M-1注目株の「キュウ」は、<丁寧なフリ>と<仕掛け>で観客を魅了する

2021.1.11
キュウ

先日、『M-1グランプリ2020』の決勝進出者が発表されました。本稿を執筆している12月上旬の時点ではまだなにも決まっていませんが、本誌が世に出回るころには結果が出ていることでしょう。

優勝者も気になりますが、個人的に関心を寄せているのは敗者復活戦。なぜなら、出場者の中に以前から注目しているキュウがいるからです。

※この記事は、2020年12月25日に発売された『クイック・ジャパン』vol.153掲載されたコラムを転載したものです。


細工は流々仕掛けを御覧じろ

キュウの漫才は少し変わっています。

今回は、彼らが本大会の予選で披露した漫才『ヨーグルト』を紐解くことで、その個性をご紹介したく存じます。

『ヨーグルト』は、清水が「ヨーグルトって美味しいよな」と切り出すところからはじまります。これに対し、相方のぴろは「ご飯のときとかね、朝の。リンゴヨーグルトとか出ると、ラッキーと思ったよね」と相槌を打ちます。ごくごく平凡なやりとりです。

続けて、清水が「海外ではヨーグルトを料理に使うこともあるって知ってた?」と訊ねると、ぴろは「ごめん、知らないわ。料理にも使うんだ。ラトビア人もビックリだ」と応えます。ここで唐突に登場する「ラトビア人」というワードに、観客は違和感を覚えます。

さらに、清水がトルコ料理では多様な使われ方をされていると説明すると、「ご存じの方、いました? 理解しがたいですよね。ラー油ぶちまけちゃいそうだ」と、より強い違和感の残る表現で観客を惑わせます。

ここでようやく、清水がぴろの発言を追求。フラストレーションを溜めていた観客は、清水のツッコミに耳をすませます。「お前、なんでさっきから……ゴリラであいうえお作文してんだよ!」この清水の発言で、観客はこれまでの違和感の正体に気付かされます。

そして漫才は「ゴリラであいうえお作文をする」という前提のもと、激しくグルーヴしはじめるのですが……この先の展開は彼らの公式チャンネルのほうでご視聴ください。

キュウ 漫才『ヨーグルトの話』

『ヨーグルト』に限らず、キュウの漫才には基本的に仕掛けが施されています。それを成立させるためには、丁寧なフリとアドリブを許さない緻密な台本が絶対不可欠。

そんなふたりの漫才が、掛け合いを重視するM-1という大会において、準決勝戦まで勝ち上がるほど評価されたのです。それだけでも称賛に値するといえるでしょう。しかし、ここまで勝ち上がってきたからには、決勝の舞台に立つふたりの姿が見てみたいのが親心。

本命不在といわれている今回、可能性はゼロではないはずです。読者の皆さん、そちらの未来でキュウはいかがでしたか?

追記:結果として、キュウは決勝進出を果たすことはありませんでした。ですが、敗者復活戦をきっかけに、その不可思議な漫才に興味を持った方も増えてきたようです。2021年が彼らにとって飛躍の年になりますように!

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すが家しのぶ

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すが家しのぶ

(すがや・しのぶ)1985年生まれ、香川県出身。お笑い評論家。フリーペーパー『SHOW COM』誌上でお笑い芸人DVDレビュー『神宮前四丁目視聴覚室』連載(Vol.1~Vol.28)。『立川談志落語集成 1964-2004』土橋亭里う馬、『東宝名人会 立川談志大全集』毒蝮三太夫・野末陳平、各インタビ..

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