“裸のぺこぱ”が『芸人ラジオ』表紙を飾った理由「松井勇太と成田秀平という文字を表紙に!」
ぺこぱのふたりが爆笑する写真と「裸のぺこぱ」というキャッチコピーの表紙が目を引く『芸人ラジオVol.2』(スコラムック)が、2021年10月6日に刊行された。
この本の編集を手がけた村上謙三久氏は「中年しか登場しない」「新時代の後追い」「じゃないほう芸人」という3つの企画をもとにこの本の制作を進めつつ、「松井勇太と成田秀平という文字を表紙に載せたい!」という思いがふつふつと湧いてきたという──。
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『芸人ラジオVol.2』3つの企画案
編集(特に雑誌やムック本の制作)という仕事のおもしろさにも苦しさにも、“企画を考えること”がつきまとう。もしかすると、今この文章を読んでいる方は「取材相手なんていくらでもいる」「企画なんて簡単に思いつく」と考えるかもしれない。しかし、ひとりの編集者が思いつくアイデアなんてたかが知れているものだ。あっという間に底を突く。
コンセプトや切り口がしっかりしてなければ企画が実現しないことは多々あるし、それ以前に門前払いで断られる場合も少なくない。週刊誌や月刊誌の編集者となると、365日24時間、企画案に追われる状況で、息つく暇なんてない。個人的な経験でいうと、季刊誌でも数年経つと息切れし、まったく話が進まない地獄のような企画会議を重ねることになるものだ。
そういう意味でいうと、ラジオ本を手がける現在の私はとにかく気楽だ。次号の発売時期がまったく決まっていない不定期刊行物で、年に1~2冊のペースだから、中身を考える時間はいくらでもある。ひとり編集部だから会議で揉めることもないし、ライター兼任だからすべて自分で形にできる。当然、収入にはつながらないという大きな問題点はあるにせよ、編集者という仕事を思う存分に楽しめている気がする。
そんな恵まれた状況で、去年から本当に長い月日をかけて『芸人ラジオVol.2』の中身をボンヤリと練ってきた。とにかく時間だけはあったから、あれやこれや思いを巡らし、時にはツイッターで意見を呼びかけたり、知り合いのラジオリスナーにオススメ番組を聞いたりしつつ、今年の春先にはだいたい3つの企画案に落ち着いた。
1つ目は「中年しか登場しない」。前号は“芸人ラジオ新時代”を謳い一冊にまとめたから、今度は真逆で、OVER40のオッサン芸人しか取材しないのはおもしろいのではないかと考えた。
2つ目は直球の「新時代の後追い」。昨年に比べて、さらにお笑い芸人がラジオ番組を持つハードルが下がり、新しいかたちが生まれていた。そこを取り上げないわけにはいかない。
そして、3つ目は「じゃないほう芸人」。『芸人ラジオ』の前身である『お笑いラジオの時間』では、6年前に大谷ノブ彦(ダイノジ)、中川パラダイス(ウーマンラッシュアワー)、岩井勇気(ハライチ)を「じゃないほう芸人はラジオで活きる」という特集で取材していた。時間が経ち、新たな“じゃないほう芸人”がラジオで活躍している状況があったので、取材候補に事欠かない。この特集は絶対にできるだろうという手応えはあった。
「松井勇太と成田秀平という文字を表紙に載せたい!」
この3つの企画をまとめて一冊にするとして、じゃあ、誰を表紙にするか。だいたい本の制作期間は現実逃避として次の企画を考える場合が多い。6月に発売した『別冊声優ラジオの時間 ラジオ偏愛声優読本』の制作過程が佳境に入ったころ、ずっと今回の『芸人ラジオVol.2』をどうするのかばかり考えていた。
いろんな案が頭をよぎっては消え、よぎっては消えを繰り返すなか、突然、湧き上がってきた欲求が「松井勇太と成田秀平という文字を表紙に載せたい!」という思いだった。ただの思いつきだったと言っても過言ではないが、とにかく心が惹かれたのだ。閃いたあとは、これはけっこういいアイデアなんじゃないかと思うようになった。
ぺこぱは、この春から『オールナイトニッポンX(クロス)』(ニッポン放送)のパーソナリティになった。初期から松陰寺太勇とシュウペイではなく、本名の松井勇太と成田秀平を名乗って番組に臨むようになっていた。それをリスナーとして聴いていて、ずっと頭に引っかかっていたのだ。
実はぺこぱにはもっと前からつながりがあった。それは1年前に『芸人ラジオ』初号を作ったときのこと。当時、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送で単発特番を放送したぺこぱに取材オファーをしていたのである。個人的にはどの特番もおもしろく、3局からドラフト指名が入ったような印象を勝手に受けていた。
しかし、「特番をやっただけなので、話せることは少ないので、もしレギュラーが決まったらお願いします」と丁寧な返信があり、実現には至らなかったので、今回取材するのはとてもいいタイミングではと思った。そんな流れがあって、今回のぺこぱ取材は実現している。
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