フレキシブルになるための実験室の趣
子供たちが「こわい!」と叫び、親たちが微笑む。この、ほとんど理屈を超えたピース=平和がもたらされたことは、ライブならではの幸福であった。
岩井秀人、森山未來、前野健太は誰がイニシアティブを取ることもなく、かといって、3人全員が主役、というような仰々しさもなく、入れ替わり立ち替わり、楽器を交換し、マルチなポジションで、役割を固定化せずに、それぞれの存在を循環させることのできる、生まれながらの運動体だった。
前野は音楽だけやっている人ではないし、森山も俳優と呼んでしまうとしっくりこないし、岩井は演劇というメディアに呪縛されていない。3人の才能の合作というよりは、さらにフレキシブルになるための実験室の趣が、いささかの前衛性も醸し出すことなく、伸びやかにそこには充満していた。
何かが押しつけられることのない、けれども、ヘンな時間が存在するという尊さ。
私たちには、パフォーミングアーツが必要だ。
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