ショボいポップス?DIY歌謡曲?これを読めばすべてが分かる“tiny pop”入門

2020.1.27

NNMIE「地平線を抱きしめて」(2019年)

最後は、mukuchiが音楽活動を始めるきっかけになった作家でもあるNNMIEの「地平線を抱きしめて」。「んミィバンド」としてライブも行っている彼は、2019年7月にソロアルバムの『Growing Fainter』を、9月にバンドとしてのアルバムである『知らないパレード』を発表しており、この曲は前者に収められている(後者ではバンドバージョンを聴くことができる)。

この「地平線を抱きしめて」は、NNMIEのリズムの冒険と、すぐれたメロディメイカーとしての才を端的に伝えている1曲だ。「ひかりのうた」や「Whisper Of The Heart」など、NNMIEが書いた曲を聴いていると、得も言われぬ情感が胸の内から込み上げてくる。安っぽい言い方をすれば、とても切ない。切なく、今にも壊れそうな繊細さに胸を打たれる。

はんてんによるカバーも、この曲のポップソングとしての魅力を見事に捉えているので、ぜひ聴いてみてほしい。


フォークソングめいたJ-POPや骨抜きとなったシティポップリバイバルに馴染めない者たちのための、別の選択肢としてのポップスがここにはある。が、ポップスであること以外にほとんど共通項のないこのショボいポップスたちに“tiny pop”という名前を与えてしまうことは、ある意味で暴力的だと言える。また、すぐに陳腐化してしまう恐れもある。作家たちにとっては、迷惑なレッテルでしかないかもしれない。名前を持たないものを名付けてしまうこと、名付け得ぬものに名前を与えてしまうこと……。その危うさは、確実に何かを毀損する。

しかし、幸か不幸か、名前は与えられてしまった。それによって包括的になり、解釈も広がりつつある。たとえばデンシノオト(『tiny pop - here’s that tiny days』レビュー)と岡村詩野(「アルバム『タイニー・ポップ』が伝える未来のポップス」)のふたりは、『tiny pop - here’s that tiny days』評において、ピチカート・ファイヴの『カップルズ』(1987年)を引き合いに出している。

過去の音楽にtiny popを見つけ出し、それをすくい上げることは、歴史やアーカイブへの新たな視座を用意するだろう。またこのコンピに参加しているSNJOは、クラブの音響と鳴りを強く意識したプロデューサーで、彼のハイファイな音楽にショボさはない。このように、“tiny pop”という名前から導き出される小さな、しかし新しい可能性に今はベットしたいと、私は思っている。

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天野龍太郎

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天野龍太郎

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