岩井秀人×森山未來×前野健太『なむはむだはむLIVE!』“ヘンな時間が存在する”という尊さ

2021.12.15
なむはむだはむLIVE!

文=相田冬二 編集=森田真規


2021年12月から2022年1月にわたって日本映画専門チャンネルで放送される「特集 岩井秀人」。そして、12月18日のオールナイト一挙放送の最初にオンエアされるのがテレビ初放送となる『なむはむだはむLIVE!』だ。

「なむはむだはむ」とは、岩井秀人森山未來前野健太の3人によるユニット。これまで、ワークショップなどを通して子供たちが描く世界を基に楽曲を創ったり、『オドモTV』(Eテレ)にレギュラー出演するなどの活動を行ってきた。ここでは「特集 岩井秀人」の放送を記念して、7月10日に渋谷のライブハウス「WWW」で行われた『なむはむだはむLIVE!』のレポートをお届けする。

【関連】「特集 岩井秀人」で松尾スズキ、松たか子、瑛太ら出演の音楽劇『世界は一人』の放送が決定!


【なむはむだはむ】は、岩井秀人、森山未來、前野健太によるユニットである。

その活動と表現をひと言で申し伝えるのは難しいが、子供たちが記した文章(詩や物語のようなもの)を3人の解釈で楽曲化する、と、ひとまずは言えるかもしれない。

『なむはむだはむLIVE!』(2021年、音楽ライブ※編集版)
『なむはむだはむLIVE!』(2021年、音楽ライブ※編集版)

彼らはさまざまな土地に赴き、そこで子供たちから渡された作文(というには、あまりにも謎めいている。それらは不思議な小説でもあるし、世界でただひとつの呪文でもある)に取り組む。滞在しながら。つまり、彼らが子供たちにワークショップを行うというよりは、子供たちの創作物によって彼らがワークショップを体験している、というほうが正確かもしれない。

完成した楽曲は、原作者(オリジン)たる子供とその家族の前で披露される。小規模の、極めてプライベートな形式による、返還としての発表会。その模様は、いくつかのドキュメントとして映像が遺されている。

その【なむはむだはむ】(この名称自体、ある子供が創造した「おまじない」である)のライブが、夏に行われた。渋谷のライブハウス。密を避け、観客数限定の催しではあったが、独特の解放感に満ちあふれていた。親子連れが中心で、一番若い客は生後7カ月というから、恐れ入る。のどかな行楽地で、お花見でもしているかのようなピクニック気分。そこで、彼らは初めてのライブを開催した。

なむはむだはむLIVE!ポスターカット
『なむはむだはむLIVE!』は12月18日(土)21時から、日本映画専門チャンネルにてテレビ初オンエア

頭でっかちにならずに救済されるひと時

冒頭に、楽曲と記したが、いわゆる音楽だけの範疇に留まるものではない。曲は曲なのだが、時に寸劇でもあるし、時にハプニングアートでもある。

こちらの既成概念が、破壊されるのではなく、じんわりズラされ、ゆっくり脱がされ、いつの間にか更新されていく。日常と地続きにある、ヘンな時間。なんとなく始まっているし、なんとなく終わっている。だが、寂しさはなく、うれしさとおもしろさがとぐろを巻いている。で、心地よい。

『なむはむだはむLIVE!』(2021年、音楽ライブ※編集版)
『なむはむだはむLIVE!』(2021年、音楽ライブ※編集版)
『なむはむだはむLIVE!』より

擬音と息づかいだけで構成された楽曲に象徴的だが、彼らは、形のないものを、目に見えるもの、耳に聴こえるものとして、提示する。しかし、説明はしない。楽しむ方法へも誘導しない。つまり、観念的ではなく、身体的なのだ。だから、響いてくるものがあるし、私たちの感性が、案外素直であることに、ふと気づいたりする。その安堵と、健やかな発見。

ダンサーでもある森山未來の身体表現は、岩井秀人の主戦場である演劇がもともと有している身体性とゆるやかに結びつき、それを前野健太の身体に届く歌唱が抱擁することで、私たちの脳は解き放たれ、心は自由に呼吸し、カラダで、カラダのみで反応することになる。

森山未來/『なむはむだはむLIVE!』
森山未來/『なむはむだはむLIVE!』より
『なむはむだはむLIVE!』(2021年、音楽ライブ※編集版)
岩井秀人/『なむはむだはむLIVE!』より

もちろん、笑いがたくさんある。ヘンなものに出逢ったとき、人は笑わずにはいられない。それは拒否ではなく受容だ。受け取る、寛容な精神の表れとしての笑い。健全な笑いが、客席の至るところから漏れた。時に、哲学さえ感じさせる子供原作の楽曲群は、その底にあるものが深ければ深いほど、ほどけるように笑ってしまう。爆発的な笑いではない。気がゆるむ。その発露としての笑い。頭でっかちにならずに救済されるひと時。

『なむはむだはむLIVE!』(2021年、音楽ライブ※編集版)
前野健太/『なむはむだはむLIVE!』より

その一方で、「こわい!」という反応が、ちゃんと声となって、客席の子供たちから発せられたのも印象的だ。

【なむはむだはむ】の表現は、生きものの、あるいは、生命そのものの形態模写のようなところがあって、どこまでも具体的であるがゆえに、神経や感覚を揺さぶる瞬間がある。

フレキシブルになるための実験室の趣

この記事を気に入った方はサポートをお願いします。次回の記事作成に活用いたします。

この記事の画像(全13枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

相田冬二

Written by

相田冬二

(あいだ・とうじ)ライター、ノベライザー、映画批評家。2020年4月30日、Zoomトークイベント『相田冬二、映画×俳優を語る。』をスタート。国内の稀有な演じ手を毎回ひとりずつ取り上げ、縦横無尽に語っている。ジャズ的な即興による言葉のセッションは6時間以上に及ぶことも。2020年10月、著作『舞台上..

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太