『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』から生まれた“伝説の一日”【今、ラジオで活躍する中年パーソナリティ①】

2022.6.22
『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』

文=村上謙三久 編集=森田真規


1960年代後半に「若者向け」としてスタートした深夜ラジオだが、その代表的な番組『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)のパーソナリティ平均年齢は今や「37.3歳」。「真夜中に中年パーソナリティのトークを中年リスナーが聴く」というかたちが当たり前になりつつも、若いリスナーにとっても“中年ラジオ”は「ジェネレーションギャップがいい」という好意見が聞かれるという。

そんななかこの春、“中年ラジオ現象”の象徴的番組『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』で神回が生まれた。そのとき46歳のテレビプロデューサー・佐久間宣行は何を話し、リスナーたちの“伝説の一日”を呼び起こしたのか──。

ANNパーソナリティ平均年齢は「37.3歳」

日本で深夜ラジオが産声を上げたのは1960年代後半。当初から「若者向け」としてスタートした。聴取者層は高校生・大学生中心だったが、80年代には小学生・中学生にも広がり、リスナーの若年化が指摘されていたらしい。当時の若いリスナーからすると、パーソナリティは年上の「兄貴」であり「姉御」。例外はあるにせよ、基本的にリスナーもパーソナリティも数年経つと深夜ラジオから卒業し、中身は入れ代わっていった。

そんな状況が長らくつづいてきたが、ここ数年で大きな変化が起きている。深夜ラジオのパーソナリティが次々と入れ替わるかたちにネガティブな反応が増えた一方、長寿番組が増加。それに伴いパーソナリティの平均年齢も上がってきた。

『オールナイトニッポン』に限定して調べてみると、パーソナリティの平均年齢は最初期を除くと20代後半を推移してきたが、現在は「37.3歳」(1部、ANN0のみ)まで上昇。当然のことながら歴代最高年だ。TBSラジオの『JUNK』の場合はさらに高く「51.5歳」を記録。若いリスナーからすると、今や「兄貴・姉御」ではなく、「父親・母親」の世代になっている。深夜ラジオの歴史を考えると、前代未聞の状況にある。

以前、「テレ東P・佐久間宣行は中年深夜ラジオリスナーにとって最後の“兄貴”である」というコラムを書いたが、深夜ラジオから卒業せずに長年聴きつづける中年リスナーも増えていて、今やリスナー層の中心になりつつある。「真夜中に中年パーソナリティのトークを中年リスナーが聴く」というかたちが当たり前になった。

しがないオッサンリスナーとしては、「理解できない中年トークばかりで、若いリスナーはジェネレーションギャップを感じて呆れているのでは?」「自分たちは彼らがラジオを楽しむジャマになっているのでは?」と誠に勝手ながらうしろめたさを感じていた。

しかし、実際に若いリスナーに話を聞くと、どうやらまったく違う状況らしく、「理解できないからいい」「ジェネレーションギャップがいい」という意見をよく耳にする。短時間で効率的に消化できるコンテンツが歓迎されるなか、反対に時間をかけてじっくりと楽しむラジオの魅力もフィーチャーされているのかもしれない。

愛娘フリートークから生まれた『佐久間宣行のANN0』神回

そんな“中年ラジオ現象”の象徴的存在が佐久間宣行である。ANN55年の歴史において、40代以上で1部・2部(ANN0)のレギュラーパーソナリティに就任したのは糸居五郎、石井和義(正道会館館長)、春風亭昇太などわずか数人のみ。それだけでも佐久間は希有な存在なのがわかる。

『佐久間宣行のANN0』でこの春、番組の魅力が詰まった神回が生まれた。神回という言葉から連想されるのは、「大物の乱入」「ゲストとの思いも寄らない化学反応」「パーソナリティの衝撃告白」などとにかく刺激的な出来事だが、この回はまったくの無風状態。最初から最後までまごうことない通常回だった。特別じゃないからこそ生まれた今の時代らしい神回なのは間違いない。

現役のテレビプロデューサーとして、佐久間が番組制作現場の裏話や最新コンテンツを紹介するのが番組の大きな魅力のひとつだが、それ以上にリスナーの心を掴んでいるのは、中年の日常を切り取ったフリートークである。佐久間と家族……特にこの春に高校生になったばかりの愛娘が絡む話は、この番組の鉄板トークだ。佐久間はタレントではなく裏方のため、他のパーソナリティに比べて家族に関する話がしやすい状況も影響しているかもしれない。4月6日に放送されたこの回も娘に関するフリートークからすべては始まった──。

佐久間宣行の“伝説の一日”

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