覆面レスラーが放送枠を自腹で買い取り!?自主制作完パケ納品型のラジオ番組『スーパー・ササダンゴ・マシンのチェ・ジバラ』とは?

2021.8.22

ラジオ界でフィーチャーされつつある“自腹”

そんなバカバカしい内容でも、虚実入り乱れたなかからシビアなラジオ界の現状が浮き彫りになっているのが興味深い点。コロナ禍でラジオの重要性がフィーチャーされる一方で、全体の聴取率はなかなか復活せず、広告費の面でも苦境がつづいており、ラジオ界でも“自腹”はフィーチャーされつつある。

メジャーなタレントがパーソナリティを務める『オールナイトニッポン』でも、イベント(配信を含む)やグッズ展開が活発化。『三四郎のオールナイトニッポン0(ZERO)』では有料ファンクラブも立ち上がり、広告以外の収益化が一気に進んでいる。YouTubeでのラジオ配信が増えているのも、放送局を通さずに独自に収益を生む考えが広がっていることの表れ。声優界ではスポンサーがいないラジオコンテンツが今や当たり前になっている。

東野幸治は地上波での新番組が流れてしまい、自らYouTubeで番組を立ち上げ、そこからスポンサーを掴んで『東野幸治のホンモノラジオ』をスタートさせた。髭男爵・山田ルイ53世は、文化放送で収録しながらも、文化放送では長期間オンエアされないという状況のなか、地方の肉屋からの現物支給という異例の支援を受けて、しぶとく生き残り、その後、スポンサーをゲットして今も番組を継続している。こうした現在進行系のリアルは『チェ・ジバラ』にも反映されている。

系列局とはいえ、BSNとTBSラジオの番組を連動させているのもおもしろい点。局の垣根を越えて番組が絡んでいくのは、深夜ラジオを中心に最近増えてきた現象だ。ラジコプレミアムによるエリアフリー機能の影響で、主要局と地方局の関わりも増えており、特に爆笑問題の太田光が『JUNK 爆笑問題カーボーイ』や『爆笑問題の日曜サンデー』で地方局の話題をよく口にしている。

『チェ・ジバラ』では、主要局と地方局の波代の違いなどから、ラジオ界の地域格差も浮き彫りになっている。番組側はそんなことを意図していないだろうが、ラジオマニアとしては聞き逃せない部分だ。

収録後、番組ステッカーの発送作業をするササダンゴ・マシン

時代の革命家、スーパー・ササダンゴ・マシン

“地方発”というのは今のラジオ界にとってひとつのキーワードとなっているが、プロレス界は以前からローカル団体、ご当地レスラーなどが多く、「メジャーvsインディー」「東京vs地方」という図式が昔からあるため、ササダンゴ・マシンのアイデアも今のラジオ界とリンクしやすいかもしれない。

以前、DDTプロレスでは『オールナイトニッポンGOLDパーソナリティ権争奪バトルロイヤル』を行った例もあるが、さっそくササダンゴ・マシンはラジオとプロレスの刺激的なコラボに向けて動いているようだ。

『チェ・ジバラ』収録スタジオにて

プロレスとラジオのつながりはそれほど深くなく、地上波でラジオ番組を持っているレスラーは、モハメド ヨネ、春日萌花など数えるほどしかおらず、情報番組もいくつかある程度だ。しかし、最近は減ったものの、40代以上の男性パーソナリティが熱っぽくプロレスについて語ることは散発的に発生している。

そして、何よりラジオ×プロレスで大事件を起こした過去がある。『ビートたけしのオールナイトニッポン』内の企画から生まれたたけしプロレス軍団が、1987年12月に新日本プロレスの両国国技館大会に参戦したが、対戦カードの変更などが混乱を呼び、場内で暴動が発生。リング上には物が投げ込まれ、会場設備の一部が破損した事件があった。これは30年以上前の極端な例だが、プロレス×ラジオは、実は爆発的な話題を呼び起こす無限の可能性があるのだ。

ササダンゴ・マシンが手がける『まっする』は、リングという狭い空間で、虚実交えて、さまざまなものを表現してきた。ラジオは音だけのメディア。そこに地方発信という要素も加わるのだから、リングよりもさらに限定的な舞台になる。だが、ラジオ好き&プロレス好きとしては、そんな状況はササダンゴ・マシンにピッタリ合うような気がする。

新潟発の自腹ローカル番組が、放送内の冗談でもあったように、TBSラジオで放送される未来がやってくるかもしれない。もちろん、過去無数にあったラジオ番組のように、業界の厳しい波に飲まれて、改編を突破できないこともあり得る。ササダンゴ・マシン自身が飽きてシレッと終わる場合だって考えられる。しかし、すべての可能性を踏まえた上で、前代未聞のこの番組を楽しまない手はない。私たちはとんでもないパーソナリティが誕生し、革命を起こす過程に立ち合っているかもしれないのだ。

スーパー・ササダンゴ・マシンによる独占コメント

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