当事者が見る『スタートアップ:夢の扉』
ジヘさんがスタートアップの業界に足を踏み入れたのは、8年前。大学在学中のころだった。世界最貧国のひとつ、東アフリカのブルンジ共和国を訪れて衝撃を受け、現地の子供たちに絵本を配りたいと当初はNPOを設立した。その後、よりサステイナブルな支援方法を模索し、ビジネスを通じて社会課題を解決したいと起業をした。2回の起業を経たのちに、コーチとしてunderdogs.に加わり、3年になる。
かつてはダルミ、現在はジピョンのような立場を担うようになったジヘさん。彼女は『スタートアップ:夢の扉』をどう見たのか。
「キラキラし過ぎていて、現実とは乖離していますね。ダルミたちのように、トントン拍子には進みません」と、まずはバッサリ。その一方で、「でもこの業界を知らない韓国の人たちにとっては、スタートアップを理解するいい機会になったんじゃないかな、とも思っています」とも。
あることがきっかけとなり、ダルミたちは視覚障害者向けのサービスを事業の核に据えることになるのだが、スタートアップに社会的価値の創出がより求められるようになっているのも、昨今の流れだという。
「スタートアップとソーシャルセクターの距離が縮まり、重なる部分が大きくなっているのを感じますね。私自身のキャリアスタートがソーシャルセクターだったからというのもありますが、社会問題を解決する方法の多様化という意味でも、とても望ましい方向性だと思っています」
昨年末に発表された大卒者の進路調査では、会社員90.4%に対し、起業は1.9%(※7)。スタートアップ業界が活況化しつつあるとはいえ、韓国の若者にとって身近な進路選択とは言い難い。
「韓国社会はリスクを避けようとする文化がまだ根強く残っていますし、正直なところ、スタートアップで成功できる確率はとても低いのが現実です。でも、その経験は人を大きく成長させ、主体的に人生を生きる糧となってくれます。
だからこそ、スタートアップ業界のことをもっと多くの人に知ってほしいなと思います。理想的に描かれ過ぎている面があるとはいえ、スタートアップ業界への心理的ハードルを下げる役割をドラマが果たしてくれていたらいいなと期待しています」
ダイナミックに変化しつづける、韓国のスタートアップ業界。その一端を、『スタートアップ:夢の扉』に見出すことができるはずだ。
※7:『中央日報』「韓国の昨年の大卒者就職率67.1%…5人に1人は1年以内に離職」参照
韓国ドラマを通して、韓国社会の今をのぞく
『スタートアップ:夢の扉』は、いろいろな楽しみ方ができる。
ダルミ、ドサン、ジピョンの三角関係にはハラハラさせられっぱなしだし、次々に降りかかるトラブルを乗り越えていく様は爽快だ。ダルミの祖母の温かさには胸がじ〜んとなる。
そして、この作品に限らずだが、韓国ドラマは今の韓国社会のありようの一片も、垣間見せてくれる。隣国の人々が生きる社会を理解する、ほんの小さな一歩にもなるかもしれない。
本作は韓国でのケーブルテレビ放映と同時にNetflixでも同時配信され、今でも全話視聴することができる。1話が70〜80分と長い上に、16話完結。かなりの時間を捧げる覚悟が必要となるが、この機にぜひチャレンジしてほしい。
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