なぜ日本で「タイBLドラマ」が大ヒットしたのか。今観ておくべき名作3選

2021.8.8
タイBLドラマ

文=ひらりさ 編集=高橋千里


気になってはいるけどまだよく知らない、という人も多い「タイBLドラマ」。エンタメ・オタク文化に詳しい編集者・ライターのひらりさ氏によると、タイBLドラマが日本でも流行したのには理由があるという。主な人気作品を紹介しながら、ブームの変遷を解説する。


日本で育まれてきた「BLを実写で楽しむ」土壌

ここ1〜2年、テレビや雑誌などで「ボーイズラブ」の文字を目にすることが格段に増えた。15年ほど、商業ボーイズラブ小説、漫画、そのメディアミックスを定点観測してきた身としては驚くべきことだ。

2018年にテレビ朝日で放送されたドラマシリーズ『おっさんずラブ』の大ヒットは記憶に新しい。

2019年には、『おっさんずラブ』第2シリーズの放送のほか、BL漫画出身であるよしながふみがゲイカップルの生活を軸に描いた『きのう何食べた?』の実写ドラマ化、さらに2000年代の名作『窮鼠はチーズの夢を見る』の実写映画化発表などがあった。

世間に「BLを実写で楽しむ」土壌が徐々に育まれていた2020年、それはやってきた。

タイBLドラマの爆発的ブームだ。

『2gether』が日本でも人気を集めた理由

旋風を巻き起こしたのは、2020年2月に始まった学園ラブコメBL『2gether』。タイでのオンエアと同時にYouTubeで同時配信された本作が、日本でも視聴者を獲得したのだ。

2gether

音声はタイ語のみなのだが、ファンによる字幕(ファンサブ)が各国語でつけられることで、非タイ語話者も作品を楽しむことができた。

世界的に見ても、ドラマ自体のハッシュタグがツイッターのトレンド1位を獲得しただけでなく、主演俳優である、ブライト(ワチラウィット・チワアリー)、ウィン(メータウィン・オーパッイアムカジョーン)のインスタグラムフォロワー数は爆発的に伸長し、ブライト785万人、ウィン586万人となっている(2021年8月7日現在)。

2gether

制作は、タイの大手テレビ局であり、タレントのエージェントも行うGMMTV。ブライト、ウィンも同社のマネジメントを受けており、ドラマのプロモーションではいつもふたりセットで露出していた。

新人俳優であるふたりの、作品キャラクターの関係性もうっすら想起させる仲睦まじいコミュニケーションも、ファンの熱烈な人気に貢献した。

GMMTVは2014年に放送された『Love Sick』以降、数々のBLドラマを手がけてきたが、本作はコロナ禍に伴うステイホーム需要もあり、大ヒットしたという流れだ。

日本人ファンによる「タイBLドラマ」沼の布教画像やブログエントリーなども盛り上がり、『2gether』以外の作品やその主演俳優のファンコミュニティが活発化したりもした。


同性愛当事者の葛藤に向き合う側面も

さらにつけ加えると、タイBLドラマは、ステレオタイプなBL的描写を含みつつも、現実の同性愛当事者が直面する葛藤に対して、向き合い寄り添うようなストーリー展開で支持されている側面もある。

同性への片思いに苦しむ主人公を見守る友人たちの姿勢が優しい『Theory of Love』や、2組のカップルを描く中で家族へのカミングアウトに焦点を当てた『Dark Blue Kiss』、転生したカップルを通して現実社会の変化を見せる『Until We Meet Again』など。

『Theory of Love/セオリー・オブ・ラブ』

日本でも女性のBLファンだけでなく、ゲイ当事者のタイBLファンが少なくない(一応、BL小説・漫画愛読者として補足すると、日本の作品にも古くからゲイ当事者のファンはおり、また以前よりも、ステレオタイプな描写を避け、社会の実情を汲み取るような作品も見受けられる)。

2021年、タイBLドラマの今

ファンの熱い愛が盛り上げてきた、日本のタイBLドラマ沼。2021年現在、インターネットを見渡すと、ブーム自体は落ち着いてきた印象だ。

ジャンルが商業的に注目された結果、ライセンスを獲得した日本企業が、契約面での理由などから、ジオブロック(YouTubeに上がっている動画について日本からの視聴に制限をかけること)に踏み切ることが増えた。

これにより無料視聴による新規ファンの流入が起こりづらくなったのが、鎮静化の一因というファンも多い。

とはいえVOD配信プラットフォームに作品が加わったり、地上波で放送されたりすることで、BLドラマに出会えた視聴者もいるだろう。

最後に、日本でも観ることができる3つのおすすめ作品を紹介する。

『2gether』
「女の子にモテたい!」という気持ちを持って大学に入学したのに、同じ大学の同性からアプローチされまくっているタイン。彼がとっさに助けを求めたのは、学校一のモテ男である、サラワットだった。初々しいふたりの、偽装恋愛から始まる学園ラブストーリー。

『Dark Blue Kiss』
家庭環境の違いからすれ違うピートとカオ。性格や生き方が相容れないサンとモーク。2組のカップルが心を通じ合わせ成長する過程を描きながら、家族愛や友情、社会の差別、持つ者と持たざる者といったテーマを浮き彫りにするシリーズ。

『Until Meet Again』
交際について父親たちからの猛反対を受けて、非業の心中を遂げた恋人同士のコーンとイン。30年後、ふたりの生まれ変わりであるパームとディーンは大学で出会い、お互いに特別な存在であることに気づく。時代を超えて社会の変化を描く傑作。

以上3作品、すべてU-NEXTで視聴できる。まだ観たことがない方も、夏休みを利用して、ぜひタイBLドラマ沼に手を出してみてはいかがだろうか。

(c)GMMTV Company Limited (c)GMM TV Co., Ltd., All rights reserved


この記事の画像(全3枚)




関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

ひらりさ

Written by

ひらりさ

ライター・編集者。1989年、東京都生まれ。女性、お金、消費、オタク文化などのテーマで取材・執筆をしている。女性4人によるユニット「劇団雌猫」名義での共同編著に、『浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太