自分で肋骨を折るほど気合いを入れる『M-1グランプリ』|納言・薄幸の酔いどれコラム#8

2021.11.30


『M-1』は“ずっと振られ続けてるけど、ずっと好きな片思いの相手”

『M-1』の季節、芸人は全員『M-1』の話をする。
ネタ仕上がってる?とか、誰が行きそう?とか。
本当に『M-1』の話以外しない位『M-1』の話ばかりする。

私にとってその季節は、一年の中で最も大切で、最もしんどい季節だ。
勝ちたいけど、どこで落ちるのかを考えると凄く怖い。
結果発表が出て、自分達の名前が無かった時の、あの悔しくて悲しい、屈辱的な思いをするのが、とても怖い。

納言で『M-1』に初めて出たのは2017年。
この年に納言を結成した。
安部にしつこくコンビを組んでくれと誘われ、断り切れずに組んだコンビ。
当時の私は少しやって無理だったら、すぐ解散しようと考えていた。
2017年の『M-1』は二回戦で落ちたけど、もしかしたら可能性が無くもないかな、解散するのは先延ばしにしようと思わせてくれたのが、その年の『M-1』だった。

2018年は、準々決勝まで行ってそこで敗退した。
それでも、『M-1』の「GYAO!」がきっかけで割とすぐテレビに呼んで貰えて、翌年にはテレビにもいくつか出させて貰える様になった。
決勝には行ってないけど、『M-1』きっかけでテレビに出られる様になったと言っても過言じゃない。

しかし、2019年2020年も、準々決勝で敗退。
毎年毎年ここで落ちる。
何度落ちてもやっぱり悔しくて悲しい。
正直、前に比べてテレビ等にも出られる様になったから、何年か前よりライブの本数もネタの本数も少なくなっていった。
強いネタも全然無い2021年、今年は出ない方が良いんではないか。
そんな風に考えていた。

その事を安部に伝えると
「そうですかー。僕は出たいですけどねー。でも僕がネタ作る訳じゃないですからねー。頑張るのは、小泉さんですからねー。僕は何も言えませんけど、出たいですけどねー」
小泉さんというのは私の本名という事は、一旦置いておいて。
何なんじゃコイツ!!何も言えませんってまあまあ言ってんだろ!!なめんな!!腹立つのー!!やってやんよ!!
勝手に安部に喧嘩を売られたと解釈した私は、結局今年も出場を決意した。

でも、今年もまた準々決勝で敗退。
今年の準々決勝は、酷くウケなかった。
ネタ開始20秒で“コレ、落ちてんな~”と思った。
落ちてんな~と思いながらの、その後の3分半強は、一周回って何か楽しかった。
多分準々出場者の中で一番落ちた。逆優勝。

それもそうだ。
今年の『M-1』はいつも以上にツメが甘過ぎた。
ネタも無く、ギリギリで新ネタを作ってやって、ライブもほとんど出られず挑んで、勝てる様な戦いでは無い。

でも、安部が出たいと言ってくれて良かった。
また今年も、あの「悔しくて悲しい思いをして、また出たい」という気持ちにさせてくれた。

私にとって『M-1』は、ずっと振られ続けてるけど、ずっと好きな片思いの相手みたいな存在。
いつか、必ず振り向かしてやろうと思う。

納言
肋骨経験4回ありの薄幸(右)と、相方・安部紀克(左)

連載納言・薄幸の酔いどれコラムは、毎月1回の更新予定です。


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薄幸(納言)

(すすき・みゆき)お笑い芸人。1993年生まれ、千葉県出身。安部紀克との男女コンビ「納言」のメンバー。「三茶の女は返事が小せえな」「渋谷はもうバイオハザードみてえな街だな」など“街ディス”ネタが人気のコンビ。バラエティでは薄幸のヘビースモーカーっぷりや大酒飲みのやさぐれキャラクターにも注目が集まって..