『呪術廻戦』14巻は完全に病み巻!人気キャラを平気で退場させる展開、本当に大丈夫なんですか?


次に死んだのは…?

伏黒恵(ふしぐろ・めぐみ)VS重面春太(しげも・はるた)。連戦でバテ切っている恵は、「布瑠部由良由良(ふるべゆらゆら)で、まだ誰も調伏したことのない式神・八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)を呼び出して共倒れを狙う。

ようするに、式神を従えるにはいったん召喚してそいつを倒すことによって契約が成立するのだが、恵はまったく勝ち目のない式神を、重面とふたりがかりという形式で呼び出してしまった。恵VS重面の局面から、恵&重面VS式神という局面に無理やり変えてしまったのだ。

そして呼び出したのが名前からして強そうな八握剣異戒神将魔虚羅(やつかのつるぎいかいしんしょうまこら)。相手にも自分にも絶望を与える超捨身技を仕掛けた恵は、魔虚羅(略称、まこら)の一撃で瀕死状態に。そこに恵を気に入ってる宿儺(理由はわかっていない)が駆けつけ、宿儺VS魔虚羅という大物対決が実現する。

究極の後出しジャンケン。魔虚羅の能力を宿儺はそう表現した。魔虚羅は、一度食らった全ての攻撃に対して耐性を獲得し、さらにその傷を回復、さらにさらに相手の弱点に合わせた性質の攻撃をするというとんでもない能力を持っていた。まさにチート、バランスブレーカー、ぶっ壊れ性能…ゲームだったら攻略不可な最強のキャラクターだ。

だが、チートなのは宿儺も一緒だ。領域展開「伏魔御厨子」(ふくまみづし)で、斬撃を絶え間なく浴びせつづけ、立ち上がる魔虚羅にトドメの術式「閉」(フーガ)を浴びせておしまい。チートがチートを呼ぶ展開で、誰がどうやって倒すんだよ…という疑問を置き去りに、どんどんインフレが加速していく。

そんなド迫力の戦いを目の当たりにした重面は、生き延びたことに安堵。重面の能力は、日常の小さな奇跡(例えば、デジタル時計でゾロ目を偶然見る)を溜め込むことで、大きな命の危機から脱却するというものだと判明する。

しかし、喜びも束の間、宿儺の気まぐれな一撃で身体を前後真っぷたつにされてしまう。少年漫画としては、能力説明の次のひとコマで死ぬという斬新な最後を遂げる。

『呪術廻戦』<14巻>芥見下々/集英社(107〜115話) 『呪術廻戦』<13巻>芥見下々/集英社(116〜124話)
『呪術廻戦』<14巻>芥見下々/集英社(107〜115話)

読者が信じられなかった展開

どこの人気ランキングでも上位に位置するのが、一級呪術師の七海建人(ななみ・けんと)だ。前巻で漏瑚、陀艮(だごん)、真人(まひと)を相手にした七海は、生死不明の状態となっていた。

そんな七海が今巻で復活する。半身がグチャグチャになりながら、マレーシアのクアンタンで優雅な生活をする未来を妄想。意識を朦朧とさせながら、大量の呪霊に立ち向かっていく。しかし、全てを祓い終えた七海を、真人が待ち伏せていた。真人は、わざわざ虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)の到着を待ち、目の前で七海を爆死させる。

七海の死は過去イチの衝撃だった。魂ごと体が爆発しているにもかかわらず、いまだに「七海生存説」が流れるほど、現実を受け入れられない読者は多い。

死の間際に七海の葛藤があった。死んだ後輩呪術師の灰原(はいばら)の幻影を見る。灰原は若き虎杖に全てを託そうと提案するが、七海は「それは呪いになる」と拒否。呪術師の苦悩を知り尽くす七海は、虎杖が自分の言葉に囚われて生きることを心配したのだ。

だが、それでもあふれる思いを止められない。爆死の瞬間、七海は目を合わせた虎杖に「あとは頼みます」と気持ちを託してしまう。冷静で、完璧で、大人な七海が最後に見せた弱さ。この言葉を受け取った虎杖は、激昂して真人に立ち向かった。

憎たらしい、本当に憎たらしい

憎たらしい。過去の連載(3巻)でも真人の胸クソっぷりを書き殴ったが、今回の真人も本当に憎たらしい。手の一部を変化させ、真人が殺した虎杖の友人・順平(じゅんぺい)の人形を作って、それをもう一方の手で刺す。こっちは七海だけでも受け止めきれないのに、過去の順平まで掘り返してきやがるのだ。

死ぬほど憎たらしい真人は触れた魂と肉体を変化させる「無為転変」(むいてんぺん)で、一般人を囮に虎杖を誘導したり、予め用意していた改造人間を使用するなど、命を弄ぶように戦う。

真人がただの胸クソキャラで終わらないのは、能力の使い方に工夫をするから。他の誰よりも予測不能な動きを見せ、異能力系バトル漫画を真正面からしているからだ。悔しいことに、戦いの変幻自在っぷりは、作中屈指と言える。

一方では、釘崎野薔薇(くぎさき・のばら)が真人の分身と対峙する。分身は本体のように「無為転変」を使えないことを見抜いた野薔薇は、分身を通して本体の魂にダメージを与える「共鳴り」で、分身ごと本体を追い詰める。

久しぶりの野薔薇活躍に胸が躍る。が、真人は逃げ出したフリして本体と分身を入れ替える。それに気づかない野薔薇は、真人の攻撃をモロに浴びてしまう。その瞬間、野薔薇の不穏な回想に突入し、14巻は幕を閉じる。

14巻は病み巻だ。七海、漏瑚、重面(は別にいいとしても)につづいて野薔薇まで死んでしまったら、もうおしまいだ。作者の芥見下々に「本当に大丈夫ですか?」と問いたくなってくる。「渋谷事変」もクライマックスに突入するが、早いところ全てのストレスを浄化させるカタルシス展開が欲しいところだ。

『劇場版 呪術廻戦 0』特報【12月24日(金)公開】

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