陰りある時代に音楽の力で光を射す──和楽器バンド、メモリアルイヤーの『大新年会』に込めた想い

2021.1.24

「アマノイワト」に込めた想い

町屋、黒流、ベースの亜沙が紡ぐ「Episode.0」により、それぞれの魅力をより堪能できる後半パートがスタート。温かくエモーショナルな町屋の歌声が響き、亜沙のハーモニーがそれに重なり合う。デビューアルバム『ボカロ三昧』に収録されているナンバーということもあり、時の流れを色濃く感じさせた。

MCで2021年は語学に挑戦すると話した町屋(右)。状況が落ち着いたら、海外でのライブを期待するファンも多いはず

「Wagakki & EDM Session -春の海 Remix-」では、最も遠いところに位置しているように思われる和楽器とEDMを巧みに結びつけていく。いぶくろが“The お正月”なメロディーを弾くと、神永が豊潤な響きで層を生み、蜷川べにの津軽三味線、鈴華の剣舞と共に新たな表現を追求していく。今まで和楽器×ロックで打ち出してきた彼らだが、新たな可能性をしっかりと提示していた。

つづく「スペシャルメドレー2021」では、胸アツなナンバーを緩急つけながら8曲も展開。「チルドレンレコード」で幕開けると、「花一匁」「Ignite」「虹色蝶々」と新旧問わぬ楽曲が肩を並べた。

炎の演出、ダンサーたちの踊り、8人の演奏で会場を盛り上げた「スペシャルメドレー2021」

舞台上空に特設されたステージでは、山葵と黒流による「ドラム和太鼓バトル~登攀猛打~」が行われる。身軽な足運びで山葵が壇上に這い上がる一方、黒流はワイヤーアクションでスーパージャンプ。どんなときも堂々とした振る舞いをする黒流が、高所に怯える様はどこかかわいらしさを感じさせる。それでも、バトルが始まると圧倒的なパフォーマンス力で空気を掌握してしまうのだから、本当に見事である。

再びメンバーがそろうと、6人のダンサーと共に「あっぱれが正義。」を披露。キラキラしたサウンドとポップなメロディで、会場内をハッピーな空気で満たしていく。

最後のMCで鈴華が、ライブタイトルに「アマノイワト」を採用した熱い想いを明かした。

「岩戸隠れの伝説内で重い扉が開かれて世界に光が戻ったように、この場所から和楽器バンドの音や想いで時代を切り開いていきたい」

ライブはソーシャルディスタンスを確保し、声援も禁止するなど、会場の感染症予防策は万全だった

しんしんと雪が舞う「細雪」を奏で、静かな激情を加速させる。トリとして導かれたのは、儚いかけ合いが胸を打つ「IZANA」だ。最後をアッパーチューンで締めることの多い彼らが、この曲をラストに持ってきた裏には並々ならぬ想いがあるのだろう。世界が安寧へと向かっていきますように、楽曲を聴いている人が苦しみから解き放たれますように。そんな平和への祈りを捧げるかのように、8人は静かにステージをあとにした。

平常時であれば「暁の糸」の大合唱が起こるアンコールを、今回はメンバーとファンがコラボレーションするかたちで再現。レーザービームや火の演出などを駆使し、力強いパフォーマンスで魅了する。アンコール2曲目「Singin’ for…」では、それぞれの心の中に盛大な“シンガロン”を生み出し、2021年の「大新年会」を締め括ったのだった。

“楽しい”という気持ちが、どこかへ隠れてしまいそうになった2020年。もし不安に襲われても臆することはないのだと、和楽器バンドは知っている。知恵を絞っていけばどんなときでも楽しむ術があることも、誰かが楽しそうにしていることが困難に打ち勝つカギになるかもしれないということも。
私たちが生きている世界は、ただの混沌ではない。天照大御神がメインストリームに戻って来ることを今か今かと待ちわびる、革命前夜とも言えるのである。2021年は、和楽器バンドがデビュー8年目を迎えるメモリアルイヤー。この特別な年に、どんな物語で革命を起こしてくれるのか。今から楽しみでならない。

『和楽器バンド 大新年会 2021 日本武道館 2days ~アマノイワト~』1月4日セットリスト
0.Overture~アマノイワト~
1.千本桜
2.reload dead
3.反撃の刃
4.華火
5.オキノタユウ
6.起死回生
7.日輪
8.生命のアリア
9.月下美人
10.Episode.0
11.Wagakki & EDM Session -春の海 Remix-
12.スペシャルメドレー2021(チルドレンレコード~Perfect Blue~World domination~花一匁~Ignite~月・影・舞・華~虹色蝶々~星月夜)
13.ドラム和太鼓バトル~登攀猛打~
14.あっぱれが正義。
15.細雪
16.IZANA
──アンコール──
17.暁ノ糸
18.Singin’ for…

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