悪党たちの最期
チャヨンは一命を取りとめ、ハンソクは逃亡した。知らせを聞いたクムガ・プラザの面々の闘志は燃えたぎっている。そんななか、ヴィンチェンツォは「ギロチン・ファイル」を安保情報院のアン・ギソク(イム・チョルス)に渡す。「正義のために使います」と感激するアンくんだが、ヴィンチェンツォは「敵を潰すために使ってほしい」と釘を刺す。
「悪党として言う。最も恐ろしくない敵は、正義を語るだけの政治家や官僚だ。たくさん叫んでも正義は増えない。最も恐ろしい敵は他にいる。みかじめ料が高いとバット(※字幕ではバッド)を持って俺の家の前に立つピザ職人だ。覚えておいて」
急にイタリアンなたとえが登場したが、これはヴィンチェンツォがイタリアでマフィアのコンシリエーレをやっていたときの経験則だろう。正義を語る輩より、生活に困って腹を決めた連中のほうが怖いという意味だ。これはクムガ・プラザの人々にも共通する。
悪党どもが最期を迎えるときがやってきた。まずはハン・スンヒョク地検長(チョ・ハンチョル)。小心でどこか憎めない人物だったが、悪事の片棒をかつぎ、弱者を踏みにじって甘い汁を吸いつづけてきた。ヴィンチェンツォには命を助けると言われていたが、裏切りを感じていたハンソクの手下に殺害される。裁判所の前で鮮烈な死に様を見せるのは、大手法律事務所の所長を長く務めてきた彼にふさわしい。
ヴィンチェンツォによる審判が下されるのは、悪徳弁護士のチェ・ミョンヒ(キム・ヨジン)だ。「ビールよりダンスが好きだろ。踊らせてやる。思う存分な」。ミョンヒが目を覚ますと、そこは廃工場の中。両足を傷つけて立てないようにしてから、頭からガソリンを浴びせて火を放つ。ミョンヒはあまりの熱さに立ち上がって死のダンスを踊りながら焼け死ぬという寸法だ。まさに炎のズンバ。
ミョンヒを演じたキム・ヨジンは大ヒットドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』などで知られるお茶の間のスター。『梨泰院クラス』で演じたチョ・イソの母親役のように、癖の強い役を多く演じてきた彼女にとっても、ミョンヒは難役だったという。悪女といえば強い魅力を兼ね備えているか、視聴者が共感するような悪に転落した理由を持っているものだが、ミョンヒはそれがなかったため、逆に欲を捨てて演じることでミョンヒの人生を表現したという(『スポーツソウル』5月2日)。
現場では後輩たちの演技をカバーすることに徹していたキム・ヨジン。死に際のシーンでは、出番が終わったハンソ役のクァク・ドンヨンがわざわざ挨拶に来ていたのだから、彼女の人望がよくわかる。最後の挨拶は「わたしのことを嫌ってくれてありがとうございました」だった。
ハン地検長を演じたチョ・ハンチョル(右)のインスタグラムより。現場で柔らかい表情を見せるキム・ヨジン
ハンソクと“贖罪の槍”
ハンソクが雇った男たちを叩きのめすクムガ・プラザの面々。質屋のイ社長(ヤン・ギョンウォン)が逃げようとするハンソクを絞め上げるが、逆にナイフで刺されてしまう! イ社長の出血がすごい。死なないで……! やってきたヴィンチェンツォに生まれてくる娘のことを伝えて「きっと守ってくださいね」と言うのは、自分は守ってやれない裏返し。
そんなとき、パク・ソクド(キム・ヨンウン)の意外な経歴が明らかになる。「俺は元看護師だ。白衣の天使だった!」。たしかに第19話で「クムガ洞の白衣の天使」と書いてあった。泣けたり笑ったり忙しい『ヴィンチェンツォ』らしいシーンだった。
ついにハンソクの最期のときがやってきた。血まみれで椅子に縛られているハンソクにはドリルが向けられている。ロシアのマフィアに教えられた「“コピヨー・イスクゥプリエーニャ”(贖罪の槍)」という装置で、5分ごとに5ミリずつ贖罪の槍が胸を突き刺し、1日かけて激痛を味わいながら死ぬというものだ。「俺を生かすことはできるだろ」と命乞いをするハンソクに、「確かにできるけど、生かす必要がない」と冷酷に答えるヴィンチェンツォ。やがてハンソクは朝陽を浴びてカラスに肉をついばまれながら絶命する。主人公の拷問で虐殺される大悪党も珍しいと思う。
こうして、すべては終わり、ヴィンチェンツォはチャヨンたちに見送られて国外へと去っていった。ヴィンチェンツォとバベルグループの戦いはしばらく前に決しており、ラスト2話は「どうやって審判を下すか(殺すか)」に焦点が絞られていたように思う。それほどまでに“悪の力”は凄まじかった。1カ月後、チャヨンは訪れたブドウ畑の土を踏みしめるが、きっとハンソクとミンチェが肥料になっていたのだろう。
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