「言葉の素」を繊細に扱っている作品
もちろん『呪術廻戦』で描かれる戦闘は、お気楽なものではない。質(タイプ)は違うが『鬼滅の刃』同様、過酷であるのは間違いない。
だが、『鬼滅』に漂う「修行」の風情とは対照的に、『呪術』のそれには「練習」の趣がある。
どうやら、座学もあるにはあるようだが、この高等専門学校のポリシーは、実地訓練にあるらしい。つまりは、実戦主義。
自動車運転免許の教習所で言えば。
まずは、路上に出てみましょう。
というヤツだ。
助手席には教官が座っていて、いざというときはなんとかしてくれそうだ。
『呪術』の先生は「死ぬなよ」と言い残して去っていくので、もちろん、危険は危険なのだろうけど、なんとなく先生に見守られながら迎える実戦、という点は重要だと思う。いや、大変は大変なのだが、テストというよりは、遠征研修、もっと言えば「遠足」とか、「修学旅行」みたいな雰囲気がある。公式の「放課後」。
ちゃんと帰ってくるまでが遠足。
というか。あ、だから、先生は「死ぬなよ」とメッセージしたのか。
今回の映画の敵方が、先生の親友みたいで、そのあたりも、なんというか、妙な安心感がある。いや、敵、強いんだけど。残忍なんだけど。
先生の友達の胸を借ります的な。そんな悠長な話ではないのだが、遠征感も含め、いわゆるドキドキとは違う、ときめきがある。
作画や、制作会社のカラーの違いなども影響しているのだろうか。『鬼滅』がややソリッドで実直なのに対して、『呪術』は少しドレスダウンしててニュートラルなニュアンス。どちらも素敵。結婚するなら『鬼滅』、彼氏にするなら『呪術』。とか言ったら、怒られるかもしれないが。
まあ、ともかく。
戦闘と銭湯。
このふたつを無理なく両立させている様にはセンスと余裕を感じる。
今回の主人公が抱えているエピソードはとてもとてもシリアスだ。また、名家の落ちこぼれであるらしいメガネの女の子の背景もヘビーではある。が、おにぎりの具の名前しか口にしない(その理由は大事ではあるが)少年の存在や、どこからどう見てもパンダでしかないパンダのマイペースぶりが愛おしくて、重くならない。軽くはないが、重くならない=疲れない、絶妙のコーディネートである。4人の関係性も、すごくいい。
エンディングテーマのタイトルが「逆夢」。
映画のクライマックスでの決めゼリフは「純愛」。
この簡潔さが『呪術廻戦』の美徳である。
終始、言葉を大切にする世界観による1時間45分だった(だから、おにぎり少年は寡黙なのだ)が、言葉そのものより、人が言葉を口にする前の心持ち、つまり、「言葉の素」を繊細に扱っている作品だと感じた。
そこが、健やか。
たぶん、だから、疲れないのだ。
戦闘も健やか。
銭湯も健やか。
そういえば、おにぎりも、パンダも、白黒なのだなぁと、ぼんやり考えている、今(このふたりが好きなのだ、私は)。
さて、若者たちには、なんと伝えようか。
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