『ドクター・ストレンジ』は日本なら『ドラえもん』?マルチバースによる“調整”の成否はサム・ライミの手腕次第か

2022.5.4

なぜ今、サム・ライミを起用したのか?

フェーズ4に入ってのMCUでは、かなり実験的な試みが行われている。

『ブラック・ウィドウ』の監督に抜擢されたケイト・ショートランドは、2012年の『さよなら、アドルフ』で、第二次世界戦においてドイツ敗北後、ナチスの両親を持つ子供たちが生き場を求めるという物語を描いており、これはブラック・ウィドウことナターシャの境遇と共通する部分があった。その中で疑似家族が描かれるなど、今までの大味アクションとしての印象が強かったMCUとは、かなり毛色の違った作品に仕上がっていた。

また『エターナルズ』のクロエ・ジャオも同様。『ノマドランド』で効果的に使用した自然による建造物を、いかに神秘的に見せるかという演出を持ち込んでいるのはもちろんのこと、MCUとしては初めてとなる明確な性描写のシーンがあり、オープン設定としては初めてとなる同性愛者や聴覚障害を持ったキャラクターを登場させたことにより、国や文化によって神々の形状が異なる部分を多様性によって表現してみせていたのだ。

そして『キャプテン・マーベル』の続編として2023年に公開が控えている『ザ・マーベルズ(原題)』の監督に抜擢されたのは、人種問題をシニカルな視点から切り込んだスリラー『キャンディマン』のニア・ダコスタである。『ザ・マーベルズ』でメインキャラクターとして活躍するモニカ・ランボーは黒人であり、同じく登場するミズ・マーベルはイスラム教徒という設定から、こちらも監督の作家性も踏まえて、多様性を描いた作品になりそうだ。

『ドクター・ストレンジMoM』のサム・ライミも、実は実験的な起用だといえる。2002年からスタートした『スパイダーマン』シリーズで知られる監督だが、当時は「『死霊のはらわた』なんかを撮るトンデモ監督が、ヒーロー映画を撮れるはずがない」と言われていたほど。

彼は『スパイダーマン』を撮る前に『マイティ・ソー』の映画化を企画していたこともあり、自身もマーベルのファンで、原作者のスタン・リーとは交友関係もあったことから、ヒーロー好きであることに間違いはないのだが、今回はヒーロー映画としての監督ではなく、トンデモ監督としての力量が求められた抜擢に思えるのだ。

「『死霊のはらわた』ファンが楽しめる作品になる」とケヴィン・ファイギが語っているのがその証拠。ちなみに1993年の『死霊のはらわたIII/キャプテン・スーパーマーケット』もマルチバースの物語。共通する部分は多いように感じられる。

どうして今、サム・ライミを起用したか、その意味を考えながら観てもらうと、より深く楽しめるはずだ。

『ドラえもん』『仮面ライダー』日本にもあるマルチバース作品

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
(C)Marvel Studios 2022

マルチバースは、DCコミックを原作とした作品群(スーパーマンやバットマンらが共闘する『ジャスティス・リーグ』など)も挑戦しているが、実は海外作品に限ったことではない。日本で代表的なマルチバース作品といえば『ドラえもん』の劇場版が正にそれだ。

それぞれが別世界の物語として描かれている(一部テレビスペシャルとつながるものもあるが)のも大前提として、ややこしいことに「もしもボックス」という、簡単にマルチバースを作り出す道具も存在している。1982年の『ドラえもん のび太の大魔境』では、助かった未来の自分たちが助けにくるという無限ループが発生していた。

スーパー戦隊や『仮面ライダー』、『ウルトラマン』も集合映画では、マルチバースを力業的に多用していることからも、私たち日本人も幼いころから、知らないうちにマルチバースには常に触れてきているのだ。

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
5月4日(祝・水)映画館にて公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C)Marvel Studios 2022

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