった<納言・薄幸の酔いどれコラム#13>


“笑い方が下品な奴”と“変人”のコンビが優勝

今年3回目となる、『ツギクル芸人グランプリ2022』。
同じ事務所の後輩ストレッチーズが優勝した。

ストレッチーズ(左:福島敏貴/右:高木貫太)

たまたまリアルタイムで観る事が出来たので、すぐに貫太におめでとうラインを送る事が出来た。
“おめでとう!”という文面を事前に入力しておいて、優勝が決まったその瞬間、本当に1秒の狂いもなく送信ボタンを押した。
あの時、私めちゃくちゃ暇だったのだ。

先輩である私がこんなどうでも良い事聞くのも変だから聞かないけど
“おめでとうライン私が一番早かったよね?”
貫太に会う度に、この質問を喉から外に出る寸前で、毎回飲み込んでいる。

エンジェル位優しい、トレンディエンジェルのたかしさんにも
「みゆきは事務所の後輩に興味無さすぎない?」
と指摘される程、私はほとんど事務所の後輩との付き合いが無い。

気軽に飲みに誘えるのは、ストレッチーズの貫太と、さすらいラビーの宇野(慎太郎)君位だ。
貫太は本当に器用で、ライブのMCがストレッチーズだと凄く安心する。
雰囲気にトゲが無いから、ツッコミも怖く見えない、不思議な魅力があると思う。

でも、私が思う貫太の一番好きな所は、ダントツで、笑い方がとっても下品な所だ。
周りは気付いてないかもしれないけど、貫太は笑い方がすっごい下品。

カッカッカッ!

とも違う。

ウッウッウッ!

とも違う。

文字で現すのが難しいのだけど、子供の大きめな咳みたいな笑い方をする。
これが、非常に良い。
毎回”うわ~! 笑い方きったね~!”と思いながら貫太と飲んでいる。
慶應出身だから、頭が良いのだろうけど、この下品な笑い方のおかげで、私は貫太の事を頭が悪い人だと思っている。
接しやすく、柔らかい印象を受けるのは下品な笑い方があるからだと思う。

ストレッチーズをテレビで観る機会があれば、こちらも笑っちゃう位、下品な笑い方をする貫太に注目して欲しい。


貫太とはちょくちょく飲みに行くが、福島君とは、記憶が正しければ3年程前に1回飲みに行ったきりだ。
でも、この1回の飲みは、大変思い出深い飲み会になった。

その日は確か、ライブ終わり。若手芸人10人程で飲んでいた。

私もテレビに少しづつ出られる様になったばかりで、周りの芸人も、まだまだテレビ露出は少なく、これからという若手ばかり。
飲み会スタートして1時間程経った頃。
目の前の席に座っていた福島君が、突然立ち上がり私に言った。

「みゆきさん! ここを抜けて先輩の所に行きましょう! 僕はこういう同世代と飲むより、もっと先輩とかと飲んだほうが良いと思うんです! 勉強にもなるし、仕事にも繋がるかもしれない!」

何だコイツ。

そう思った。
ちょっとトガり過ぎじゃないか?
福島君の圧に押される形で、私もその場を後にし、福島君が先輩に指定されたという店に2人で向かった。
店に向かう道中も福島君はずっと“上を目指すなら先輩と”みたいな話をずっとしてきた。

終始何だコイツ、と思っていた。
でも、確かに言っている事は分かる。同世代だけで飲むのは気も遣わないし、ただただ楽しい。
でも、楽しいだけで勉強になるかと言ったら、そうでは無い。
もっと上の先輩から話を聞いたり、技を盗むのも大切だと思う。

福島君は誰と約束したんだろうか。
事務所の先輩、もしかしたら有吉さんとかか?
福島君は上島さんとも仲が良いから上島さん?
店に着き、その先輩を待つ。
先輩が来たら何を聞こう。エピソードトークとかした方が良いのか。礼儀に厳しかったらどうしよう。

徐々にドキドキしてきた。

数分後

「お待たせー!」

現れた先輩は、新宿カウボーイのかねきよさんだった。
かねきよさん、かい。

新宿カウボーイ・かねきよ

もちろん、かねきよさんは尊敬している。
でも、福島君のあのテンションで、かねきよさんは、何か違くないか。
楽しい同世代飲み会抜け出させておいてのかねきよさんは、何と言うか、ちょっと変だよ。
結局かねきよさんとの飲み会も、楽しいだけだった。

福島君はトガってる訳じゃない。
変なだけだ。
変なだけなんだと知れた良い一日だった。

何はともあれ同じ事務所の後輩が活躍してくれるのは、本当に嬉しいし、沢山一緒に仕事が出来る日が楽しみだ。

ストレッチーズなら、絶対大丈夫。
もっともっと売れる。
もし、これを貫太が見ていたら聞きたい。

ツギクルのおめでとうライン、絶対私が一番早かったよね?

連載納言・薄幸の酔いどれコラムは、毎月1回の更新予定です。

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