芸人が売れていく過程を“入れ歯”によって体感する中年ラジオ『錦鯉の人生五十年』

2021.2.15

文=村上謙三久 編集=森田真規


結成15年以内という条件があるにもかかわらず、2020年の『M-1グランプリ』に40歳超えの史上最高齢ファイナリストとして出場し、話題を呼んだお笑いコンビ・錦鯉。

ボケ担当で歯が8本ない長谷川雅紀は49歳、低い声でぶっきらぼうにツッコむ渡辺隆は42歳。2月20日深夜には『オールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)でパーソナリティを務めることが決まったふたりのレギュラー冠ラジオ『錦鯉の人生五十年』が、現在ラジオアプリGERAで毎週月曜日に配信されている。

前代未聞の「売れていない中年オッサンコンビによるラジオ」で、さらに起こっている前代未聞の事態とは──。

2021年12月19日追記:錦鯉は『M-1グランプリ2021』で見事優勝。速報記事はコチラ


第七世代ブームに紛れて誕生した“売れていない中年オッサンコンビによるラジオ”

49歳の長谷川雅紀と42歳の渡辺隆による“中年のオッサン”同士のお笑いコンビ・錦鯉。昨年末の『M-1グランプリ』で第4位になり、知名度を大きく上げた。そもそも『M-1』は若手漫才師を対象にした賞レースだが、錦鯉はコンビ解散とピン芸人活動を経て結成されており、この年齢でも結成9年目。芸歴26年になる長谷川は歴代ファイナリストの中で最高齢で、『M-1』出場者としては異例のコンビだ。

そんな彼らがお笑いラジオアプリGERAで配信している冠ラジオが『錦鯉の人生五十年』である。彼らの経歴に負けず劣らず、この番組もラジオ的に見るとかなり異色な番組だ。

お笑い芸人のラジオにおけるメインステージは今も昔も深夜ラジオ。2000年代以降は人気も実力もあり、しっかりとキャリアを積んだ芸人たちが長期間番組をつづける傾向にある。困ったことにどの番組もおもしろ過ぎて、パーソナリティが変わらない状況がつづいている。「ラジオをやりたい」という願望を持つ若手芸人にはなかなかチャンスが訪れず、ようやく掴んだとしても番組が短期間で終わってしまうことが多々あった。

しかし、全国のラジオを聴けるラジコプレミアムの登場により、地方ラジオが活性化。さらに、YouTubeや配信アプリでの番組も増えた。お笑い第七世代ブームの追い風もあり、ここ1、2年でようやく若手芸人がラジオ番組を持ちやすい環境が整った。

中でも大きな存在がお笑いラジオアプリGERAだ。一般のラジオ放送局とは違った身軽でフレキシブルな運営で番組数を増やし、リスナーをスポンサーにする体制も確立。現在は約30もの番組を展開している。どの番組も30分程度の聴きやすい長さで、アーカイブも公開されており、使い勝手がいい。

若手芸人がようやく掴んだラジオの場。そこに紛れ込むように、中年コンビの錦鯉も冠番組を持った。番組開始は昨年5月。前年の『M-1』で準決勝まで勝ち上がり、お笑いファンから密かな注目を集めてはいたが、一般的にはまだ無名の存在だった。かくして世にも珍しい“売れていない中年オッサンコンビによるラジオ”が生まれたのである。

その外見から映像媒体のほうが映えると思われがちだが、錦鯉とラジオの相性はとてもいい。長谷川の声は本当に表情豊かで、不思議と聴いているだけでその顔が頭に浮かんでくる。滑舌の悪さもまた魅力。一方、渡辺は低音の美声が心地よく、きつく感じるような言葉を発しても、どこか温かみが残る。コンビとしての声のバランスも聴きやすい。

芸人ラジオ的な視点で見ると、長谷川はおぎやはぎや矢部浩之(ナインティナイン)と、渡辺はオードリーや平子祐希(アルコ&ピース)と同学年。何度も言うようだが、“オッサン”なので、ほかの若手芸人のラジオほどテンションは高くない。錦鯉の芸風からもわかるように基本的にはおバカな番組なのだが、個人的には「大爆笑する」というよりも「ニヤニヤが止まらない」という感覚になる。

3つの“ボケ”がない交ぜになった長谷川、AVとVTuberに異様に詳しい渡辺

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村上謙三久

(むらかみ・けんさく)編集者、ライター。1978年生まれ。プロレス、ラジオ関連を中心に活動。『声優ラジオの時間』『お笑いラジオの時間』(綜合図書)の編集長を務め、著書に『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)、『声優ラジオ“愛”史 声優とラジオの50年』(辰巳出版)がある。

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