東京03、最大の危機を超えて“このタイミングで”単独公演『拗らせてるね。』をやった理由

2022.1.12


「それでも仲よく3人でコントをすると決めた」

東京03、角田晃広(『クイック・ジャパン』vol.158より)

前述のとおり、『クイック・ジャパン』本誌では夏から秋にかけて東京03を取材させてもらってきた。そして最後に収録した「2021年締めくくり」座談会で、これまでの彼らのあり方を一変させる出来事がこの期間に起きていたことを飯塚の口から知らされた。本公演の肝となる豊本に関することなので合わせて確認してほしいが、ともかく驚きの内容であり、トリオが不仲になってもおかしくないような事件だった。取材時、「それでも仲よく3人でコントしていくって決めたんで」と飯塚は言い、ふたりは頷いた。

今回の一連のコントの前段となったのは、『第21回東京03単独公演「人間味風」』の特別追加公演『第7世代×東京03』で後輩たちと共に行った“私コント”だろう。私小説のように、本人が本人を演じるコントだ。同ライブではかが屋や空気階段、ハナコ自身がコントに昇華されていた。そして今度は東京03がその対象になったというわけだ。

03は、同僚同士、上司と部下、学生時代の友人、店員と客、あらゆるキャラクターを「飯塚(イイヅカ)」「角田(カクタ)」「豊本(トヨモト)」の名で演じてきた。本名で数多のコントをやりつづけてきた18年間がすべて前フリとなって、『拗らせてるね。』を観るうちに虚実の境目がどんどん曖昧になっていく。

20年以上にわたる付き合いを持ち、毎公演彼らにネタを書いてきたオークラ氏だからこの公演は成立させられた。本人であって本人でないキャラクターたちのコントは、本人たちを嫌というほど知っている第三者だからこそ書けたもののはずだ。

トリオの“危機”をコントとして描く必要性があった

東京03、豊本明長(『クイック・ジャパン』vol.158より)

東京03にとって2021年はさらなる躍進の年だった。初冠番組『東京03とスタア』(日本テレビ)や角田のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ)出演、各種CMなど、メディアで引っ張りだこの1年であったことは間違いない。にもかかわらず、多忙を極める年末の時期に書き下ろし公演を行った。

この公演がチャレンジングなものだったことは生配信時の様子からも窺える。スタートが押しただけでなく、序盤で配信トラブルが発生し、3人がその場でトークしてつなぐ“中説”めいた時間も存在した。ただしアーカイブではここはカットされており、生でしか観ることのできなかったくだりになっている。

これは東京03がこだわってきた“生のコントライブ”ゆえに生まれた出来事といえるかもしれない。言い回しひとつや舞台の見え方の細部までこだわりながら、その場の空気に合わせてアドリブを交えて臨機応変に変化する、ライブで培われた力がこうした場面でも発揮されているように感じた。

「新しいことをやっていかないと、この歳になって立ち止まったらそれで終わっちゃう気がするから、オークラが『こういうことやりたい』って新しいアイデアを出してくれたときに『ぜひやろう』って毎回なるんです」本公演の情報解禁直後に行った取材で飯塚が語った言葉だ。

2020年に行われたリモート単独『隔たってるね。』は当時多くの人が置かれていた物理的な隔たりを表していた。その隔たりを乗り越えて、どんなおもしろいことができるのかを東京03とオークラは表現してみせた。

毎年開催される単独ライブ全国ツアーが東京03にとっての核であり拠点であることは論を待たない。そしてそこに安住することなく進化していくという意志の現れが今回の公演であり、ゆえにそこではトリオに訪れた“危機”をコントとして描き切ってみせることが必要だった──と捉えるのは考え過ぎだろうか。

オークラも交えたアフタートークでは「(このやり方は)二度とできないね」という話があった。最初で最後の私コントになるのかもしれない。だが、飯塚が演じるイイヅカ、角田が演じるカクタ、豊本が演じるトヨモト、それぞれのキャラクターの可動域はこの『拗らせてるね。』を経てさらに拡張していくはずだ。単独ライブだけに留まらない東京03の躍進と、そのためのチャレンジを見届けていけるのは幸せなことだと感じる2時間弱だった。

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ライター_斎藤岬

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斎藤 岬

(さいとう・みさき)編集者・ライター。1986年神奈川県生まれ。編集担当書籍に「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」(サイゾー)など。「芸人芸人芸人」「月刊芸..