2022年3月4日にデビュー2周年を迎えた、11人組のグローバルボーイズグループ「JO1(ジェイオーワン)」。あだち充の同名短編集を原作に、彼らがそれぞれ1話ずつドラマ初主演を務めた『ショート・プログラム』が3月1日よりAmazon Prime Videoにて配信されている。
QJWebでは、このドラマの概要と見どころを記したレビューを1話ずつ掲載していく。第3回は、大平祥生が主演を務めた『スプリングコール』を紹介する。
ルックスとダンス、そのギャップでファンを魅了
『スプリングコール』に主演した大平祥生は、京都府出身の21歳。にこにこと笑顔を絶やさないチャーミングなルックスと、マイペースで大らかな性格の持ち主だが、がっしりとした体格と骨のあるダンススタイル、潔い決断力と行動力は、ファンにはたまらないギャップである。過去にはダンス留学のためアメリカに渡るなど、夢のリミットを20歳までと決め、青春時代をダンスに捧げた。
本人は「おもしろくなりたい」と語っているものの、ふとした彼の言動がグループでの笑いのきっかけになることも少なくない。一方パフォーマンスでは、立ち位置に限らず目を奪う、ステージングのうまさが持ち味。グループ随一の低音ボイスも魅力だ。
奥手な演劇サークルの部員をめぐる物語
『スプリングコール』で大平が演じるのは、自分の思いを主張することが苦手な大学生・新庄公平。公平が所属する演劇サークルの部室では、部長・赤堀が書いた台本の出来の悪さに部員たちが頭を抱えていた。公演まであと1カ月。大学最後の公演を妥協して終わりたくない谷村奈央は「新庄くんが思うおもしろいものを読んでみたい」と、公平に台本を書くように促す。公平が書き上げた台本は誰もが認める素晴らしさだったが、公平は赤堀に気を遣い、あっさりと身を引いてしまう。
ヒロイン・谷村奈央を演じるのは、2010年に女優デビューした矢作穂香。名匠・大林宣彦から直接オファーを受けた映画『花筐/HANAGATAMI』や『いなくなれ、群青』など、ジャンルを問わず幅広い作品に出演している。監督・脚本を担当したのは、2018年に『ばぁちゃんロード』の脚本で商業映画デビューした新進気鋭の上村奈帆。
役に入り込んで使い分けたさまざまな笑顔
気は優しくて力持ち。心に熱いものを秘めた人。『スプリングコール』は、そんな大平らしい魅力が詰まった作品だった。快活な奈央と控えめな公平とのやりとりはポップでテンポがよく、長身のはずの大平が、奈央の迫力の前にはちんまりと映るのもかわいらしい。メンバーカラーの黄色が随所に散りばめられたカラフルな世界観にも、大平の存在がマッチしていた。
印象的だったのは、物語の“起”ともいえる台本を書くシーン。ストーリーをひらめいた瞬間の決意の瞳、机に向かう真剣な表情、湧き出る喜びと苦悩、書き終えた達成感──くるくる変わる大平の表情が、公平の感情をありありと伝えてくる。
公平は何も考えていないのではなく、言わない、あるいは言えない青年だ。けれど苛立ちや言葉にならない主張は、無意識に表情や仕草に表れる。こうした「言わない」「言えない」公平の性格を、ディテールが自然に表現していた。しかし、赤堀のずるさに感情を抑えられなくなった公平。静かに込み上げる怒りと爆発は、芝居というチャレンジがなければきっと知ることのなかった、大平の新たな表現だった。
うれしそうな表情、微笑み、なんとなくまわりに合わせた苦笑いまで、笑顔もさまざま使い分けている。大平自身、笑顔が印象的な青年だが、本作で見せたのは「新庄公平」としての笑顔。奈央に“本当の自分”を吐露するときには「いつの間にか何も感じなくなった」という公平らしく、どこか作り物の笑顔のようにも思える。けれど奈央に思いを伝えたあとに見せたのは、ふいにこぼれたような自然で柔和な笑顔。自分を抑え込むのをやめ、変わろうと決めた公平はたくましく、ようやく奈央よりも大きく見えた。
公平の書いた脚本に合わせた告白の返事も、本作にみずみずしい余韻を残す。「もしもし」と応える公平の声は、落ち着きながらもどこか、期待を隠せていない。きっと、あの笑顔で電話を取ったのだろうと、そんな気がする。
【関連】JO1、ついに叶った初の有観客ライブ「僕らにはJAMがついているし、JAMには僕らがついている」
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JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』
配信開始日:2022年3月1日(火)よりAmazon Prime Videoにて独占配信中!
作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B09PQRYF97
出演:大平祥生、川尻蓮、川西拓実、木全翔也、金城碧海、河野純喜、佐藤景瑚、白岩瑠姫、鶴房汐恩、豆原一成、與那城奨ほか
原作:あだち充
脚本:山浦雅大、守口悠介ほか
監督:渡部亮平、菊地健雄、上村奈帆、土屋哲彦、益山貴司、森谷雄
プロデューサー:北橋悠佑、森谷雄、斎木綾乃
制作:アットムービー
製作:吉本興業
(c)あだち充・小学館/吉本興業
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1話読切の短編集。あだち充ならではの青春感や切なさがふんだんに注ぎ込まれた作品集を、JO1メンバー全員が主演を務め、世代を超えて、現代に生きる視聴者にも共感・共鳴できるドラマに仕上がった。
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