主演作『ゆく春』で鶴房汐恩が見せた新たな可能性【JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』レビュー】

2022.3.10
鶴房汐恩/『ゆく春』より

(c)あだち充・小学館/吉本興業
文=新 亜希子 編集=森田真規


2022年3月4日にデビュー2周年を迎えた、11人組のグローバルボーイズグループ「JO1(ジェイオーワン)」。あだち充の同名短編集を原作に、彼らがそれぞれ1話ずつドラマ初主演を務めた『ショート・プログラム』が3月1日よりAmazon Prime Videoにて順次配信されている。

QJWebでは、このドラマの概要と見どころを記したレビューを1話ずつ掲載していく。第2回は、鶴房汐恩が主演を務めた『ゆく春』を紹介する。

JO1主演『ショート・プログラム』30秒|Amazonプライムビデオ

独自の感性を持ったJO1のムードメーカー

『ゆく春』の主演・鶴房汐恩は、滋賀県出身の21歳。少年性を残した自由な言動と、独自の感性、奇抜な発想に注目が集まりがちだが、根はまじめで気配り屋、そして人想いだ。その優しい性格はもはや隠せておらず、同じく気配り屋のリーダー・與那城奨をさりげなくサポートする姿からもうかがえる。

JO1では主にラップを担当。鶴房のハスキーボイスはグループにおけるスパイスであり、歌えばとたんに甘い。その豪快な笑い声も、JO1に明るいムードをもたらしている。高校を中退して渡韓し、芸能の道を志したため、本作で高校生を経験できたことがうれしかったと語っている。

鶴房汐恩/『ゆく春』より
鶴房汐恩/『ゆく春』より

高校時代を回想した、みずみずしくも切ない青春物語

主演ドラマ『ゆく春』で鶴房が演じる上原謙司は、恋人の沙也加と共に、母校のラグビー部の試合観戦にやってきた。昨年までは全国大会に出場するほどの強豪だったラグビー部だが、この日の試合はさんざんなもの。ギャラリーもまばらな観客席に腰かけた謙司は、高校時代の同級生・坂本友見と目が合い、会釈する。謙司と友見、そして、今ここにはいない謙司の親友・北山春樹。3人が過ごしたみずみずしくも切ない高校時代の回想を軸に、物語は進んでいく。

ヒロイン・坂本友見を演じるのは、テレビドラマ『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』や『ホリミヤ』(共にTBS)での主演など、人気作への出演が相次ぐ久保田紗友。親友・北山春樹役の長田拓郎は映画『ブレイブ -群青戦記- 』などに出演、実年齢は32歳だが違和感なく高校生を演じている。監督・脚本は『3月のライオン』で脚本を手がけた渡部亮平が担当。

坂本友見と鶴房汐恩/『ゆく春』より
坂本友見と鶴房汐恩/『ゆく春』より

鶴房汐恩が見せた新たな可能性

ここまで“雰囲気”をまとえる人だとは。芝居というチャレンジを通して、鶴房は新たな可能性を大いに見せてくれた。作業着のポケットに手を突っ込み、車のキーを出す仕草、気だるそうに脚立に腰かける姿──ふとしたカットが絵になる。わずかに関西弁のイントネーションが残るものの、まるで気にならないほど、言葉よりも表情が語っていた。春樹との勝負に負けた瞬間や、春樹を思い出しながら母校の試合を見つめる瞳、セリフのないシーンほど鶴房は訴えかけてくる。

冒頭の沙也加とのやりとりは、些細だけれど印象的だ。「バイバイする?」「はいはい」と受け流す、どんと構えた懐の深い“彼氏”の姿は、等身大の青年。はっきりものを言いながらも、謙司という人の優しさが見える。

友見の前髪に言及する場面では、ときめいた人も多いのではないだろうか。よく似合う金髪も相まって、本当にマンガから出てきたようだ。「バカ正直でいつも損してるけど、本当はすげー優しい奴」春樹が語る謙司は、まさに鶴房そのものである。

「上原謙司だけは絶対に信用できる男」。そう言い切った春樹は、謙司がついた一世一代の嘘を信じただろうか。それとも、見抜いていたのだろうか。恋が成就した喜び、あるいは、親友が自分のためを思ってついた慣れない嘘──理由がどちらであっても、「世界一幸せだよな」、そう呟き、春樹が微笑んだことは事実。本作を観た者がそれぞれの解釈で、感じ取ればいいのだと思う。

春樹は友見が大好きだった。文字どおり、まわりが見えなくなるほどに。あの勝負に負けた日から、謙司にとって友見は「俺の親友が大好きだった子」。「俺が」でも「俺と親友が」でもなく。春樹のこと、友見のこと──どこにも行けずにいた謙司の想いが、堰を切ったように涙となってあふれ出す。誰とも分け合えずに抱えてきた過去を、何も知らない沙也加が優しく受け止めた。

『ゆく春』。さまざまな意味に取れるタイトルだ。春樹の名前の1文字、彼らが過ごした青い春──そして、それぞれが向かう新しい道、門出の春の意味でもあってほしいと願う。

『ショート・プログラム』ときめくキャラ紹介 上原謙司(演:鶴房汐恩)|Amazonプライムビデオ

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  • JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』 (c)あだち充・小学館/吉本興業

    JO1初主演ドラマ『ショート・プログラム』

    配信開始日:2022年3月1日(火)よりAmazon Prime Videoにて独占配信中!
    作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B09PQRYF97
    出演:大平祥生、川尻蓮、川西拓実、木全翔也、金城碧海、河野純喜、佐藤景瑚、白岩瑠姫、鶴房汐恩、豆原一成、與那城奨ほか
    原作:あだち充
    脚本:山浦雅大、守口悠介ほか
    監督:渡部亮平、菊地健雄、上村奈帆、土屋哲彦、益山貴司、森谷雄
    プロデューサー:北橋悠佑、森谷雄、斎木綾乃
    制作:アットムービー
    製作:吉本興業
    (c)あだち充・小学館/吉本興業

    1話読切の短編集。あだち充ならではの青春感や切なさがふんだんに注ぎ込まれた作品集を、JO1メンバー全員が主演を務め、世代を超えて、現代に生きる視聴者にも共感・共鳴できるドラマに仕上がった。


新 亜希子

Written by

新 亜希子

(しん・あきこ)エンタメ系ライター。音楽・アイドル・映画を中心に、インタビューやレポート、コラムやレビューを執筆。『シネマトゥデイ』『リアルサウンド』『日経エンタテインメント!』ほか。

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