「ナインティナインの岡村と申しますが」
「各所連絡しましたがつながらなくて……。けどいっちゃいましょう! こっちからかけますんで、TBSさんのスタジオの番号教えてください!」覚悟を決めた”あっち”のプロデューサーとの携帯を切ったあと、作家の鈴木工務店さんのイヤホンにだけ岡村さんとつなぐ旨を伝えた。
つながったら番組をどう展開させようか? 明日会社にどう説明しようか? 異動になるかな? そんなことを考えていたら、ほどなくしてスタジオサブの電話が鳴った。「ナインティナインの岡村と申しますが」。
普段ラジオで電話をつなぐ際、まずスタッフ同士が音質や音量をチェックする。「こっちからかけます」とは言っていたが、いきなり岡村さんだとは思わなかった。テンパっていたのでそのあたりの段取りがすっ飛んでいたのかもしれない。てことはこの電話は今ラジオで放送されているのか。スターとの会話に緊張しながら状況を理解した。同時に、学生時代よく耳にした木曜深夜の声を味わった。
両番組がつながってからはあっという間の7分44秒。岡村さんもおぎやはぎも、前代未聞のやりとりにお咎めがあるのではと我々スタッフの身を案じた。
小木さんの「岡村さんに聞けないの?」に端を発した本件ではあるが、美女を持ち帰ったか否か、お相手が本命なのか遊びなのか、無礼を承知で言うと、そんなことどうでもよかった。10年以上、敬意を込め“裏のライオン”と呼んでいた番組とひとつになるという現象だけで十分で、その価値や意義など考える余裕はなかった。
関わる人や組織が少なく小回りのきくラジオというメディアならではの環境……、そのラジオを面白がれる察しのいいリスナーの存在……、そしてなによりラジオで素を出し続けている岡村さんとおぎやはぎだからこそできたんだ、と冷静になった今は思える。
次の日、会社からは怒られもせず、ほめられもせず、特になにも言われなかった。それでも、ひとりの先輩から言われた「すごいね」を糧に今週も頑張ろう、と思えた。
本当にラジオの生放送はいろんなことが起こる。
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